Lotus Type 79

アンドレッティのチャンピオンマシン

自身がかつてテストドライブしたロータス タイプ79と対峙したヤン・ラマース。
今回、ロータスは1979年にヤン・ラマースがテストドライブした「ロータス タイプ79」を用意。マリオ・アンドレッティ78年シーズンにドライバーズ選手権を制覇したマシンだ。

2025年シーズンのF1グランプリ第15戦オランダGPを前に、元F1ドライバーのヤン・ラマースが、英国・ノーフォーク州ヘセルにあるロータスのテストコースを訪れた。この地で、ラマースは数々の伝説を残したF1マシン「ロータス タイプ79」を46年ぶりにドライブすることになった。

ラマースがドライブしたタイプ79は、1978年にザントフォールト・サーキットで開催されたオランダGPにおいて、マリオ・アンドレッティが優勝。このシーズンは6勝を挙げたアンドレッティがドライバーズ選手権、ロータスがコンストラクターズ選手権を制覇した。翌1979年にはラマース自身が、ロータスへの加入を目指し、タイプ79をテストしている。

今回、ヘセルにおいてラマースはロータス・ファミリーの一員として、彼と共にロータスで働いた数人のメカニックやエンジニアが駆けつけるなど、温かい歓迎を受けることになった。彼のために、1978年シーズンにアンドレッティがドライブしたアイコニックなブラックとゴールドのジョン・プレイヤー・スペシャルのカラーリングをまとったタイプ79が用意されている。

タイプ79で完成に至ったグラウンドエフェクト

元F1ドライバーのヤン・ラマースが、ヘセルにあるロータスのテストコースで「ロータス タイプ79」をドライブした。
F1において、様々な革命を起こしてきたロータス。タイプ79では、タイプ78から導入された「グラウンドエフェクト」が完成に至り、圧倒的な強さを発揮することになった。

ロータスは、F1において数多くの技術革新を起こしてきた。その多くは現代のF1マシンでも不可欠な要素となっている。1957年はシーケンシャルギアボックスを初搭載し、1966年にはエンジンをシャーシの応力部材として統合。1979年はリヤディフューザーを導入し、1981年にはF1初となるカーボンファイバー製モノコックをデビューさせた。マシンにスポンサーロゴを配置するという、現在では当たり前となった施策もロータスが初めて行っている。

ロータスが成し遂げた多くの技術革新の中でも最も重要だと言われているのが、いわゆる「グラウンドエフェクト」技術だろう。これはタイプ78で初導入され、タイプ79で完成形に至った。グラウンドエフェクトは、車体下部のエアフローを加速させることで、車両を路面へ“吸い付ける”効果をもたらす。

タイプ79はデビュー戦となった、1978年のベルギーGPにおいてアンドレッティが優勝。さらに5勝を挙げて、ロータスにダブルタイトルをもたらすことになった。オランダGPではアンドレッティが勝利、チームメイトのロニー・ピーターソンが2位に入ったことで、ロータスが1-2フィニッシュを達成している。

46年ぶりにタイプ79をドライブしたラマース

自身がかつてテストドライブしたロータス タイプ79と対峙したヤン・ラマース。
79年シーズン、ラマースはロータス加入のチャンスを狙いタイプ79をポール・リカールでテスト。残念ながらシートは、アンジェリスに渡ることになった。

1979年10月24〜25日、フランスのポール・リカール・サーキットにおいて、ヤン・ラマースにタイプ79をテストする機会が与えられた。この時、用意されたのはロータス・グリーンに「マルティーニ」のカラーリングを纏った1979年仕様。ラマースは、ロータスのファクトリードライバーを目指し、テスト機会が与えられた。ただ、そのシートはイタリア人ドライバーのエリオ・デ・アンジェリスに渡っている。

今回、クラシック・チーム・ロータスのオーナーであり、コーリン・チャップマンの息子であるクライヴ・チャップマンと共に、ラマースはタイプ79での初走行を振り返った。クライヴの元に、1979年のポール・リカールテスト時の手書きメモが丁寧に保存されていたのである。ラマースはかつての記憶を辿りながら、ジョン・プレイヤー・スペシャル仕様のタイプ79でラップを重ねた。

ラマースはタイプ79に加えて、最新フル電動スーパースポーツ「エヴァイヤ」もドライブ。最高出力2039PSを発揮する世界最強の量産BEVもまた、ラマースに深い感銘を与えることになった。タイプ79とエヴァイヤのテストドライブを終えたラマースは、次のように印象を語った。

「こうやって、ロータスの皆さんと再会できて本当に嬉しいです。F1時代とGTプログラムの両方で出会った仲間たちですからね。当時、グランプリを席巻したF1マシンと、フル電動スーパースポーツのロータス・エヴァイヤが、性能やハンドリングにおいて遜色ないという事実は、自動車産業全体の進化を物語っています」