4 1/2 Litre Blower

1927年から市販され主力車種に

ベントレーは「3リッター」に代わるスタンダードモデルとして、ボア100mm、ストローク140mmの4398cc直列4気筒SOHC4バルブエンジンを開発。3300mmのホイールベースをもつ標準シャシー、2980mmのショートホイールベースシャシーを用意し、「4 1/2リッター」として1927年から市販を開始した。

ベントレーからはスチール製ラダーフレームのローリングシャシーの状態で出荷されたが、カスタマーはこれにガーニー・ナッティング製のサルーンボディや、ヴァンデン・プラ製の4人乗りオープン・ツアラーボディなどを架装。1931年までに720台が製造されるベントレーの主力車種となった。

レースフィールドにおいては、1927年のル・マン24時間にフランク・クレメント/レスリー・カリンガム組のドライブでプロトタイプの1号車がデビュー。スタートでいきおいよく飛び出したカリンガムの4 1/2リッターは幌を上げた状態にもかかわらず2周目に8分46秒というコースレコードを記録し、2台のベントレーを従えてトップを快走。結果的にはベントレー同士のクラッシュに巻き込まれリタイアとなるものの、その優秀性を証明してみせた。

ルーツ式スーパーチャージャーを装着

続く1928年のル・マンには3台の4 1/2リッターが出場。そのうちの1台は昨年リタイアしたプロトタイプ1号車“オールド・マザー・ガン”で、ル・マン初出場となるウルフ・バーナートとバーナード・ルービンがドライブし、様々なトラブルに見舞われながらも見事な総合優勝を果たしている。

そして1929年、この年のル・マンで「6 1/2リッター スピード6」をドライブして優勝したベントレーボーイズのひとり、サー・ヘンリー“ティム”バーキンは、さらなるパワーアップを目指しアムハースト・ヴィリヤースの設計によるルーツ式スーパーチャージャーを装着した4 1/2リッターの開発をW.O.ベントレーに提案する。

しかしながらW.Oは「過給がエンジンの設計を歪め、性能を損なう」と主張して反対。そこでバーキンはベントレーモーターズ会長のウルフ・バーナートを説得し、ホモロゲーションを取得するために必要な50台の生産を承認させた。

レース参戦には消極的だったが

こうして誕生したのが、「4 1/2リッター・ブロワー・ベントレー」だ。クランクシャフト駆動式ルーツ式スーパーチャージャーをラジエーター前方に設置。さらに強化クランクケース・シリンダーブロック、高強度コネクティングロッド、専用ピストンピン、改良型エンジンマウントを備えた4 1/2リッター直4エンジンは、それまでの130HPを大きく上回る175HPを発生。専用のチューニングを施したレース用のエンジンに至っては240HPを発生した。

結局、ベントレーは175HPのロードバージョンを50台(ちなみにヴァンデン・プラ製4人乗りオープン・ツアラーボディを採用したブロワーの価格は、1930年当時1720ポンドであった)、240HPのレースバージョンを5台生産。ところが、生産コストが高く、少数しか販売されなかったブロアーはベントレーの財政状況を圧迫することとなる。

また前述のような理由でW.O.自身がブロワーでのレース参戦には消極的だったため、バーキンは、裕福な女性篤志家であったドロシー・パジェの資金援助を受け、ウェリン・ガーデン・シティにあったBirkin & Co’sワークショップで4台のチームカーを製造。このうちの2台で1930年のル・マン24時間に挑戦し、6分48秒というコースレコードをバーキン自身の手で記録するが、いずれもエンジン・トラブルでリタイアという結果に終わってしまう。

コンティニュエーション車として現代に

このようにレースではエンジンの信頼性の低さで結果を残せなかったブロワーだが、1929年には女性ドライバーのミルドレッド・ブルースがフランス・モンレリー・サーキットで24時間走行距離記録(平均速度143.9km/h)を樹立。1930年にはケイ・ドンが、1932年にはティム・バーキンがイギリス・ブルックランズ・サーキットでの最速記録を樹立している。

そして2019年、ベントレーは世界初の戦前車のコンティニュエーション(継続生産)車として1929年のチームカー、シャシーナンバーHB 3403をモチーフとした4 1/2ブロワーを12台製造することを発表。

HB 3403は生産を担当するマリナーによって完全に分解され、すべてをスキャニングしたうえで完全データ化。完璧に当時の姿が再現され、2023年までに全12台のブロワー・コンティニュエーション・シリーズが製造された。

12台すべての製造が完了した「ベントレー ブロワー コンティニュエーション」。

「ベントレー ブロワー コンティニュエーション」の最終号車が完成「スピード シックス 」の実走行テスト開始【動画】

ベントレーは「ブロワー コンティニュエーション」の最後の顧客仕様車が完成したことを受けて、「スピード シックス コンティニュエーション」の本格的なテスト段階に入ったことを発表した。各技術の品質を確認・証明するため、8000kmのサーキットテストを含め、3万5000kmの実走行テストが行われる予定だ。