続く進化は「MOTOROiD:Λ(ラムダ)」へ。

あくまでもこれは実験開発途上にあるコンセプトモデル。最初に断っておくと、人が乗れる様にはデザインされていない。ショーの全体テーマに相応しく、10年後の未来にワクワクしてもらうべくヤマハが提案したスタディモデルと言うわけだ。これまでのモトロイドと異なるのは、ご覧の通り、シンプルでスマートなデザインにある。しかもこれが、展示用の“お飾り”ではなく、実際に自立走行が可能な実動モデルになってるから驚きなのである。

開発を担当した技術開発統括部・グループリーダーの寺田圭佑さんに話を伺った。
要点を解説すると前後輪を含む4軸をモーターで動かし、AI(人工知能)で自動制御する試みだという。もちろん無線操縦のリモートコントローラーで動かすことができる仕組みだが、車体の状態やどう動くべきかを仮想環境(シミュレーション技術を駆使)での学習を積み重ねる(多彩な情報を供給する)ことで、動きや走り(AIによる自動制御)を進化させる。どのようなモデルで実用化に結びつくのかを見極め、新しい製品開発に繋げようと鋭意研究中。
基礎研究は下の写真にある小型の「機能検証モデル」でスタートし、そこから今回のきちんとデザインされたモデルである「Λ(ラムダ)」へと進化した。従来のバイクで言うステアリングヘッド部分で車体が「くの字」に折れ曲がることが最大の特徴。ホイールベースが可変でき、舵も90度近くまで大きく切れる、ジャイロや可変式バランスウエイトは搭載しておらず、4軸の制御だけで、人の助けを借りずに自立走行を実現しているのが凄い。

4モーター4軸構造の機能確認用で作られた小型の「初期機能検証モデル」。

起動後、自立への展開は一瞬の出来事だった。

ステップの様に見える左右のバーは、車体が傾いた時のつっかえ棒となるアウトリガー。写真はバランスが保たれているので地面に接地していない。
起動と同時にホールベースを縮めながら、前後輪の駆動力と舵の統合制御で直立を保つ。
直立安定を保ちながら標準的なスタイルになった所。
自立停止時のシーンは、トライアルのスタンディングスティルを決めている感じ。操舵の動きは一定の周期でカクカクと振れていた。
現状では駆け足程度の速度で走れるそう。ステージ上を歩く様な速度で綺麗な旋回走行を披露した。

未来のバイクに展開するなら、車庫から自動で玄関先まで移動してくれたり、快適なオートクルーズも実現可能になるだろう。もちろん転倒しないような充実した安全装置の満載も期待できそう。

進化を極めるモトロイド、その原点はツイスター。

車体の引き起こしが軽く、低速コーナリングでもハンドル(舵)の切れ込み具合が緩和された。
首の部分を捻ることで、後方に位置すリヤホイールに微妙な操舵効果が発生する。

これは2012年に一部報道関係者を対象に試乗機会が与えられた試作車のツイスター。このネーミングは、「Tow Wheels Intelligent STEeRing」から由来した「TWISTER」である。2輪操舵をもたらす独特なメカニズムを搭載。ステアリングヘッド直後に少し首を振る仕組みを介すことで、重量級バイクの操舵や車体引き起こし時の扱いを軽快なものにできる提案だった。
この仕組自体は今回のΛ(ラムダ)に反映されているわけではないが、モトロイド開発開始へ最初のステップになったと言っても過言ではないだろう。

写真で細部をクローズアップ

これ自体に人が跨って乗ることはできない。
車軸とはオフセットされているが、インホイール電動モーターを採用。
フロントもリアと同様な方式の電動モーターで駆動。
詳細不明ながら、舵は90度近くまで切れる。あるいは360度回転可能かも。
電動ステア(舵)の直ぐ上の部分に車体が折れる横軸がセットされている。
シンプルな実験車両だが、スリムな車体デザインが印象的。
動力源はリチウムイオン電池を搭載。4軸全ての動きをAIが統合自動制御する。
シートやステップ、そしてハンドルを組み込めば直ぐに乗れそう。

車体の下面には二つのLiDARが地面に向けられている。将来的な構想ながら、地面状態を把握し、ライダーに知らせたり、例えばモトクロス走行でスキルアップが図れるよう、ライテクの指摘や教授が可能になるかもしれない。まさにワクワクと夢ふくらむ革新技術が凝縮されている。その可能性の大きさは計り知れないのである。