パワー向上で走りが劇的進化 伝統の高性能な足捌きに感銘

アウトランダーは三菱のフラッグシップだ。基本骨格こそルノーや日産とのアライアンスによるCMF-C/Dプラットフォームだが、それ以外はまさに三菱技術の粋を集めたと言ってもいい内容をもつ。
エクステリア




例えば「威風堂堂」をコンセプトとした外観デザインも三菱の集大成で、フェイスは「ダイナミックシールド」の最新解釈だ。フロントバンパーはパジェロ、大型ブラックグリルは「ランエボ」をイメージしているとか。また、リヤクオーターピラーは、かつて三菱が手掛けたゼロ戦の垂直尾翼がモチーフだ。海外向けに純ガソリン車もあるが、国内は2.4ℓプラグインハイブリッドのみ。前後共通の高出力モーターを配した4WDのパワートレインは三菱独自のもので、状況に応じてエンジン直結走行もするが、大半のシーンではモーター駆動で走る。
乗降性



モーターによる自由自在な前後配分に、ブレーキによる左右トルクベクタリングを組み合わせた駆動システムのS-AWCは、ランエボで一世風靡したAYCのノウハウを存分に活かした、世界屈指の「曲がる4WD」だ。さらに外部充電可能なリチウムイオン電池は22.7kWhの総電力量で、最大102㎞(WLTCモード)のEV走行が可能である。そんなアウトランダーは、現行型の国内発売から3年後の2024年10月に大幅改良を受けている。
インストルメントパネル

一見するだけでは、外観もほとんど変化がなさそうだが、実際にはボンネットやサイドフェンダーが、アルミや樹脂からスチールにつくり変えられている。さらにボンネットの開き方も変更された。これらによって質感向上とともに走行中のボンネット振動低減を図っているというが、それは日本の後に発売された欧州市場で得られた知見だそうだ。また、サウンドシステムは国内初のヤマハ(改良前はBOSE)ブランドで、その能力を最大限に引き出すために、パワートレインの静粛性のほか、ドア設計にも手を入れた。
居住性



走りも当然ながら熟成/改良されている。前記のリチウムイオン電池は改良前(20.0kWh)から総電力量と出力がアップして、冷却性能の強化と相まって、システム総出力も約2割引き上げられている。0-100㎞/h加速(ノーマルモード)タイムも約2秒短縮した。このように、その内容は発売3年での途中改良とはとても思えず、下手なフルモデルチェンジより手が込んでいる。それはシャシー関連もしかりで、バネ、ダンパー、パワステを熟成して、「ひと筆書きでつながるハンドリング」に磨きを掛けている。
うれしい装備






月間販売台数 912台 (24年9月~25年2月平均値)
現行型発表 21年10月 (大幅改良 24年10月)
WLTCモード燃費 17.6 ㎞/ℓ ※「M」

ラゲッジルーム



実際に乗っても、静粛性向上とパワーアップは明確で、個人的には歴代アウトランダーで初めて〝速い〞と思った。また、これだけの高性能なのに、ロールを拒否しない、しなやかなアシさばきは三菱の伝統だ。さらに言うと、内装もグレードによっては最上級のセミアニリン本革シートまで用意される上質なものだ。それにしても、これだけ凝ったメカがテンコ盛りなのに、3列7人乗りまで用意されるのも、あらためて驚く。3列目はさすがに狭いが、アウトランダーには、掛け値なしに「ないものはない?」というくらい、三菱の技術と執念が詰まっている。


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