背景

近年、地上と空にまたがる次世代の移動・輸送手段として、空飛ぶクルマの社会実装に向けた取り組みが注目されている。一方で、航空機やドローンなど多様なエアモビリティと共存し、安全で効率的な運航を実現するための運用方法の確立は今後の課題となっている。

NECは半世紀以上にわたり航空管制システムを開発・提供してきた実績をもとに、空飛ぶクルマの安全かつ効率的な運航に貢献するUATMサービスを開発している。また、2022年からReAMoプロジェクトに参画し、研究開発項目②である「運航管理技術の開発『低高度空域共有に向けた運航管理技術の研究開発』」において、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと協力して取り組みを推進している。今回、大阪・関西万博においてデモフライト中の空飛ぶクルマに対し、安全性確保を目的として本サービスを提供し、有効性の検証が開始された。

UATMサービスの画面イメージ
Web経由で機体の動態モニタリングや飛行計画の登録、離着陸場の管理が可能

検証の概要

場所:大阪・関西万博会場 EXPO Vertiport(大阪府大阪市※4

期間:2025年7月31日から10月13日(予定)

内容:大阪・関西万博の会場である夢洲にて、SkyDriveとJoby Aviation/ANAホールディングスが実施する空飛ぶクルマのデモフライトを対象にUATMサービスを提供し、有効性の検証が行われる。

本サービスは、飛行計画管理機能、動態情報表示機能、離着陸場管理機能、コミュニケーション機能を有している。今回の検証では、運航事業者が入力した空飛ぶクルマの飛行計画経路に沿って正しく運航されているかについて、大阪湾一帯に設置した受信機から動態情報を収集して適合性モニタリングが行われる。また、空飛ぶクルマの運航状況や離着陸ポートの利用状況が関係者間で共有されることで、運航事業者などは早期に状況を把握し必要に応じて運航調整を行うことが可能とされる。こうした情報共有の仕組みが、安全かつ効率的な運航に寄与することが検証される。

大阪・関西万博では複数の運航事業者による空飛ぶクルマのデモフライトが計画されているが、NECは第一弾として本年7月31日からSkyDriveによるデモフライトにて検証を行っている。今後、Joby Aviation及びANAホールディングスが本年9月下旬から予定しているデモフライトにも本サービスが提供され、同様の検証が行われる計画である。またReAMoプロジェクトに参画し、EXPO Vertiportの協賛を行うオリックスも本検証に協力している。NECは、これらを通じて得られる知見をもとにサービスの開発を進め、2028年を目途に商用化を目指す。

デモフライトの様子(「SKYDRIVE」(SkyDrive式SD-05型)、2025年7月31日撮影)

【注釈】

  1. 次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト (Realization of Advanced Air Mobility Project:ReAMoプロジェクト)
  2. Urban Air Traffic Managementサービスの略称
  3. 2025年8月1日時点、NEC調べ
  4. EXPO Vertiportは大阪・関西万博の未来社会ショーケース事業において、オリックスが協賛する「空飛ぶクルマ」の万博会場内離着陸施設