
最終ラップは僅差の攻防に
Moto3クラスに参戦する山中琉聖(KTM)は、2025年シーズン後半戦の皮切りとなるオーストリアGPの金曜日から上位につけた。午前中のフリープラクティス1は4番手、午後のプラクティスでは3番手につける。
土曜日の予選2(Q2)では、終盤に転倒を喫したものの、3番手。フロントロウ(1列目)3番グリッドを獲得した。
「前の2台がバトルをしていて、外側のラインからいったらラインを外してしまったんです。ブレーキングもけっこう奥だったので、それでフロントが切れ込んで転倒しました。でも、転倒を除けばいい週末になっていると思います」
予選後、山中はそう語った。
オーストリアGPは、自身として初めて参戦した鈴鹿8時間耐久ロードレースを終えてからのMoto3での走行となった週末である。鈴鹿8耐ではAstemo Pro Honda SI Racingから参戦し、ホンダCBR1000RR-Rを駆った。山中にとっては、これがほとんど初めての1000㏄バイクの経験だった。
「鈴鹿8耐、すごく楽しかったです。1000㏄からMoto3マシン(単気筒250㏄エンジンのレーシングマシン)への乗り換えは、Moto3のほうがコーナリングスピードを上げて走る必要があって。タイムとしてはすぐにいいタイムが出ていたんですけど、僕の感覚としてぴたりとくるまでに2~3周かかった感じですね」
「(1000㏄市販車ベースの)重いバイクに乗った分、Moto3での取り回しが楽に感じる部分は多少あります。そこはいい経験になりました」
迎えた日曜日の決勝レースで、山中は序盤からトップグループで周回を重ねた。山中としては前を走っていたマキシモ・キレス(KTM)のペースがよかったので、無理に抜こうとは思わず、しっかり2番手あたりでついていこうと考えていた。
レースが動いたのは、終盤の残り3~4周だ。後方から猛然と追い上げてきた古里太陽(ホンダ)とダビド・ムニョス(KTM)がトップ集団に加わったのである。山中は二人が自分たちとの差を詰めつつあるのを、レースをしながらスクリーンで見てわかっていた。とはいえ、終盤に抜かれたときには「もう追いついた!?」と驚いたという。
最終ラップは6~7台による接戦となった。4番手だった山中は、9コーナーの進入で古里とムニョスをかわした。そして、2番手をキープしてチェッカー。優勝したのはチームメイトのアンヘル・ピケラス(KTM)で、その差はたったの0.096秒だった。
「ラスト2周でムニョスに抜かれたときに少しロスしちゃったので、どうやって最終ラップで仕掛けようかな、と考えました。自分のバイクのセットアップ的に最終セクター向きだった。スリップを使って抜こうかなと考えていたので、成功してよかったです」
接戦のレースではあったが、山中はとても落ち着いて見えた。そう尋ねると「常に落ち着きを意識して走りました」という答えだった。
「他のライダーと比べて苦戦しているところがいくつかあったけれど、事前にわかっていたので、離れても落ち着こうと思っていました。レース中、僕のほうが速いところも見つけられたので、だから落ち着いていられたのかな、とも思います。ペース的にもきつくなかったので、落ち着いて走れました」
パルクフェルメや表彰台では弾けるような、いつもの「山中琉聖スマイル」を見せていたが、その後のトップ3囲み取材で率直な感情を尋ねると、少し複雑な表情を浮かべた。
「うーん……。もちろん、うれしいですけど。『これができたらこうだったな』という反省があるので。悔しい部分もあります」
優勝まであと一歩のところで、しかもその差はわずかだったのだから、うれしさと悔しさが入り混じっていたのかもしれない。更新すべき自己ベストリザルトは、あと一つだ。



