ホンダ・CB1000F/SEコンセプト
ホンダが、2025年春のモーターサイクルショーで世界初公開し、一躍大きな注目を集めている市販予定車が「CB1000Fコンセプト」だ。2025年8月の鈴鹿8時間耐久ロードレースでは、そのビキニカウル版「CB1000F SE コンセプト」もお披露目し、益々注目度がアップしている最新モデルだといえる。


これらモデルの大きな注目点は、往年の名車「CB750F」、その輸出仕様車「CB900F」をデザイン面でのモチーフとしていること。しかも、車体には、1980年代に大活躍したアメリカ人レーシングライダーのフレディ・スペンサー氏が、北米の最高峰レース「AMAスーパーバイク」で戦った「CB900F」のカラーやグラフィックを復刻。当時、バイクで青春を謳歌したベテランライダーたちにとって、「憧れの1台」だったいわゆる「スペンサーレプリカ」を彷彿とさせる仕様となっている。

全体のデザインは、オーソドックスなロードスポーツらしいスタイルに最先端のテクノロジーをマッチングさせていることが特徴だ。とくに鋼板製の燃料タンクは、ホンダの開発者いわく「スチールらしい面の表情」を持たせたそうで、かつてのCB750Fなどを想起させる形状ながら、硬さと柔らかさをバランスさせた今風のテイストもマッチングさせている。

搭載するエンジンは、ストリートファイターモデル「CB1000ホーネット」と同系の1000cc・4気筒。レースにも対応するスーパースポーツマシンの2017年型「CBR1000RR」用エンジンをベースとし、新開発のダイキャスト製ピストンを採用するなどで、低・中速域のトルク特性と出力特性を高いレベルでバランスさせていることが特徴だ。

また、足まわりは、Y字5本スポークの前後17インチホイールや、フロント120/70ZR17とリア180/55ZR17のタイヤサイズなど、CB1000ホーネットと同様のパーツを採用。ほかにも、レトロなデザインと機能面での充実度を両立した丸目一灯のヘッドライトを装備するほか、派生機種の「SEコンセプト」にはビキニカウルも搭載し、よりスタイリッシュな雰囲気も醸し出す。
まだ、国内販売の時期や価格などは未発表のため、追加のアナウンスが気になるところ。ともあれ、惜しまれながらも生産終了となる「CB1300スーパーフォア」シリーズに代わり、ホンダの伝統CBシリーズの次世代フラッグシップになるモデルだけに、登場に期待大だ。
スズキ・GSX-8T/8TT
スズキが、2025年7月4日に発表した新型ネイキッド「GSX-8T」とそのミニカウル版「GSX-8TT」も、ネオクラシックの最新&注目モデルだ。


とくに、ベースモデルとなるGSX-8Tは、1960年代の高性能ネイキッドバイクで、「タイタン(Titan)」の愛称で知られる「T500」を彷彿とさせるデザインがトピックだ。
初代が1968年に登場、ロードレーサー「TR500タイタン」のベースマシンにもなったのがT500。大きな特徴は、量産車として世界初の500cc・2サイクル2気筒エンジンを搭載したことだ。耐久性に優れ、中低速重視のセッティングを施したこのエンジンは、最高出力47PS、最大トルク5.5kg-mを発揮。5段ミッションを介して最高速度181km/h、0-400m加速13.2秒という当時としては優れた走行性能を持つことで、世界の重量スポーツ車ファンから一躍注目を集めることとなる。また、このエンジンを搭載したことで、T500は「2サイクルのスズキ」の名を確固たるものとした名車としても有名だ。

そんなT500をオマージュしたGSX-8Tは、車体後方をマットブラックにすることでタンクを際立たせるカラーリングを採用。シュラウドには、勝負球を意味するビリヤードのエイトボールをイメージした立体エンブレムを装備するなどで、レトロかつモダンなスタイルを実現している。

