ヤマハ・XSR155……52万5800円~(インドネシアモデル)

今回の試乗車はインドネシアとの太いパイプを持つオートサロンオギヤマのレンタル車両だ。XSR900・60th Anniversary(2016年4月15日発売)を彷彿させるこのUSインターカラーは、同ショップがインドネシアのペイントショップにオーダーしたオリジナル。57万7500円で販売された。
これを執筆している2025年10月現在、オートサロンオギヤマでは、レギュラーカラーであるマットシルバープレミアム、メタリックブラックエレガンス、メタリックブラウンオーセンティック(53万6800円)を販売中。過去にはゴロワーズカラーなどもあった。
XSR125 ABS(国内、2024年モデル)。試乗記事はこちら
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国内正規ラインナップのXSR125やMT-125、YZF-R125/R15らとプラットフォームを共有している。

洗練されたパフォーマンス、6年経っても色褪せない完成度

筆者が初めてヤマハ・XSR155に試乗したのは、デビュー間もない2019年10月のことだ。初代XSR900のDNAを、スタイリングだけでなく走りでも見事に受け継いでいると感じたのを今でも覚えている。あれから6年が経過したが、特にモデルチェンジを受けることもなく現在まで生産が続けられているのは、それだけ完成度が高かった証と言えるだろう。

インドネシアではカスタマイズ文化が盛んなようで、今回試乗車をお借りしたオートサロンオギヤマでは、現地BRT社と共同開発した183ccキットや206ccキットをはじめ、純正/社外の別を問わずさまざまなパーツを取り扱っている。カスタマイズの余地、つまり伸び代があるかどうかは、愛車を選ぶ際の大きな決め手となるはずだ。

XSR155が搭載するエンジンは、可変バルブ機構“VVA”を採用する155.09ccの水冷シングルだ。あらためて乗ってみると、発進時から125ccモデルよりも力強さが明確であり、排気量24%アップの恩恵は大きいと感じる。7400rpmを堺に吸気側カムが切り替わる仕組みで、これはトップ6速で100km/h付近に相当する。つまり、市街地走行を含む多くのシーンでは低中速用カムで走ることになる。ヤマハがVVAという複雑なシステムを採用した理由が分かろうというものだ。

VVAの切り替わりは非常にスムーズで、レッドゾーンが始まる1万1000rpmまでパワーカーブはシームレスにつながる。3速で引っ張ればメーター読みで90km/hを超え、134kgという軽量な車体と相まって、まさに「俊足」という表現が当てはまるほどの動力性能だ。スロットルレスポンスは操作に対して忠実で、クラッチレバーの操作力も軽い。シフトフィールにも不満はなく、完成度の高いパワーユニットであることをあらためて実感した。

155.09ccの水冷SOHC 4バルブ単気筒エンジンは、吸気バルブ側の可変バルブタイミング機構“VVA”をはじめ、アルミ製ダイアジルシリンダー、アルミ鍛造ピストン、アシスト&スリッパークラッチなどを採用。ボア径は125のφ52mmに対して155はφ58mmとなる。ストローク58.7mmは共通だ。

ハンドリングは自然で扱いやすく、パッケージ全体の完成度は高い

このXSR155をはじめ、XSR125やMT-125、YZF-R125/R15らは、スチール製ツインスパーフレームに倒立式フロントフォークという共通プラットフォームを採用している。興味深いのは、XSR155と125はフロントタイヤが1サイズ太く、指定空気圧を低めに設定。さらに着座位置がわずかに後方寄りであることだ。これらの違いが、ハンドリングに独自の味わいを与えているのは間違いない。

XSR155のステアリング特性は、フロントの舵角の付き方がやや穏やかで、なおかつ接地感が高い。加えて155は、125よりもエンジンのトルクが厚い分だけ、スロットル操作だけで車体のピッチングを引き出しやすく、それを生かすことでクイックに旋回させることも可能だ。その一方で、バイク任せでスイスイと曲がれるイージーさもあり、このバランスの良さがXSR155の人気を支えているように思う。なお、標準装着タイヤはセミブロック風のトレッドパターンながら、舗装路でのグリップは十分以上。オンロード主体のライダーでも不満を感じることは少ないはずだ。

ブレーキは、街乗りでは必要十分な制動力を発揮するが、ワインディングロードではもう少しフロントの初期制動力が高めでもいいと感じる場面があった。これは125よりもエンジンパワーがある分だけ、自然とペースが上がっていたことが要因だろう。車体側には強力な制動力を受け止めるだけの剛性的な余裕が感じられるので、よりスポーティに走らせたいならブレーキパッドの変更も有効だ。なお、リヤブレーキは制動力、コントロール性ともに良好だった。

軽二輪枠のXSR155と原付二種のXSR125を隔てるのは、主に免許制度と維持費だ。任意保険のファミリーバイク特約が使える125はコスト面で有利だが、条件によっては差額が小さい、あるいは長期契約で逆転するケースもある。パッケージとしての完成度はやはり155に軍配が上がることから、自動車専用道路を使う機会が多いライダーや、すでに普通二輪以上の免許を持っている人には、迷わずこちらをお勧めしたい。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

やや広めのバーハンドルと、着座位置の自由度が高いフラットなシートで構成されるライディングポジション。
シート高はXSR125と同じ810mmを公称。オートサロンオギヤマでは約4cm下がるローダウンプレートを販売中だ。

ディテール解説

ホイール径は前後17インチで、標準装着タイヤは125と同じIRC・トレイルウイナーGP-211だ。フロントフォークはφ37mm倒立式。フロントキャリパーはピンスライド片押し式2ピストンだ。
リヤサスペンションはリンク式モノクロス。オートサロンオギヤマでは、約4cmローダウンするリンクプレート(ブラック、レッド、イエローとも8800円)を販売中だ。また、車名入りのホイールステッカーも取り扱っており、こちらは前後左右1台分で6600円だ。
ブラックで統一されたシンプルなコックピット。燃料タンク容量は10.4Lを公称する。
ネガポジ反転LCDの丸型メーターを採用。外周にバーグラフ式のタコメーターと燃料計をレイアウトし、各種インジケーターをメーターリムにまとめている。
シンプルなスイッチボックス。ハザードスイッチはなし。
クラシカルなタックロールシートを採用。オートサロンオギヤマでは、インドネシアヤマハの純正アクセサリーであるシングルシート(2万6950円)を販売中だ
前後一体型のシートはキーロックを解除することで取り外せる。ETC車載器の取り付けも問題なし。
アルミ製のステーで支持される丸型LEDヘッドライト。レンズ中央には車名のロゴが入る。
丸型テールランプもLEDで、ウインカーは前後ともフィラメント球だ。

ヤマハ・XSR155 主要諸元

全長/全幅/全高 2,007mm/ 804mm/1,080mm
シート高 810mm
軸間距離 1,330mm
最低地上高 170mm
車両重量 134kg
原動機種類 水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 155.09cm3
内径×行程 58.0mm×58.7mm
圧縮比 11.6:1
最高出力 14.2kW(15PS)/10,000r/min
最大トルク 14.7N・m(1.2kgf・m)/8,500r/min
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.05L
燃料タンク容量 10.4L
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー型式 YTZ4V
スパークプラグ MR8E9
クラッチ形式 湿式多板アシスト&スリッパークラッチ
変速装置/変速方式 常時噛合式6速/リターン式
フレーム形式 デルタボックス
タイヤサイズ(前/後) 110/70-17M/C(54S)(チューブレス)/140/70-17M/C(66S)(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック(倒立式)/スイングアーム(リンク式)

※インドネシア仕様