Porsche 718 Boxster S Camera Car

マットブラックで仕上げられた新型カメラカー

ポルシェでは、ポルシェ 718 ボクスター Sをベースに製作された、専用の「カメラカー」を使用している。
ポルシェでは、ポルシェ 718 ボクスター Sをベースに製作された、専用の「カメラカー」を使用している。

サーキットにおける撮影において、カメラカーは車両自体の性能も含め、精密な動きが求められる。それまで使用されていた「バギー(旧型ボクスターベース)」の性能が、現行モデルに追いつけなくなったため、新たなカメラカーの導入が検討されることになった。そこで浮上したのが「718 ボクスター S」ベースの後継機プロジェクトだった。

車両の改造は、ポルシェ・ライプツィヒ社において研修生を指導するカーステン・ポーレのもと、9名の研修生チームに任されることになった。

これを受けて、研修生たちは日常的な使用に耐える新たなカメラカーのコンセプトを練り上げる。718 ボクスター Sのソフトトップを取り外し、頑丈なロールケージを装着。追加パーツを含めた車両全体をマットブラックに仕上げ、撮影時の反射は最小限に抑えられた。

前後&側面には、カメラを自在に設置できるスチール製チューブマウントを追加。ロールケージ自体も高位置からの撮影に対応するマウントとして機能する。

重視された安全性と機能性の両立

ポルシェでは、ポルシェ 718 ボクスター Sをベースに製作された、専用の「カメラカー」を使用している。
前後ラゲッジやシート後方に撮影用のプラットフォームを新設。不安定な環境下において、撮影者の安全を守ることも重視された。

カメラマンの安全確保は、今回の改造における最重要課題となった。前後のラゲッジコンパートメントにはクッション材とハーネスシステムを装備。さらに、前席とリヤトランクの間には立ち乗り撮影が可能なプラットフォームを新設し、保護具(PPE)も使用できるようにした。

技術面でもいくつかの改良が加えられた。内部配線により、カメラとノートPCを車両に接続できるようになり、PCはパッセンジャーシート側へと固定可能。専用のインバーターも搭載されており、撮影機材の電源供給と充電もできるようになった。

完成以来、718 ボクスター S カメラカーは、ライプツィヒのサーキットにおける撮影で定期的に使用。さらに雑誌『モータープレス・シュトゥットガルト(Motor Presse Stuttgart)』による外部撮影でもたびたび登場しており、ヴァルター・ロールが参加したフォトシューティングにも使用された。

直近では、イタリア・マッジョレ湖近くで開催された「トゥット・ベーネ・ヒルクライム(Tutto Bene Hillclimb)」でもカメラカーとして活躍。このユニークな研修プロジェクトにより完成したカメラカーの多用途性と実用性を改めてアピールしている。