また、スズキが「1970年代のロードレーサーをイメージした」というのが、ビキニカウル仕様のGSX-8TT。エンジン下部にはアンダーカウルも採用しスポーティさをアップ。ブラックのフロントフォークやシュラウド、グレーのシートレールに、燃料タンクなどにはレーシーなデカールなども装着。ちなみに、車名の「TT」は、クラシックバイクを現代によみがえらせるという意味を込め、ベースモデルの「GSX-8T」と「Timeless」を掛け合わせたネーミングなのだという。

なお、両タイプは、どちらもエンジンに270度クランクを採用した776cc・水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒を搭載。「GSX-8S」や「GSX-8R」、「Vストローム800」、「Vストローム800DE」などと同型で、2軸1次バランサー「スズキクロスバランサー」などの採用により、低速から高速まで扱いやすい特性が魅力のパワートレインだ。

最高出力や最大トルクなど、エンジンのスペックは未発表だが、例えば、同型エンジンを持つネイキッドモデルの「GSX-8S」の場合、最高出力59kW(80PS)/8500rpm、最大トルク76N・m(7.7kgf・m)/6800rpm。GSX-8TやGSX-8TTでも、これらに近い数値となることが予想される。
スズキでは、これらモデルに関し、「2025年夏頃より、欧州、北米を中心に世界各国で順次販売を開始」すると発表。日本での発売はいつ頃になり、どのくらいの価格帯で導入されるのかも注目だ。
カワサキ・Z900RS/SE/カフェ
2017年の発売以来、大型バイクのなかでも特に大きな支持を受けている大ヒットモデルが、カワサキの「Z900RS」だ。

そのルーツは1972年に登場し、世界中でいまだに高い支持を受ける900ccモデルの名車「900スーパー4」、通称「Z1」。ティアドロップタイプの燃料タンクやテールカウル、水冷ながら美しいフィンを持つ948cc・並列4気筒エンジンなどの採用で、名車Z1のスタイルを現代に蘇らせているのがZ900RSだといえる。

また、トラクション・コントロールやマルチファンクション液晶パネル、LEDヘッドライトなどの最新テクノロジーや高性能パーツも搭載。クラシカルなフォルムだけではなく、最新の装備により高次元での走りも実現する。そして、これらにより、街乗りから長距離ツーリング、ワインディングやサーキットのスポーツ走行まで、幅広いシーンで楽しめるマシンに仕上がっている。
ラインアップには、スタンダード仕様の「Z900RS」、オーリンズ製リヤショックなどを採用したハイグレードな「Z900RS SE」、フロントカウル付きの「Z900RSカフェ」を用意する。また、特別な手法で塗装されたイエローボールカラーのティアドロップ型の燃料タンクなどが魅力の「Z900RS イエローボールエディション」もある。



価格(税込み)は、Z900RSが148万5000円、Z900RS SEが170万5000円、Z900RSカフェが151万8000円。Z900RS イエローボールエディションは156万2000円だ。
ヤマハ・XSR900GP
1980年代のヤマハ製WGP(ロードレース世界選手権)マシン「YZR500」を彷彿とさせ、新機軸のカフェレーサーとして注目なのが「XSR900GP」だ。

ヤマハが「スポーツヘリテージ」と呼ぶ「XSR」シリーズに属するのがこのモデル。シリーズのラインアップには、125ccの「XSR125」、700ccの「XSR700」、そしてXSR900GPのベースとなった900ccの「XSR900」を用意。いずれも、往年の名車をオマージュしたスタイルと、最新の装備をマッチさせていることがポイントだ。

そんなXSRシリーズのなかで、唯一のカウリング装着モデルがXSR900GP。大きな特徴は、大型クリアスクリーンとナックルバイザーを装備したフロントマスク。とくに別体式のナックルバイザーは、まさに1980年代のYZR500が持つスタイルを彷彿させるものだ。
また、メインカラーとなる「シルキーホワイト(ホワイト×レッド)」仕様には、イエローのゼッケンプレートも採用。これは、YZR500が参戦した世界最高峰2輪車レース「WGP(現在のMotoGP)」の頂点、「GP500ccクラス」に出場するマシンにだけ与えられたものをモチーフとしている。

