ALPINE A110
アルピーヌ A110とは

現行の「アルピーヌ A110」は、ルノー傘下のスポーツブランド「アルピーヌ」が2017年に発表した2シータークーペだ。1963年に登場した先代A110 ベルリネッタは、1971年にモンテカルロラリーで表彰台を独占するなどモータースポーツで名声を築いた。その初代の精神を受け継ぎつつ、最新技術を取り入れたのが現行のA110である。
アルミ製モノコックとリヤミドシップレイアウトを採用。車重を1100kg台に抑え、馬力ではなく軽さとバランスで勝負する設計思想を明確に打ち出している。最高出力は185kW(252PS)、221kW(300PS)または239kW(329PS)と控えめながら、俊敏なハンドリングと高いレスポンスにより、ポルシェ 718 ケイマンやロータス エミーラと競合しつつ、独自の立ち位置を築いている。
アルピーヌ A110の外観・内装


アルピーヌ A110の外観と内装は、先代モデルの伝統を継承しながらも、現代のスポーツカーとして洗練されたものとなっている。
外観:先代モデルのイメージを受け継ぐ存在感
アルピーヌ A110の外観は、伝統的な丸型4灯ヘッドライトを現代風にアレンジした独自のフロント周りが特徴である。曲線美を活かした流麗なフォルムのボディは、空力性能とフランス車らしい優雅さを両立している。高性能仕様や限定モデルではカーボン素材や固定式リアウイングなどのエアロパーツなどを採用し、さらなる軽量化とダウンフォースの強化を図っている。街中においてもサーキットでも、A110のエクステリアは独特の存在感を放つ。
内装:シンプルかつ機能的な構成
アルピーヌ A110のインテリアは、シンプルかつ機能的にドライバーを中心とした設計が施されている。軽量バケットシートの表皮にスエード調素材が採用されるグレードでは、レーシングカーのような雰囲気を演出している。モダンなインフォテインメントシステムやデジタルメーターを備えながらも、直感的な配置で操作性を高めているのが特徴だ。装飾を抑えたキャビンは軽量化にも寄与し、ドライビングに没頭できる空間を実現している。
アルピーヌ A110のサイズ


アルピーヌ A110は、そのコンパクトなサイズによって軽快かつ俊敏な走りを可能にする。
ボディサイズ:軽量化と空力性能を融合した流麗なコンパクトボディ
アルピーヌ A110ベースモデルのボディサイズは全長4205mm、全幅1800mm、全高1250mm、ホイールベース2420mmで、現代のスポーツカーとしては扱いやすいコンパクトさが魅力である。アルミ製のボディワークとシャシーにより車重は1100kg台に抑えられており、ライバルと比較しても際立った軽さを誇る。低い車高は空力性能と低重心化に寄与し、コーナリング時の安定性を高めると同時に流麗なシルエットを生み出している。短い前後オーバーハングとワイドトレッドを組み合わせることで、俊敏かつ自然なステアリングフィールを実現し、都市部での取り回しやすさとサーキットでの機敏な挙動を両立している点も特徴である。
室内スペース:シンプルかつ機能的な2シーター空間
アルピーヌ A110は2シーター専用設計で、ドライバーとパッセンジャーの快適性を重視している。スポーツカーらしい割り切りが見られるが、シートポジションや操作性は最適化されており、走りに集中できる環境を提供する。シートは低く構えたポジションを基本とし、サポート性の高いバケットシートは長距離走行においても身体をしっかりと支える。車内の質感はグレードによって異なり、レザー仕上げが施される仕様では高級感とスポーツ性を兼ね備えている。ラゲッジスペースはフロントに96L、リヤに100Lの計196Lを確保しており、ウィークエンドの旅行やサーキット用の装備品程度なら十分に収納できる。
アルピーヌ A110の走行性能・燃費性能


軽量コンパクトなアルピーヌ A110は、効率の高いパワートレインと相まって走行性能と燃費性能を高いレベルで両立させている。
走行性能:パワーとサイズ&重量のバランスが生み出す俊敏性
アルピーヌ A110が搭載する1.8リッター直4ターボは252〜300PSを発揮する。110台の限定生産が行われたA110 R ウルティムには325PSにチューンナップされたエンジンが搭載され、0-100km/h加速を3.8秒でこなす。ダブルウイッシュボーンサスペンションや低重心設計、フロント44%リヤ56%といった重量配分により、ステアリング応答性は極めて鋭い。ドライブモードの切り替えによって、エンジンレスポンスや排気音が一層高まるセッティングも楽しめる。軽量ボディと高剛性シャシーが、走る楽しさをダイレクトに伝えるのがA110の魅力だ。
燃費性能:軽さが引き出す燃費効率の高さ
アルピーヌ A110の燃費性能はWLTP基準で14.7km/Lと、高性能スポーツカーとしては非常に優秀だといえる。45Lの燃料タンクによって長距離ドライブにも対応できる。軽量設計が走行性能だけでなく燃費効率も押し上げており、日常使用における使いやすさも実現している。高性能でありながら経済性も兼ね備えている点は、アルピーヌ A110の大きな強みといえる。
アルピーヌ A110の購入価格・維持費

