連載

ゆるカブツーリング

県道、林道を走りつなぐ名栗周遊ルートを満喫してみました

秩父へ向かう際によく利用するルートに、青梅から続く県道53号線があります。この道は青梅市街から名栗を経て芦ヶ久保付近で国道299号線につながるのですが、交通量が極めて少ないので爽快に走ることができます。ただし峠付近は道幅が狭く急カーブが連続するのでペースは上がりません。まあそんな道だからこそ通行する車が少なくてバイクにとっては快走路となるのですが、今回は途中の飯能市名栗界隈をめぐってみました。

いつもは青梅から県道を進むのですが、山間部にある2つの寺社を訪ねるルートを優先したので、飯能市街から県道70号飯能下名栗線を進んでいきます。都内から飯能市街までは幹線道路がメインになるので交通量が多く、ちゃんと渋滞にも巻き込まれたりするので、なかなかうっとうしい走りを強いられます。なので県道70号線に入ると一気に流れが良くなりホッとします。

入間川沿いの県道70号線は奥武蔵の山々の間を縫うように走ります。途中の原市場からは北に進路を取り、県道350号南飯能線を進みます。道は一気に狭くなり、センターラインもありません。進むにつれて点在する民家も減り、標高を上げつついよいよ山間部へと入り込んでいきます。このあたりまで来ると、季節が冬ということもあって行き交う車はまったくいなくなりました。寂しがり屋のライダーにはお勧めしません。
地蔵尊がある場所で道は二又に分かれます。右が県道350号線ですが、左の林道を進みます。この林道を行った先に今回最初の目的地である竹寺があるのです。
うっそうとした森の中を行く道は、凍結こそしていないもののずっと濡れていて、所どころに落石もありました。途中で林道原市場名栗線が左に分かれているのですが、路面崩落のため長い間通行止めのままです。以前に一度だけ走ったことがあるのですが、仁田山峠付近からの眺めが良かったのを記憶し ています。竹寺へとさらに進むと「信号機あり」の看板が。道が狭すぎて車のすれ違いが困難なので、信号によって一方通行にしているのです。そんな一方通行区間を過ぎると、道が未舗装となって茅の輪をくぐり竹寺の駐車場へたどり着きます。
竹寺へと続く舗装林道。濡れた路面に落ち葉の組み合わせは、なかなかスリッピー
途中には林道原市場名栗線の分岐があって、この道を進めば上名栗へと行ける
林道原市場名栗線は路面が崩れているため長いこと通行止め。復旧の目途は立っていない
竹寺への最後のアプローチは、さらに道が狭くなるため信号で指示される一方通行
竹寺の駐車場入り口。道は最後に未舗装となり、竹のオブジェと茅の輪に出迎えられる
竹寺はその名のとおり美しい竹林が境内を彩っているのが特色で、正式名称は医王山薬寿院八王子といいます。神仏習合の寺で山岳信仰の道場としても千年以上の歴史があるそうです。御本尊は牛頭天王です。ここ竹寺では、精進料理(予約制)やそばやうどんなどの軽食、焼きだんごなどを食べることができ、土産物の売店もあります。もし開いていたらここで昼飯を食べようと思っていたのですが、閑散期ということで案の定店は閉まっていました。
神仏習合の寺なので鳥居もある
眺望スペースには竹の望遠鏡(レンズはなし)が設置されている
天気が良ければ都心を遠望できる
境内には竹林の小道があり、のんびり散策を楽しむことができる
随所に竹のランタンが置かれていて、ライトが灯る
竹林にはさまざまな演出がされていて、訪れる観光客や参拝者を飽きさせない
条件が良ければ埼玉越しに都心が展望できる境内を散策したのち、スーパーカブに跨り再び来た林道を引き返します。地蔵尊の二又に出たところで、左に曲がります。少し行くとまた二又が現れます。右が県道350号線で吾野付近で国道299号線に合流します。左は例によって狭隘な舗装林道が続きます。それにしても、こんな山奥にもぽつりぽつりと民家があるのが驚きです。買い物はどうしているんだろうか?といらぬ心配をしてしまいます。
