摩耗の限界が分かるサインとは?
バイクのタイヤが寿命となる要因には、大きく分けて以下の3つがある。
1,トレッド(タイヤ表面)の摩耗が限界
2,タイヤの材質劣化
3,走行中のアクシデントによるパンクなどの破損
これらのうち、とくに1と2は、常にタイヤをチェックし、現在どんな状態なのかを確認することで交換時期も分かる。
まず、1のトレッド(タイヤ表面)の摩耗が限界か否かを知るには、「スリップサイン」を確認すれば分かる。
スリップサインとは、タイヤの溝に設けられた隆起部分のことで、残り溝の深さを示す目安だ。ご存じの通り、タイヤはすり減ると溝がなくなり、グリップ力など本来の性能が発揮できなくなる。そして、もしタイヤ表面にスリップサインが現れたら、残りの溝の深さが0.8㎜(道路運送車両法に定められているバイク用タイヤの最低の溝深さ)に達した印。タイヤの摩耗が限界になっていることが分かる。

スリップサインがどの位置にあるのかは、タイヤのサイドウォール(タイヤ側面)にあるマークをチェックする。マークは「▲」印を使うことが一般的で、タイヤサイズによっても異なるが、通常は4~6か所に配置されている。なお、これもタイヤサイズによって変わるが、「▲」マークの代わりに文字の「TWI」が刻印されているケースもある。

スリップサインは、前後タイヤのどこか1か所でも現れたら、そのまま走行するのは危険なので、新品タイヤに交換しょう。また、交換時期についても、スリップサインが出てから交換するのではなく、表面に現れる前に交換する方がいいだろう。「もう少し走ると出てくるな」といったタイミングで交換する方が、限界に達する前だから安全だといえるのだ。
冒頭でも述べたように、バイクにとってタイヤは安全に走るために非常に重要なパーツ。くれぐれも、早め早めの交換を心掛けたい。

溝があっても劣化がひどいと交換
タイヤにスリップサインが出ておらず、溝も十分にある場合でも、交換すべき状態となることもある。それが、上記2の「タイヤの材質劣化」だ。
たとえば、タイヤの経年劣化などにより、トレッドやサイドウォールにひび割れなどがある場合だ。当然だが、タイヤはゴム製品。製造して年月が経つと、ゴムが硬くなり、ひび割れなども起こる。こうした状態で走行をすると、走行中にバーストすることもあるから非常に危険なのだ。

また、もし、ひび割れなどがなくても、たとえば、10年間タイヤを変えていないというのも御法度。これも、同様にゴムが硬くなっているため、グリップ力が低下している可能性が高いからだ。とくに、こうした状態で雨天時など滑りやすい路面を走ると、転倒のリスクがかなり高くなるので危険だといえる。
ほかにも、タイヤのトレッド面やサイドウォールにタイヤ内部構造のコードに達している外傷、ゴム割れがあったりするのも危険。そういった場合も、タイヤ損傷発生につながる恐れがあるので、新品タイヤに交換しょう。
なお、こうした状態に関して、もしよくわからない場合は、タイヤに詳しいバイクショップやタイヤ販売店に相談することをおすすめする。
走行中にパンクした場合の対処法
そして、上記3のような「走行中のアクシデントによるパンクなどの破損」。これは、タイヤに問題がなくても、道路に落ちていた釘など尖ったものを踏んでしまったことで、走行中に突然パンクしてしまったようなケースだ。

最近は、チューブレスタイヤを装着するバイクも増えている。もし、そういったモデルであれば、走行中に尖ったものを踏んでパンクしても、応急パンク修理キットなどを携行していれば、その場で修理を施すことも可能だ。
ただし、この場合、ある程度の走行はできるようになったとしても、それはあくまで「応急処置」。パンクの状態にもよるが、確実に安全か否かは分からないため、そのまま乗り続けるのは危険だ。できるだけ早急に最寄りのバイクショップやタイヤ交換ができる店にいき、専門家にチェックしてもらおう。
そして、専門家が見て大丈夫と言わない限り交換する方が安全。これも寿命と考えた方がいいだろう。

なお、パンク修理キットを持っていない、もしくはタイヤの破損状態がひどくパンク修理キットの応急処置でも走行不可などの場合は、JAFや任意保険に付帯しているロードサービスなどを呼んで、レスキューしてもらう必要がある。そういったケースでも、できるだけ早く最寄りのバイクショップやタイヤ交換ができる店にいき、専門家にチェックしてもらい、必要ならばタイヤを交換すべきことは同様だ。
タイヤのトラブル防止には日常点検が大事
走行中に釘などが刺さり突然パンクしてしまった場合を除き、タイヤにスリップサインが出てないかとか、ひび割れや傷がないのかなどを知るためには、日頃からタイヤの状態をチェックする日常点検が大切だ。
できれば、毎回走る前にチェックする方がベター。また、タイヤの空気圧が適正値になっているか否かも、こまめにチェックしたい。適正なタイヤ空気圧で走行しないと、トレッドの特定場所に偏摩耗が発生する異常摩耗になることがあるからだ。
ちなみに、タイヤの空気圧は、規定値より低すぎても、高すぎても危険。空気圧が低い場合はトレッドのショルダー部の摩耗が早く進行するし、高いとトレッドセンター部の摩耗進行が早くなり、いずれも異常摩耗を起こしやすくなる。そして、これら要因により、走行中にタイヤがパンク、もしくは破裂してバーストする危険性があるのだ。先に述べたような釘など尖ったものを踏んだ場合と違い、こうしたことは事前の点検で防げるもの。ぜひ実践することをおすすめする。

また、タイヤの空気圧は、その日の天候や気温などによっても変化する。そのため、これも可能なら、走行前に毎回チェックし、その日の状況にマッチした適正空気圧にした方が安心だ。
なお、愛車のタイヤ空気圧適正値は、取り扱い説明書を見るか、チェーンケースなどに貼られているシールにも書いてあるので、そこを見れば分かる。バイクのタイプや排気量などによって適正空気圧は違う。また、モデルによっては、2人乗りをする場合に空気圧を上げるように指定されていることもある。愛車の空気圧にはどんな規定値や条件があるのかなどを必ず事前に確認し、こまめにチェックすることをおすすめする。

バイクの保管方法でもタイヤの寿命は変わる
タイヤの寿命を伸ばすには、バイクの保管方法にも注意するといい。できれば、ガレージなどに屋内保管をする方が、雨風や直射日光を避けられるため、タイヤだけでなく、バイクの塗装なども長持ちさせやすい。
ただし、もし、屋外にしか駐車できない場合は、バイクカバーを掛けておくことをおすすめする。特に、タイヤは、太陽光に含まれる紫外線や熱の影響を受けやすいもの。そのため、紫外線を長い期間浴びたり、高温になったアスファルトの上にずっと置いておくと、ゴムの劣化が進んでしまい、前述したひび割れなどを起こしやすくなる。

もちろん、バイクカバーも、ずっと屋外で使っていると劣化する。もし、劣化して破けたまま使っていると、結果的にバイク自体やタイヤを守ることにならないため、こちらも、定期的な交換が必要だ。
何度も言うが、前後2輪だけで走るバイクのタイヤは、安全で安定した走行をするためにとても重要。それだけに、常に現在のタイヤの状態を知ることがもっとも大切だ。ここで紹介したいくつかのチェックポイントを定期的に実行し、安全・安心なバイクライフを送って頂きたい。