RUF
1981年に自動車メーカーの認証を得る

RUF(ルーフ)の起源は古く、戦前に遡る。1939年に創業者のアロイス・ルーフ・シニアが総合自動車整備工場のAUTO RUFを創業したのが始まりだ。その後、ドイツ初のフルサイズ観光バスを独自開発するなど、自動車業界での事業を広げていく中で、ポルシェ356の修理を手掛けたことから、ポルシェとの関わりが深まっていく。
そして、ポルシェをベースにより優れた走行性能を持たせたクルマの開発を始めたのが、現CEOのアロイス・ルーフ・ジュニアだ。911Sのアップグレード版の製作に始まり、1977年に初のコンプリートカーであるRUFターボ・ナンバー1を開発し、78年には3.2リッター220PSのNAエンジンを搭載したSCRを発売。これが現在に続くアルファベット3文字による車名の始まりだ。
だが、ここまでは単なるポルシェのチューニングカーという存在だった。そのRUFの大いなる転機となったのが1981年だ。この年、RUFはドイツ連邦自動車局(KBA)から自動車メーカーの認証を得たのである。これはRUFの生み出すクルマが、走行性能だけではなく、安全性なども含めたトータルで非常に優れたものであったからに他ならない。これ以降、RUFのクルマはポルシェのチューニングカーではなくRUFとして、独自のシャシーナンバーを与えられることになる。
あらゆるパーツを自社開発




1983年に発売されたBTRは世界で初めて実測で300km/hを超えたロードカーとなり、1987年に30台限定で発売したCTRは342km/hを達成、世界で初めて200マイルの壁を破ったロードカーとなった。そして1988年にはアメリカでも自動車メーカーとして認証され、欧州、北米、そして日本など、特にポルシェの人気が高い地域において確固たる支持を得ている。
サスペンションはプッシュロッドに



RUFのクルマは一見すると911と似ているが、その製作手法はもちろん単に911にパーツを加えていくというものではない。911をホワイトボディの状態とし、シャシー、ボディシェル、エンジン、トランスミッション、サスペンションなど自社開発したパーツを組み上げていく。ベースはポルシェだが、完全なるオリジナルのスーパースポーツカー。RUFが自動車メーカーたる所以である。2017年にはカーボンモノコックシャシーとカーボンボディにオリジナルエンジンを搭載したCTR Anniversaryを発表。このクルマはポルシェをベースとしたものではなく、すべての構成部品を自社開発しており、RUFの高い技術力を改めて知らしめた。モノコックとボディをカーボンとしたことで重量はわずか1250kgで、3.6リッター水平対向6気筒ツインターボのエンジンは710PS/880Nmを発揮。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーンのプッシュロッド式と、まるでレーシングマシンのようなスペックを誇る。
空冷のDOHCツインターボを搭載するTribute



翌2018年にはSCRが登場。これはCTR Anniversaryと同じシャシーに4.0リッターの自然吸気エンジンを搭載したものだ。大きなターボウイングがダックテールスタイルとなり、フェンダーのNACAダクトが備わらないなど、CTR Anniversaryよりもプレーンなデザインを持つ。さらに2020年にはAWDを採用したRodeo、2024年には最新の排気ガス基準に適合するDOHCエンジンを搭載したTributeを発表。このSCR、Rodeo、Tributeの3台が、現在のRUFの最新コンプリートカーである。
コンバージョンキットという方法も



コンプリートカーはRUFの中心的ビジネスであるが、もうひとつ、見逃せないのがコンバージョンキットだ。これは今までに培ったノウハウを注入して開発したポルシェエンジンのためのパッケージキット。吸排気系やターボチャージャー&インタークーラー、冷却系、そしてECUなどで構成されるキットで、これを組み込むことで水平対向6気筒はRUFの性能を得ることになる。パッケージ販売のみで、このコンバージョンキットを装着したクルマにはRUFのエンブレムが与えられるというのも、自信の表れだろう。
ホイールはほぼ全世代の911に対応

コンプリートカーやコンバージョンキットよりも、もっと手軽にRUFの世界を感じられるのがホイールだ。定番の5本スポークホイールはシンプルな機能美を感じさせ、いかにもRUFらしいデザインだ。もちろん鍛造で、高い強度と軽量を誇る。幅広いサイズ展開なので、ほぼ全世代の911に対応するのも魅力だ。
世界的に人気の高いポルシェ911は、多くのチューニングブランドやアフターパーツブランドが存在するが、自動車メーカーと認定され、数々の歴史的名車を生み出してきたRUFは、それらとは別格として語られるべき存在だ。オリジナル車両開発の他にも911のレストアやレストモッドも手掛け、最近は環境に対応した製品開発にも注力するなど、その動向にはこれから目が離せなくなりそうだ。
REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/RTC
【SPECIFICATIONS】
RUF SCR
ボディサイズ:全長4207 全幅1818.5 全高1265mm
ホイールベース:2342mm
車両重量(DIN規格):1250kg
エンジン:水冷水平対向6気筒
総排気量:4000cc
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前235/35ZR19(8.5J) 後305/30ZR19(11J)
最高速度:320km/h
Tribute
ボディサイズ:全長4207 全幅1818.5 全高1265mm
ホイールベース:2342mm
車両重量(DIN規格):1250kg
エンジン:空冷水平対向6気筒ツインターボ
総排気量:3600cc
トランスミッション:7速MT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前235/35ZR19(8.5J) 後305/30ZR19(11J)
【問い合わせ】
RTC
〒618-0091 京都府乙訓郡大山崎町円明寺金蔵12-1
TEL 075-956-0930
https://www.ruf-web.co.jp
