ディテール解説

エンジンはNC750シリーズと共通の745cc水冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒で、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を組み合わせる。2025年モデルではDCTの制御をアップデートし、クラッチのより優れた応答と繊細な接続に磨きをかけた。ライディングモードはスタンダード/スポーツ/レイン/グラベル/ユーザー1/ユーザー2の6種類で、それぞれでエンジン出力レベル/エンジンブレーキレベル/DCTの変速プログラム/トルクコントロールレベル/ABSモードの設定が連動して切り替わる。
フレームはスチール製ダイヤモンドタイプで、2021年のモデルチェンジの際に軽量化とスペース拡充をテーマに一新された。スイングアームはクロス部を中空、アーム部をコの字断面としたアルミ一体型で、HPDC(高圧鋳造)にて成形されている。
φ41mm倒立式フロントフォークはショーワ(日立アステモ株式会社)製SFF-CA(セパレート・ファンクション・フロントフォーク・カートリッジ)で、フロントブレーキシステムにはアフリカツインと同様のニッシン製ラジアルマウント式対向4ピストンキャリパーを採用。ワイヤースポークホイールはアルミリム&ステンレススポークのチューブレス仕様で、標準装着タイヤはブリヂストン・AX41だ。
フロントフォークの右トップキャップにプリロードアジャスターあり。さらに右側には伸び側減衰力調整があり、ここを回すためのBFRアジャスターは車載工具に含まれている。
ホイールサイズはフロント17インチ、リヤ15インチで、後輪駆動はチェーンドライブ。ちなみに競合車のヤマハ・TMAX650は前後15インチホイールにベルトドライブを組み合わせる。リヤブレーキキャリパーはニッシン製の片押し式シングルピストンで、下側にあるワイヤー作動のキャリパーはパーキングブレーキ用だ。
リヤサスペンションはボトムリンク式のモノショックで、プリロードを10段階に調整可能。標準位置は最弱から4段目で、調整に必要なピンスパナ&ホルダーは車載工具に含まれる。
全幅の広いアルミテーパーハンドルを採用。左右ブレーキレバーの距離調整は6段階。標準装備のグリップヒーターはメーター側で温度調整を行う。新設されたクルーズコントロールは50~160km/h、3~6速で使用可能だ。樹脂製ナックルガードは走行風や雨がライダーに当たらないようにプロテクション効果も考慮している。
5.0インチTFTフルカラー液晶メーターは、スマホと連携可能なHonda RoadSync(ホンダ・ロードシンク)を採用。ブルートゥース接続されたインカムを通じて、音声による操作を実現している。
直感的に操作できる4ウェイセレクトスイッチを新採用。スイッチボックスの前後にシフトアップ/ダウンスイッチが設けられている。ウインカーにはセルフキャンセル機能が組み込まれており、右左折後にハンドルが直進状態になるか、もしくは約7秒後/約150m走行すると自動的に解除される。スイッチによる手動解除も可能だ。
パーキングブレーキはハンドル右側にあり、レバーを右方向へ倒すと後輪がロックされる。エンジン始動時はロックした状態でスタータースイッチを押すようにとオーナーズマニュアルに記載されている。
X-ADVはスマートキーとシーソースイッチ一体ノブ式メインスイッチを採用。厚手のグローブを装着したままでも操作しやすい。
シートは前方の形状を見直して足着き性を向上させつつ、ウレタンを10%増量して快適な乗り心地も追求している。
容量22Lのラゲッジボックスは、2025年モデルで室内灯のレイアウトを見直しつつ光量をアップ。さらにシートダンパーの位置を変更して開閉時の節度感を高めている。ETC2.0車載器やType-C USBポート(5V、3.0A)を標準装備。その他、ワイヤーと組み合わせて使うタイプのヘルメットホルダーも設ける。
給油口はシート前方にあり、タンクリッドはメインスイッチ左下のオープナースイッチで開く仕組みだ。容量は13Lで、使用燃料は無鉛レギュラーガソリンとなっている。
フロントカウル右側には最大積載量0.5kgのフェアリングポケットが設けられている。特にロック機構はなく、メインスイッチがオフでも手動にて開閉できるので、貴重品などを入れておかない方がいいだろう。
灯火類はオールLEDだ。DRL(デイタイムランニングライト)を「自動」に設定すると、周囲が明るいときにはDRLのみが点灯。暗くなるとロービームが点灯し、DRLはポジションランプの明るさまで減光する。
50km/h以上で急ブレーキを検知すると、ウインカーが左右同時に高速点滅するエマージェンシーストップシグナルを標準装備。
ウインドスクリーンは2025年モデルで環境に優しいバイオエンジニアリングプラスチックのDURABIOに。支持部はリンク式となっており、片手操作で高さを5段階に調整可能だ。最も低いポジションと最も高いポジションの高低差は139mmとなっている。
タンデムステップは可倒式で、見た目にもスマートだ。

ホンダ X-ADV(2025年モデル) 主要諸元

車名・型式 ホンダ・8BL-RH21
全長(mm) 2,200
全幅(mm) 940
全高(mm) 1,340(スクリーン最上位置は1,475)
軸距(mm) 1,580
最低地上高(mm) 135
シート高(mm) 790
車両重量(kg) 237
乗車定員(人) 2
燃料消費率(km/L)
国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 42.5(60)〈2名乗車時〉
WMTCモード値(クラス) 27.1(クラス 1)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 2.8
エンジン型式 RH21E
エンジン種類 水冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒
総排気量(cm3) 745
内径×行程(mm) 77.0×80.0
圧縮比 10.7:1
最高出力(kW[PS]/rpm) 43[58]/6,750
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 69[7.0]/4,750
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式 セルフ式
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L) 13
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 電子式6段変速(DCT)
変速比
1速 2.666
2速 1.904
3速 1.454
4速 1.178
5速 0.967
6速 0.815
減速比(1次/2次) 1.921/2.235
キャスター角(度) 27°00′
トレール量(mm) 104
タイヤ
前 120/70R17M/C 58H
後 160/60R15M/C 67H
ブレーキ形式
前 油圧式ダブルディスク
後 油圧式ディスク
懸架方式
前 テレスコピック式(倒立サス)
後 スイングアーム式(プロリンク)
フレーム形式 ダイヤモンド