CFMOTO・450MT……99万9900円(2025年5月予約開始)



リズミカルな水冷パラツイン、扱いやすく信頼性も高い

ラリーレイドマシンを彷彿させるタフなスタイリングが印象的な、CFMOTOの“450MT”。このカテゴリーは、国内メーカーではヤマハ・テネレ700が代表格だが、あちらはシート高が875mmとかなり高く、個人的には少し身構えてしまう存在だった。ところが——。
450MTにまたがった瞬間、あまりの足着きの良さに驚かされた。身長175cmの筆者で、両足のかかとがギリギリ接地するほどなのだ。さらに、リヤショックのリンク位置を変えることで、シート高を20mm下げることも可能という。今回の試乗では、CFMOTO東京ショールーム(東京都狛江市)を起点に、住宅街の入り組んだ道を約4時間走行したが、この足着き性の良さは想像以上にありがたかった。
まずは動力性能の印象から述べよう。エンジンは449.5ccの水冷パラツインで、最高出力は42.1PS。参考までに、ホンダのクロスオーバーモデル“NX400”(89万1000円)は、399ccから46PSを発生するため、数字だけを見れば450MTの方がやや控えめに思える。

ところが、実際に走り出すと印象は一変する。スタートダッシュはNX400より明らかに鋭く、低速トルクの厚さが際立っている。極端なローギア設定というわけではなく、カムや吸排気系、点火時期の最適化によって、低~中回転域を重視したセッティングが功を奏しているようだ。さらに、270°位相クランクによるリズミカルな鼓動感と快活な吹け上がり、2本のバランサーシャフトが生むスムーズさ、そして軽いクラッチレバーの操作感など、このエンジンは距離を延ばすほどに好感度が増していく。
気になった点は二つ。一つは、スロットル開け始めの反応が少し鋭すぎること。かつてのドン突きと呼ばれるようなレベルではないが、渋滞路ではもう少しマイルドでもいいと感じた。そしてもう一つは燃費だ。市街地を走行している際のメーター表示は5.5L~6.0L/100kmで、これはリッターあたりに換算すると18.2~16.7km/Lとなる。NX400の実燃費が30km/L前後であることから、あまり良いとは言えない。とはいえ、開発スピードの速いCFMOTOのこと、今後のECUアップデートなどで改善される可能性は十分あるだろう。
なお、試乗当日は真夏日で、都内の環七・環八の渋滞に長時間巻き込まれたが、それでもアイドリングが不安定になったり、シフトフィーリングが重くなるようなことは一切なし。あくまでも一例ではあるが、このモデルの信頼性の高さを実感できた。
快適なサスペンションと優れたツーリング適性に感心

プラットフォームを共有して派生モデルを増やすのが主流となっている中で、450MTはクロモリ鋼トレリスフレームをこのモデル専用に設計している点が際立つ。ステアリングヘッドの位置が高めに設定されているうえ、スイングアームを支えるピボット周辺の構造も、同系エンジンを搭載する450SRや450NKとはまったく異なる。さらに、アンダーガードを装着できるようにダウンチューブを追加するなど、明確にオフロード志向で仕立てられているのだ。



視線の先には大きなTFTディスプレイが構え、アルミ製ハンドルバーはワイドかつ高めのポジション。乗車した瞬間にラリーレイドマシンらしい雰囲気が漂う。ハンドリングの印象は、ゆったりとした舵角の付き方や大きめの車体ピッチングなど、どこかヤマハ・テネレ700に通じるものがある。バンク角主体で旋回するタイプであり、トレリスフレームは芯の強さとしなやかさを併せ持つ。前後サスペンションの作動は非常にスムーズで、ギャップ通過時の衝撃吸収も良好。2時間以上連続で走り続けてもお尻が痛くならないほど快適で、ロングツーリングにも十分対応できる。
ブレーキはフロントがシングルディスクながら、オンロードで不足を感じることはなく、制動力・コントロール性ともに必要にして十分。リヤのABSを独立スイッチで解除できる点にも、オフロード走行を強く意識した設計思想がうかがえる。
ウインドシールドは左右どちらのダイヤルからでも高さを調整でき、最上段では防風性能も上々。ミラーはスタンディング時に腕と干渉しないよう、ステーが内側に折りたためる構造となっているなど、細部まで実用的だ。
より競技志向のマシンとしてはKOVE(コーベ)の“450ラリー”(138万円)が挙げられるが、450MTはそれよりもアドベンチャーツアラーとしての性格が強い。本国ではトップケースやパニアケースといった純正アクセサリーも用意されており、ツーリングユースに最適化されていることが分かる。BMW・F 900 GSやヤマハ・テネレ700よりも軽くて扱いやすいアドベンチャーを求めるライダー、あるいはホンダ・CRF250ラリーやスズキ・Vストローム250SXからのステップアップを考えている人にとって、450MTはまさに絶妙なポジションにある1台と言えるだろう。
ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)
ディテール解説








CFMOTO・450MT 主要諸元
【エンジン】
エンジン形式 水冷2気筒、4ストローク、DOHC、270°クランクシャフト
排気量 449cc
内径 × 行程 72mm × 55.2mm
出力 31kw(42.1PS) / 8500rpm
トルク 42N·m / 6500rpm
圧縮比 11.5:1
トランスミッション CF-SCスリッパークラッチ、6速、湿式マルチプレート
スロットル 機械式
【サイズ】
全長 2210mm
全幅 870mm
全高 1390mm
ホイールベース 1505mm
シート高 820mm(800mm:リンケージボルト位置を調整した場合)
最低地上高 220mm
車両重量 185kg
燃料タンク容量 17.5L
【シャシー】
フロントブレーキ φ320mm シングルディスク、4ピストンキャリパー
リアブレーキ φ240mm シングルディスク、シングルピストンキャリパー
フロントタイヤ 90/90 R21 CST
リアタイヤ 140/70 R18 CST
リム チューブレス対応スポークリム
ABS BOSCH デュアルチャンネル ABS (リアABS ON/OFF可能)
トラクションコントロール BOSCH TCS
電源ポート 18w USB Type-A & Type-C