さらに、もともとのバーハンドルをセパレート式ハンドルに変更。ハンドルをマウントするトップブリッジ上面部分など、コックピットまわりのボルトも新デザインとし、質感の向上も図っている。

エンジンには、XSR900と同じ888cc・直列3気筒を搭載。最高出力88kW(120PS)/10000rpm、最大トルク93N・m(9.5kgf・m)/7000rpmを発揮するパワーユニットは、コンパクトな燃焼室などにより燃焼効率を上げることで、高いトルク性能を実現する。
また、独自の走行支援テクノロジー「YRC(ヤマハ・ライド・コントロール)」も搭載。ワインディングやサーキットに適した「スポーツ」、市街地走行に適した「ストリート」、雨天時などで悪化した路面状況に適した「レイン」といった3つの走行モードに加え、各種設定を任意に設定できる2タイプの「カスタム」モードも用意。ライダーが好みや路面状況に応じて、エンジンの出力特性や各種電子デバイスの介入度を選択することを可能とする。
ほかにも、メーターに視認性を配慮した5インチTFTディスプレイを採用。表示パターンは、専用のアナログ風タコメーターを含む4種から選択可能だ。さらに専用アプリ「Y-connect(Yamaha Motorcycle Connect)」をインストールしたスマートフォンとバイクを接続する機能も装備。電話やメールの着信通知など、さまざまな情報や画像をメーターに表示できるなど、スマホと連携した多様な機能を使うことも可能だ。

ボディカラーは、前述のシルキーホワイトのほか、「パステルダークグレー」の2色を設定。価格(税込み)は143万円だ。
ホンダ・GB350シリーズ
ホンダのGB350シリーズは、スタンダードの「GB350」、スポーティ仕様の「GB350S」、よりクラシカルな雰囲気の「GB350C」といった3タイプをラインアップし、いずれも高い人気を誇る空冷シングルスポーツだ。



元々ホンダの「GB」というモデルは、1983年に登場した「GB250クラブマン」が元祖。249cc・空冷単気筒エンジンを搭載したこのモデルは、1960年代に英国など世界のレースで活躍したシングルレーサー風のスポーティでクラシカルなフォルムが特徴だ。また、軽快で扱いやすいことが支持され、1997年まで販売されたロングセラーモデルだった。

1985年には、400cc版の「GB400ツーリストトロフィー」や限定仕様の「GB400ツーリストトロフィーMkII」、500cc版の「GB500ツーリストトロフィー」なども販売。いずれも、シリーズ共通のクラシカルな外装とスポーティなフォルムが人気を博したモデル群だった。
そんなGBのネーミングを復活させたのが、2021年に登場したGB350だ。パワーユニットには、存在感のある直立シリンダーの348cc・OHC空冷シングルを採用し、力強いトルク感と味わいある走りを実現している。
スタイリングでは、燃料タンクやサイドカバーに、丸味を帯びた温かみのある形状を採用。さらに、金属ながら表情豊かな造形としたクランクケースカバーやシリンダーヘッドなどにより、高い質感やトラディショナルな外観も演出する。
足まわりではGB350とGB350Cがフロント19インチ、リア18インチのホイールを採用。スポーティ仕様のGB350Sは、リアホイールを17インチに小径化し、ワイドなラジアルタイヤをマッチングすることで、より俊敏な走りを実現する。


