V4プロトタイプマシンがミサノでお披露目

2025年現在のMotoGPには、5メーカーが参戦している。ドゥカティ、KTM、アプリリア、ホンダ、そしてヤマハである。このうち、ヤマハを除いた4メーカーのマシンには、V型4気筒エンジンが搭載されている。ヤマハだけが、並列4気筒を搭載したMotoGPマシン、YZR-M1で戦っているが、2021年にファビオ・クアルタラロによってチャンピオンを獲得して以来、ヨーロッパメーカーの後塵を拝する状況が続いている。

こうした状況のなか、2024年9月、ヤマハ・モーター・レーシングの元マネージング・ディレクター、リン・ジャービスさんによって、ヤマハが「V4エンジンを開発中である」ことが公にされた。

ヤマハのV4エンジンは水面下での開発、テストが行われてきた。この作業はシーズンを戦いながら、つまり現行のYZR-M1の開発と同時進行で行われており、それがひとかたならぬ大変さであることは想像に難くない。

ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われたV4プロトタイプマシンのお披露目は、サンマリノGPの木曜日、ヤマハのホスピタリティで行われた。

そして、ヤマハのMS開発部長、鷲見崇宏さんはV4開発のプロジェクトについて、このように説明した。

「このプロジェクトの目標は、もちろん『再び勝利の道へ戻ること』です。しかし、ご存じの通り、この取り組みはそれほど単純でスムーズなものではありません。ですから、私たちは単なる技術的な部分だけでなく、知識的な側面からもアプローチしようとしています。作業の進め方そのものを変えるだけではなく、個々のスタッフのマインドセットを変えることにも取り組んでいます」

また、これは重要なことだが、ヤマハはサンマリノGPでのワイルドカード参戦はあくまでも実戦での検証段階であることを強調している。

ヤマハ・モーター・レーシングの現マネージング・ディレクター、パオロ・パヴェシオさんは、「この新しいプロトタイプに課せられた使命は、現在のYZR-M1と同じレベルのパフォーマンスを達成することでした。目標にかなり近づいていると思います。しかし最終的な決断を下す前に必要なのは、このバイクをレースウイークで走らせることです。パフォーマンスをしっかり評価し、ポテンシャルを探らなければなりません」と述べている。

サンマリノGP、テストライダーによるV4の実戦走行

金曜日からは、テストライダーのアウグスト・フェルナンデスによってワイルドカード参戦という形でV4プロトタイプマシンが初めてレースウイークを走った。フェルナンデスは2024年までKTMのサテライトチームに所属してKTMのMotoGPマシンRC16で戦っていた、V4エンジンの経験を持つライダーである。

金曜日の感触はよかったが、土曜日、日曜日になると厳しいコメントが多くなった。フェルナンデスの予選(Q1)タイムは、1分31秒812で、Q1トップのクアルタラロと約1.3秒差だった。クアルタラロは並列4気筒のYZR-M1によるタイムである。

土曜日午後のスプリントレース(13周)では、優勝ライダーから約28秒差の18位。ヤマハの最上位であるジャック・ミラーからは、約11秒差だった。

日曜日の決勝レース(27周)では、優勝ライダーから約1分差の14位。なお、このレースでは8名のライダーが転倒を喫し、あるいはマシントラブルによりリタイアとなったので、順位よりもタイム差で考えるべきだろう。ヤマハ最上位のクアルタラロとは、約41秒差だった。

日曜日のレース後、フェルナンデスは「理解するためにやることがたくさんある。いいフィーリングを得るための範囲がとても狭いように感じるからだ。問題もあった。ダッシュボードが作動せず、燃費にも問題があって、17周の間、ずっと燃費を管理していた。安定したレースをするのが難しかった」と語っている。

ただ、「この週末はよかったと思う。レースの環境で本当の開発プロセスを始められたからね」ともフェルナンデスは説明した。

レースウイークとは違い、テストではテストライダーは基本的に単独で走る。誰かと競い合うことも、必死にタイムアタックすることもない状況だ。実際のところ、フェルナンデスがV4プロトタイプマシンでタイムを出そうとソフトタイヤでアタックをしたのは、この週末が初めてだった。また、27周の決勝レース、つまり実際のレース距離でしか得られない情報もある。

「テストのときは『いい』『大丈夫だ』と思えるけれど、ここでは本当にいいかどうかが試される。いいことはいいけれど、今は素晴らしい状態ではないということだね」

「でも、ポテンシャルは確かにある。いい感触を得られたときは、すでに前よりもよくなっている。問題は、そのフィーリングが一貫していないことなんだ」

V4プロトタイプマシンの実戦での「検証」は始まったばかりだ。フェルナンデスによると、今後、マレーシアGPとバレンシアGPでワイルドカード参戦を予定しているという。