レジェンドの系譜を受け継ぐ新世代ロードスター

ホンダが2026年モデルとして欧州に投入するCB1000Fは、1980年代の名車CB750Fをオマージュした新たな大型ネイキッドスポーツである。CBシリーズの65年にわたる歴史を背景に、CB1000ホーネットをベースとしながらも独自のキャラクターを確立。開発コンセプトは「ベスト・バランスド・ロードスター」であり、中量級の軽快な操縦性とリッターバイクの迫力を両立する。流麗なラインで構成されたボディは、燃料タンクからテールカウルまでひと続きの造形を描き、丸型ヘッドライトとダブルホーンが80年代のスピリットを現代に再現する。
ファイアブレード譲りの心臓を再チューニング

心臓部にはCBR1000RRファイアブレード由来の水冷直列4気筒DOHCエンジンを搭載し、徹底的なリセッティングが施された。最高出力は91kW/9000rpm、最大トルクは103Nm/8000rpmを発生。吸気ダクト長を延長し、カムタイミングやインテーク径を見直すことで低中速域のトルクと鼓動感を強化した。4-2-1の排気系と3室構造のメガホンマフラーが放つ音質は、往年のCBらしい官能を伴う。変速機は1・2速をローギヤ化し、発進加速を鋭くするとともに、3速以降をハイギヤード化して巡航時の回転数を抑制。100km/h走行時にはわずか4000rpmで走る余裕を見せる。燃費は5.6L/100kmと優れ、16Lタンクにより280km以上の航続を確保する。
6軸IMUが統括する電子制御と高品質装備

CB1000Fは6軸IMUを中心に最新の電子制御を採用。スロットル・バイ・ワイヤによる3種のライディングモード(SPORT/STANDARD/RAIN)に加え、ユーザー設定を2パターン保存できる。エンジンブレーキ、トルクコントロール(HSTC)、ウイリー制御を段階的に調整可能で、状況に応じた最適制御を実現する。5インチTFTフルカラー液晶メーターは視認性に優れ、Honda RoadSyncアプリと連携してナビゲーションや音楽操作を可能にする。ホンダスマートキーによるキーレス始動、緊急制動を他車へ知らせるESS機能など、安全と利便を両立した装備群を備える。
シャシーと足まわりが描く“走りの均整”

フレームはスチール製ダイヤモンド構造で、CB1000F専用のロングサブフレームを採用し、タンデム時の快適性を向上。41mm径のショーワSFF-BP倒立フォークと新設計プロリンク式リアショックはフルアジャスタブル仕様で、街乗りからワインディングまで上質な乗り味を提供する。制動はニッシン製4ピストンラジアルキャリパーと310mmフローティングダブルディスクを組み合わせ、IMU制御のコーナリングABSが安定した制動を保証する。タイヤは前120/70ZR17、後180/55ZR17の組み合わせで、ホイールはCBR1000RR-Rのデザイン思想を継ぐ軽量5Yスポーク。シート高795mm、ホイールベース1455mm、装備重量214kgというスペックがバランスの良さを裏付ける。
CB1000Fは、グラフィティブラック、ウルフシルバーメタリック+ブルーストライプ、同グレーストライプの3色で展開。高性能でありながら扱いやすく、往年のCBの魂を現代技術で再構築したこのマシンは、単なる懐古ではなく“現代の最良のロードスター”としてホンダの伝統を次代へと繋ぐ存在である。
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