アルピーヌ A110には多くのグレードや特別仕様車があり価格帯も幅広い。25台限定の「ANNIVERSARY」は960万円(税込)から、トップグレードの「R ウルティム」には5000万円を超えるモデルもあるが、どちらも限定生産で日本への導入はごく僅かと思われる。
購入価格:好みに応じて幅広い選択肢が用意されるA110
日本市場のアルピーヌ A110は、快適性を重視したグランドツアラー的味付けの「GT」が1150万円。シート表皮にスエード調素材を使用するなど、スポーティな「S」が1210万円。F1からの技術も採り入れてサーキット走行を意識した「R チュリニ」が1610万円という価格設定だ。なお、ホイールやボディなどにカーボン素材を採用してさらなる軽量化を図った70周年記念仕様の「R 70」(1790万円)や、GTとSの橋渡し的存在の「GTS」(1200万円)も日本語サイトには掲載されているが、どちらも台数はかなり限定されているようだ。
維持費:高性能スポーツカーとしては比較的抑えられる傾向
アルピーヌ A110の維持費は、輸入車ゆえに保険料やメンテナンスコストが国産車より高めである。タイヤやブレーキなど高性能部品の交換頻度も考慮する必要があるが、軽量設計により消耗は比較的抑えられる傾向にあるだろう。購入前には、正規ディーラーの保証範囲や期間を確認の上、アフターサポート契約も検討することを勧める。
| 区分 | 項目 | 年間費用(円) | 備考 |
| 税金・保険 | 自動車税 | 3万6000 | 1798cc |
| 重量税 | 1万2300 | 重量 約1.1t(2年間で2万4600円) | |
| 自賠責保険 | 8825 | 2年分1万7650円 | |
| 任意保険 | 10万 | 30代ゴールド免許の場合の概算 | |
| メンテナンス | オイル交換 | 5万 | 銘柄等により変動。年1回交換と想定 |
| タイヤ交換 | 10万 | 4年で交換と想定 | |
| 消耗品 | 随時 | ブレーキパッド、ブレーキ液、バッテリー等の交換・整備費用 | |
| 日常費用 | ガソリン | 7万 | 年間5000km走行、燃費約14km/L、ガソリン¥200/Lで計算 |
| 駐車場 | 60万 | 都内マンション併設タワーパーキング想定(5万円/月) | |
| 合計 | 約100万〜 | 注)税金・自賠責保険料以外はすべて概算 |
アルピーヌ A110 モデル解説



アルピーヌ A110シリーズには、幅広いニーズに対応するキャラクターの異なる仕様が用意されている。パワーだけでは測れない、軽さと一体感を核とする点は全グレード共通だが、用途や志向に応じて最適な1台を選べるのが魅力である。ここでは、現在の日本でメイングレードといえる3つの仕様を紹介する。
A110 S:鋭さを極めたピュアスポーツ
A110 Sはスポーツ志向の強いグレードである。1.8リッター直列4気筒ターボエンジンは最高出力300PSを発揮し、0-100km/h加速は約4.2秒を記録する。足まわりは専用チューニングが施され、引き締められたサスペンションとハイグリップタイヤの組み合わせにより、鋭いターンインと高い旋回スピードを実現する。外観も専用エアロパーツやブラックのアクセントが与えられ、アグレッシブな印象を放つ。日常使用にも十分対応するが、本領はワインディングやサーキットであり、シリーズの中で「走りを最優先したピュアスポーツ」と位置づけられるモデルである。
| 項目 | 内容 |
| 発表年 | 2019年 |
| 全長/全幅/全高/ホイールベース | 4205/1800/1250/2420 mm |
| パワートレイン | 1.8L 直4 DOHC ターボ |
| 総排気量 | 1798cc |
| 最高出力、最大トルク | 221kW(300PS)/6300rpm、340Nm/2400rpm |
| トランスミッション・駆動方式 | 7速DCT、RWD |
| 車両重量 | 1110kg |
| 0-100km/h加速 | 4.2秒 |
| 最高速度 | 260km/h |
| 新車価格 | 1210万円 |
A110 GT:快適性と上質感のGT仕様
A110 GTは、A110 Sと同じ300PS仕様のエンジンを搭載しながら、快適性と上質さを重視したグランドツーリング志向のモデルである。サスペンションはSよりも柔軟にセッティングされ、ロングドライブでも疲労感を抑える快適な乗り心地を実現する。インテリアにはレザーをあしらった上質な仕上げが施され、標準装備も充実している。スポーツ性とラグジュアリー性を両立している点が特徴である。外観デザインはエレガントで、力強さよりも洗練された印象を強調する。スポーツカーでありながら日常的な使い勝手を求めるユーザーに適したモデルであり、シリーズの中で最も幅広い層に受け入れられる存在である。
| 項目 | 内容 |
| 発表年 | 2021年 |
| 全長/全幅/全高/ホイールベース | 4205/1800/1250/2420 mm |
| パワートレイン | 1.8L 直4 DOHC ターボ |
| 総排気量 | 1798cc |
| 最高出力、最大トルク | 221kW(300PS)/6300rpm、340Nm/2400rpm |
| トランスミッション・駆動方式 | 7速DCT、RWD |
| 車両重量 | 1120kg |
| 0-100km/h加速 | 4.2秒 |
| 最高速度 | 260km/h |
| 新車価格 | 1150万円 |
A110 R チュリニ:日常とサーキットの架け橋
A110 R チュリニは、サーキット志向のA110 Rをベースに、公道での扱いやすさと快適性を高めた派生モデルである。最高出力300PSのパワーユニットはそのままに、足まわりやタイヤを公道走行向けにリセッティングし、サーキット専用の過激さを抑えている。外観はA110 Rよりも落ち着いた印象を持つ一方、軽量カーボンパーツやR由来の空力技術が一部継承されている点は大きな魅力である。A110 R チュリニは日常とサーキットを橋渡しする存在として位置づけられ、究極のパフォーマンスを求めながらも日常使いに妥協したくないファンに向けたグレードといえる。
| 項目 | 内容 |
| 発表年 | 2023年 |
| 全長/全幅/全高/ホイールベース | 4255/1800/1240/2420 mm |
| パワートレイン | 1.8L 直4 DOHC ターボ |
| 総排気量 | 1798cc |
| 最高出力、最大トルク | 221kW(300PS)/6300rpm、340Nm/2400rpm |
| トランスミッション・駆動方式 | 7速DCT、RWD |
| 車両重量 | 1110kg |
| 0-100km/h加速 | 4.0秒 |
| 最高速度 | 284km/h |
| 新車価格 | 1610万円 |
限定モデル/特別仕様車
日本でのメイングレードであるA110 S、GT、R チュリニはいずれも正規ディーラーで注文可能なカタログモデルで、スポーツ性・快適性・日常性のバランスによって明確に差別化されている。R ウルティムやアニバーサリーは世界的にも台数が限定されたコレクターズモデルで、抽選販売や台数割り当てによってしか入手できない希少性を持つ。GTSやR70も特定の市場や年次に導入された仕様だ。
アルピーヌ A110の新車・中古車価格