山道はやがて急こう配で一気に高度を上げます。しかもヘアピンカーブの連続で勾配がきついものだから、カーブの内側はまるで立ちはだかる壁の様相です。ビギナーライダーは高い確率でバイクを倒してしまいます。そんな難所を走るスーパーカブもさすがに1速じゃないと上りませんでした。そして上りきったところがやはり神仏習合の寺である子ノ権現です。正式名称は大鱗山天龍寺といい、竹寺と同様に千年以上の歴史があります。足腰を守る神様として知られていて、境内には大きな鉄のわらじと大きな夫婦下駄が奉納されています。ここにも茶店があるのですが休みでした。しかし向かいの売店は元気に営業中だったのがちょっとびっくり。なにしろ参拝者なんてまったくいなかったのですから。この子ノ権現からも埼玉越しに都心を眺めることができます。
灯篭が出迎えてくれる子ノ権現の山門
山門の先には仁王像がにらみを利かせている
足腰守護の神仏なので、境内にある日本一の鉄わらじは信仰的シンボルとなっている
鉄わらじの隣には、大きな夫婦下駄もある
 奥武蔵にたたずむ2カ所の山寺を堪能した後、子ノ権現へ上ってきたのとは反対の林道を下っていきました。実はこちらの道が子ノ権現へのメインルートになっていて、道幅もわずかながら広くなっています。とはいっても相変わらず急カーブが連続していて気が抜けません。県道395号南川上名栗線に合流したところを左に折れます。右に進めば国道299号線に出ます。県道395号線も林道と大差ない程度の道で、うっとうしいくらいカーブが続いていて楽しめます。天目指峠を過ぎると道は次第に下っていき、県道53号青梅秩父線に合流します。
県道359号南川上名栗線の天目指峠は標高490m。昔から吾野と名栗を結ぶ重要な峠だった
ノスタルジックな建物は以前JAの支店だった。現在はカフェになっている
走りなれた県道53号線で上名栗の集落を抜けて名栗湖方面へと左折しました。名栗湖は昭和61年(1986年)に完成したロックフィル式の有間ダムによってできた人造湖で、ワカサギ釣りやカヌーなどが楽しめます。また休日には多くの行楽客が訪れ、ツーリングライダーにも人気のスポットになっています。この日も冬の平日だというのに数台のバイクが来ていました。ダムの下流側にはグランピング施設などがある『ノーラ名栗』や日帰り温泉の『さわらびの湯』があり休日には賑わいます。
ロックフィル式の有間ダムによってできた名栗湖。ワカサギ釣りやカヌーを楽しむことができる
ダムの下流には日帰り温泉施設の『さわらびの湯』があり、地元の人や観光客に親しまれている
温泉に浸りたい欲求にかられましたが、名栗湖を後に県道53号線を青梅方面へ進みます。県道70号線が合流する交差点の角にプレートランチが評判のカフェ『フクフクガーデン』があります。ここで遅めの昼飯にすることにしました。数種類あるメニューからべジキーマカレーを選び、スープ、サラダとともに美味しくいただきました。
フクフクガーデンは2019年2月にここ下名栗にオープンしました。オーナー夫妻はもともと、広告や雑誌などのクリエイターとして活躍されていた方で、僭越ながら僕の著書のひとつ『バイクで行く廃駅・廃線めぐり』のデザインをしていただいたのもご主人の白石さんです。ちなみに店主は奥様の福田さんで、フクフクガーデンの名も奥様の名前が由来です。
下名栗に2019年にオープンした『フクフクガーデン』
古民家を再生した店は、現在も進化中
ランチプレートやケーキが人気で、休日には車やバイクで訪れる人が絶えない
 こうして名栗や奥武蔵の山間の林道、寺社をめぐったゆるカブツーリングですが、走行距離は120㎞。要したガソリンは2Lちょっと。燃費は58㎞/Lでした。使った費用は1500円ちょっとという結果でした。1月でしたが3月並みの気温だったため、路面凍結もなく、林道ですけどワインディングを存分に楽しんだツーリングでした。

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