初代の精神を現代に|“Grigio 25th Anniversary”の特別装備

EICMA2025で披露された「Piaggio Beverly 25th Anniversary」は、25周年という節目を祝う特別仕様車だ。その最大の特徴は、初代モデルの象徴的な要素を現代的に再解釈した専用デザインにある。外装色は「Grigio 25th Anniversary」と呼ばれるマットメタリック調のダークグレーで統一され、ボディ両サイドからフロントフェンダーまで伸びるライトグレーのストライプが、2000年代初頭のオリジナルBeverlyに刻まれたサイドバンドを想起させる。さらにスモーク仕上げのウインドスクリーンを装着し、クラシックとモダンの融合を体現する仕上がりとなった。
細部の仕上げにもこだわりが込められ、パッセンジャーグリップやヘッドライト周囲のベゼルには光沢ブラックを採用。中央グリルや「Beverly」ロゴにはゴールドのアクセントを配し、上質感と華やかさを両立させている。ホイールはブラック塗装に加えてリム部にゴールドとグレーの差し色を施し、シートもブラックとグレーを基調としたパンチングレザー調の2トーン。ダブルステッチはゴールドで統一され、特別仕様ならではの存在感を漂わせる。
25年の歴史が築いた“都会派クロスオーバー”の系譜

2001年、Piaggioが送り出した「Beverly」は、スクーターの概念を一変させた存在として登場した。中排気量クラスに位置しながら、モーターサイクル由来の剛性あるフレーム構造と足まわりを備え、高い安定性と快適性、そして俊敏な走りを両立させた。都市交通の中での機動力に加え、郊外ツーリングでも軽快に走れる「クロスオーバースクーター」という新しいカテゴリーを確立したのが、このBeverlyである。誕生から四半世紀を経た現在も、その名は都市ライダーの憧れとして生き続け、世界50か国以上で累計50万台以上を販売するなど、Piaggioブランドの象徴として揺るぎない地位を築いてきた。
310hpeと400hpe、二つの心臓を持つアニバーサリーモデル

この記念モデルは、Beverlyシリーズの主力である310 hpe(310cc)および400 hpeエンジン(399cc)を搭載する2仕様で展開される。Piaggio独自の高効率パワーユニット“HPE(High Performance Engine)”は、スムーズで力強い加速と低振動を特徴とし、都市部のストップ&ゴーから高速巡航までを難なくこなす。400 hpeモデルでは、より高いトルクと伸びやかなパワーデリバリーを実現し、よりスポーティな乗り味を楽しめる設定となっている。これらのユニットは、Beverlyが長年培ってきた「軽快さと快適さの両立」を支える核心的存在であり、25周年仕様でもその完成度は揺るがない。
また、Piaggioは同時に2026年モデルラインアップを刷新し、スポーティな「Beverly S」には新色「Blu Lapis(ブルー・ラピス)」が加わることも発表した。深みのある青の新色は、既存の「Verde Jungle」「Grigio Mercurio」「Nero Meteora」と並び、上質なスポーツテイストを演出する。
伝統を未来へ|イタリアンデザインの精神を受け継ぐ

Beverly 25th Anniversaryが示すのは、単なる“記念モデル”ではない。Piaggioが提唱してきた「機能と美の融合」というイタリアンデザイン哲学そのものを、四半世紀の歩みとともに再構築した姿である。スクーターでありながらオートバイ的な走行安定性を誇る構造、高品質な素材選び、そして細部の造形にまで宿る美意識――それらがこのモデルに凝縮されている。
フロントの盾型エンブレムに刻まれたトリコローレの輝きは、イタリアブランドとしての誇りを象徴し、25周年を迎えた今も変わらぬ“Beverlyらしさ”を表現している。都市を自在に駆け抜ける俊敏さと、長距離でも疲れを知らない快適性。その両立こそが、Beverlyが25年間愛され続けてきた理由であり、このアニバーサリー仕様が新たな時代のスタンダードとなる所以である。
Piaggio Beverly 25th Anniversaryは、伝統と革新の調和によって生まれたアニバーサリーモデルである。特別塗装「Grigio 25th Anniversary」を纏い、初代モデルへのオマージュと最新世代のスポーティネスを融合させた姿は、Beverlyという名を冠するにふさわしい完成度を誇る。310 hpe/400 hpeという二つの選択肢により、ユーザーのスタイルに応じた自由な都市モビリティを提供し、25年の歴史を次のステージへとつなぐ存在となった。
それは単なる記念の一台ではなく、Piaggioが描く未来のモビリティの方向性を象徴する“銀の節目”なのである。
画像ギャラリー