また、2024年10月に登場した派生モデルのGB350Cでは、重厚感あるフロントフォークカバーの採用などで、よりレトロな雰囲気をアップしていることがポイントだ。車体は、ヘッドライトカバーなどのフロント部から、燃料タンク、サイドカバー、セパレートタイプのシートへと、リアにかけてなだらかに傾斜したプロポーションへ変更。加えて、前後フェンダーの大型化や、水平基調のキャプトンタイプマフラーなどの採用により、よりロー&ワイドを強調したスタイルを実現している。
なお、GB350とGB350Sは、2025年8月28日に一部仕様モデルが登場。メーターに関し、文字盤のデザインを変更すると共に、装飾リングをメッキ化し上質感も演出する。また、ヘッドライトの照射範囲も変更。夜間時の視認性をより配慮した特性にするなどのアップデートを行っている。
価格(税込み)は、スタンダードのGB350が64万9000円~67万1000円、スポーティ仕様のGB350Sが69万3000円~71万5000円、GB350Cは2025年10月31日発売予定の一部変更モデルが71万5000円(現行モデル66万8800円)だ。

カワサキ・メグロS1&W230
232cc・空冷単気筒エンジンを搭載する「メグロS1」と、その兄弟車の「W230」も、カワサキが誇る人気ネオクラシックモデルだ。


メグロS1の源流は、かつて存在した2輪車メーカー「目黒製作所」だ。1924年に創業した企業で、第2次世界大戦前から戦後直後にかけて、数多くの高性能モデルをリリースし一斉を風靡した。とくに500ccや650ccなどの大排気量モデルに定評があったが、1950年代後半以降、小排気量モデルの人気上昇に対応できず、業績が悪化。1964年にはカワサキ(当時の川崎航空機工業)に吸収合併された。
そして、メグロS1は、合併後の1964年に発売された「250メグロSG」をオマージュしたバイク。カワサキも、このモデルを「正統な後継車」と発表しているから、まさに昭和のモデルを復刻させた最新のオートバイがメグロS1だといえる。

ちなみに、カワサキは、従来、773cc・空冷2気筒エンジンを搭載する「メグロK3」を販売。そのため、メグロS1は、その弟分で、メグロ・シリーズに属する軽二輪タイプということになる。

また、メグロS1の兄弟車となるW230は、カワサキが1966年に発売した「650-W1」、通称「W1(ダブワン)」の車名を冠した軽二輪モデル。624cc・並列2気筒、バーチカルツインの愛称を持つエンジンを搭載したW1は、当時のバイクとしてはかなり高性能だったことで、世界的に大ヒットを記録。「大排気量の高性能モデル」という、後に続くカワサキ製オートバイのイメージを生み出した名車だ。

ちなみに、このW1は、前述した目黒製作所との合併後、1965年に発売した「500メグロK2」がベースといわれている。つまり、メグロは、カワサキ「W伝説」誕生のきっかけとなったブランド名なのだ。そして、メグロS1とW230が登場した2024年は、目黒製作所の創立100周年という記念すべき年。これら2タイプは、こうした背景から生まれたモデルだといえる。

なお、Wシリーズにも、従来、メグロK3と同じ773cc・空冷2気筒エンジンを搭載する「W800」をラインアップ。W230は、その弟分となる軽二輪タイプという位置付けとなる。

メグロS1とW230のエンジンは、いずれも、232cc・空冷単気筒。ティアドロップ型の燃料タンクや前後スポークホイール、丸目1灯ヘッドライト、スチール製のフロントフェンダーなどにより、レトロな雰囲気を演出している点も同様だ。また、前後ディスクブレーキなど、要所要所に最新の装備を持つことも類似点といえるだろう。
ただし、細部では、両モデルで差別化を図っている。例えば、燃料タンクは、メグロS1ではブラック×クロームメッキのカラーや「MEGURO」の車名ロゴなどを採用。一方、W230の燃料タンクには、「W」のロゴを配することで、ブランドの違いをアピールしている。
なお、価格(税込み)は、メグロS1が74万2500円、W230は66万5500円だ。

このように、クラシカルなスタイルと、最新の装備による余裕ある走りが魅力なネオクラシックバイク。なかでも、ここで紹介した6モデルは、昭和レトロ感が満点なことで、ツーリング先の郊外などはもちろん、都市部にもマッチするスタイリッシュさも魅力だ。まさに、今後も注目株となるモデル群といえるだろう。