アルピーヌ A110の新車価格は仕様によって非常に幅広いのが特徴で、900万円台後半から5000万円超に及ぶ。希少モデルのため中古市場においても数は少ないが、初期型が600万円程度から見つかる。800万円台から1000万円ほどの予算があれば、比較的程度の良い選択肢がありそうだ。
| モデル | 車両本体価格(税込) | 中古車 |
| A110 S | 1210万円 | 600万~1800万円 |
| A110 GT | 1150万円 | |
| A110 R TURINI | 1610万円 | |
| R70 | 1790万円 | |
| GTS | 1200万円 | |
| ANNIVERSARY | 960万円 | |
| A110 R ULTIME | 4200万~5200万円 |
アルピーヌ A110について多い質問

以下では、アルピーヌ A110について多い質問に回答する。
Q:アルピーヌとはどのようなクルマ・ブランドなのか?
アルピーヌは1955年に設立されたフランスのスポーツカーブランドであり、現在はルノーの傘下。軽量構造と俊敏なハンドリングを哲学とし、ラリーで数々の勝利を収めた歴史を持つ。現行ラインナップの中心はピュアスポーツA110で、伝統と現代技術を融合したモデルとして位置づけられている。さらに近年はF1世界選手権にワークスチームとして参戦し、ドライバー育成にも注力するほか、WEC(世界耐久選手権)でもプロトタイプレースカーを走らせるなど、モータースポーツ活動を通じてブランドイメージを強化している。
Q:A110の先代モデルはどのようなクルマだったのか?
1960年代に登場した初代A110 ベルリネッタは、FRP製の軽量ボディとリアエンジン・リアドライブ(RR)レイアウトを備えた小型スポーツカーである。ルノー製エンジンを搭載し、低重量と優れたトラクションを活かして数々のラリーで活躍した。特に1973年には世界ラリーチャンピオンシップのタイトルを獲得し、アルピーヌの名を世界に知らしめた。美しい流線型のデザインと扱いやすいサイズ感は高く評価され、今なおクラシックカー市場で高い人気を誇る存在である。
Q:アルピーヌ A110は故障が多くないか?
アルピーヌ A110はルノーの最新技術と品質基準に基づいて製造されており、致命的な故障が頻発するモデルではない。欧州での評価やオーナーレビューでも信頼性は概ね良好とされ、日常走行において大きな不安を抱える必要は少ない。ただし輸入スポーツカーゆえに、メンテナンスや部品供給コストは国産車より高めであり、納期が長くなるケースもある。電子制御やターボエンジンを搭載しているため、定期的な点検や正規ディーラーでの整備を欠かさないことが長期的な安心につながる。
アルピーヌ A110の購入方法

アルピーヌ A110は、日本国内ではアルピーヌ正規ディーラーを通じて注文可能である。特に限定モデルは全国で数十台程度の割り当てにとどまり、多くが抽選販売となる。中古車も流通しているが、希少性から価格は高止まり傾向にある。

