バイクライフは百人百様だと思う。だが、どんなオートバイにも必要なのがエンジンオイル交換だ。周知の通り、エンジンオイルは大切な役割を持っている。

「潤滑」「冷却」「密閉」「清浄分散」「防錆」というエンジン内を正常に保つ5つの役割に加えて、ミッションとクラッチにも同様の効果をもたらす。さらに、「緩衝作用」と「酸中和作用」も担っているのだ。

筆者は愛車に目立ったカスタムやチューニングを施さないが、エンジンオイルにはこだわってきた。距離を走っていなくとも季節ごとのオイル交換は欠かさない。またCB1300SFは走行4000km程度、使用頻度が高くギアチェンジも多いCT125は1000km以内で交換するようにしている。

さて、諸兄はエンジンオイルをチョイスする時にどんなところで選ぶだろうか。まずは粘度。純正オイルの粘度の基準に、季節や性能向上目的で変えていくと思う。次はグレード。JASO規格が定めるもので、大抵はMA以上、特に高性能バイクにはMA2を選ぶことだろう。

鉱物油や化学合成油かという違いもある。昨今は旧車でない限り、なかなか鉱物油を選ばないかもしれない。せっかく入れ替えるなら、化学合成油を選ぶ人が多いかもしれない。ただし、鉱物油か化学合成油かの違いは実は明確ではなく、グループ3のベースオイルを使った商品を、鉱物油として販売するメーカーと化学合成油として販売するメーカーがあり、定義が曖昧なところもある。

いずれにせよユーザーは、こうした“違い”でオイルを見分けると思うが、例えば「10W-40」で「MA2」というオイルが2種類あったとしても、それは同一の性能ではないことは周知の通りだ。ベースオイルに添加剤など、いわゆる成分がメーカーや商品ごとに変わるため、愛車との相性や好みを見つけるのが難しい。

筆者の現在の愛車はCB1300SFとCT125だが、かつては別々のオイルを選んでいた。しかし、一時期はこれにF800GSも加わっていたので、20Lのオイル缶(10W-50 MA2)を購入してすべて同一にしてしまった。

これはどのバイクでもそれなりに調子が良かったのだが、ひとつ問題が出てきた。それは、CT125のギアチェンジのフィーリングがイマイチになったのである。たしかに、ペダルを踏んだ時の動きにスムーズさを感じるのだが、何というカチッという節度感が失われてしまったのである。

かつて巷では、「カブには硬いオイルがいい」という言い伝えがあった。高価なオイルを使うと、その添加剤の影響で遠心クラッチがすべってしまうといった症状が顕れることがあったからだ。そのため、以前ホンダのベーシックオイルだった「G1(部分化学合成油)」が最も相性がいいと言われていた。

しかし、最近はメーカーもオイルの性能を見直して、それを基にエンジンを開発するので、そういったことは無いと言われている。ホンダもかつてのG1を「ホンダプロ・スタンダード」という商品にリニューアルしている。

そこで、お世話になっているホンダドリーム荻窪のスタッフに、その辺の話を聞いてみた。

「昔と比べるとそういった相性の悪さは少ないと思いますが、やはりオイルよって添加剤の違いがあるため、エンジンだけでなくクラッチやミッションのフィーリングに影響は出ます。オーナーさんによって感じ方は違うと思いますが、CB1300SFと同じオイルをCT125に入れた場合、ギアペダルの操作感に違和感が出たというのは否定できない話ですね」

そこで今度は国産メーカーの高性能バイクオイル(10W-40 MA2)を選んで、両モデルに入れてみた。すると、CT125はエンジン、ギアともフィーリングが良くなったのだが、CB1300SFは悪くはないがビミョーなフィーリングに。

エンジンの回り方はフリクションを感じるようになり、またギアペダルの操作感は渋い感じがする。CB1300SFはクイックシフターを装備しているので、なおさらだった。粘度は低くなったはずだが、必ずしもフィーリングがマイルドになるとは限らないわけだ。

もちろんこのオイルの性能が悪いわけではないのだが、CT125とは相性が良く、CB1300SFとはイマイチだったということだ。ここで思い出されたのが、前出のバイク店スタッフの言葉だ。

「オイルはこだわり始めると“沼”にはまると言いますが、やはり満足するフィーリングを得るためには、バイクごとにオイルを変えてあげる方がいいかもしれませんね。エンジンの形式や排気量によってオイルとの相性が違ってきますので。その相性を探し当てるのに、オイル沼にハマるんですよ」

とりあえずペール缶を購入したばかりなので、当分はこのオイルを使うことになるが、次にロングツーリングに出かけた時は、「やはり銘柄を変えよう」となるかもしれない。ただこのオイル沼、筆者的には楽しいと思っている。エンジンオイル交換の効能はプラシーボ効果ではなく、たしかに交換前と差が出る。銘柄を変えた場合はさらに顕著だからだ。

ちなみに、メーカーによっては純正オイルを使用していない場合のメカトラブルは保証外を謳っている場合があるので、社外品を使う場合は自己責任となるので留意しておきたい。