スクーターのVベルトは走行中に突然切れてしまうことも!走行距離が多いスクーターはベルトのチェックをオススメします!

一部の車種を除いて、スクーターの駆動系にはVベルト無段変速装置が採用されている。これはドライブ側、ドリブン側の2つのプーリーとゴムベルトを組み合わせたトランスミッションで、遠心力とスプリングの力によってプーリーの幅が変化することで、ゴムベルトの掛かる位置が変化して変速を行うというもの。このゴムベルトには接地面を大きく取れるようにVベルトが使用されている。Vベルトは常にプーリーと接触して駆動力を伝えているので、長く使えばすり減ってしまうし、熱や経年劣化によりひび割れが起きてしまう。国産メーカーでは車種にもよるが大体2万kmくらいでの交換が一般的。国産メーカーのノーマルの車両であれば2万kmを超えても突然切れてしまうことは少ないが、海外メーカーのスクーターは要注意。某イタリアメーカーのエンジンでは1万kmごとの交換が推奨されているが、1万km以内に切れてしまったという話もちらほら聞く。今回修理した車両もイタリア製エンジンを積むスクーターだ。

切れたVベルトは見事に粉々に。ケース内の隙間に詰まってしまっていた。
Vベルトのケブラー繊維がほつれてドリブンプーリーの隙間に絡まっていた。大きなダメージがなくて安心。

長い間乗らなかったので不動車になったというスクーターをネットオークションで購入。放置車両ならキャブレターのクリーニングで復活できそうだと思って落札。早速キャブレターを分解・清掃してエンジンが始動できた。が、いくらアクセルを開けてもリヤタイヤが回らない。駆動系に問題ありと判断して、駆動系のケースを開けてみると、、、中からゴムの切れ端がポロポロと落ちてきた。どうやらベルトが切れているようだ。ちぎれたベルトの破片はあちこちに挟まり、ベルトに使われていたケブラーの繊維がほつれてクランクシャフトやプーリーの隙間にぎっちり詰まっていた。

ちぎれてしまったベルトはもちろん、同時に摩耗しているであろうウエイトローラーとスライドピースも新品に交換しようとネットを調べて見ると、なんと純正のVベルトは2万円越え!国産メーカーのパーツと比べると割高だ。しかも寿命も短い。車両は15年以上前のポンコツだし、ディーラーももう存在しないメーカーだし、ってことで、完全に自己責任で、長さと幅が最も近いホンダ純正パーツのVベルトに交換することに。ウエイトローラーとスライドピースは純正を注文。ベルトの残骸を綺麗に取り除き、摩耗したベルトの削りかすもクリーニングしたら新しいパーツを装着。このエンジンはドリブン側のシャフトがベルトケースを貫通していて。ケースにベアリングが使われているので、このベアリングもついでに交換しておいた。あとはケースを組み戻したら完成。純正ではないベルトを使ったが、特に異音はなく加速も問題なさそう。

ベルトはタイホンダ純正の初期型PCX用を流用してみた
ウエイトローラーとスライドピースも新品交換。
ちぎれたゴムベルトが擦れた跡が。金属用コンパウンドで磨いておいた。
ドリブンスプリングを縮めてベルトを挟み、ドリブンピーリーが戻らないように結束バンドで縛っておくと取り付ける時にラクだ。
プーリー、ベルトを元通りに組み込んだら完成。純正以外のベルトを使ったが、特に異音が出ることもなく加速も問題なさそう。

国内メーカーのスクーターで、ノーマルのままであれば2万km以内で突然切れることはあまりないと思われるが、ベルトケースからキュキュっと擦れるような異音がしたり、加速がスムーズではなく違和感があったり、異変を感じたら早めにチェックすることをお勧めする。今回はベルト交換だけで修理できたが、切れたベルトが挟まってプーリーやクラッチにダメージを及ぼすこともあるので、定期的にベルトケース内部の状態をチェックするようにしたい。

ドリブン側のシャフトはケース側のベアリングで支持されている構造。
このベアリングも新品に交換しておいた(6202ZZを使用)。