MotoGP第22戦バレンシアGPが11月14日から16日にかけてスペインのリカルド・トルモ・サーキットで行われ、Moto3クラスに参戦する古里太陽(ホンダ)が3位表彰台を獲得した。

優勝を目指した「ちょっと残念」な3位

バレンシアのリカルド・トルモ・サーキットでのMotoGP最終戦は、2年ぶりの開催となった。昨年も最終戦としてバレンシアが予定されていたが、洪水被害によって開催地がバルセロナ・カタルーニャ・サーキットに変更されたのである。

2年ぶりのバレンシアを、参戦する古里太陽(ホンダ)はMoto3クラスで最後のレースとして迎えた。2022年からMoto3クラスに参戦してきた古里は、2026年にはMoto2クラスにステップアップするからだ。

古里がこれまで戦ってきたMoto3クラスは、4ストローク単気筒250ccのマシンで争われる小排気量のクラス。来季から参戦するのは中排気量のクラスで、トライアンフのストリートトリプルRSをベースとする3気筒765ccエンジンをシャシーコンストラクターのシャシーに搭載したマシンとなる。

古里はマレーシアGPでの優勝、ポルトガルGPでの3位の勢いのまま最終戦を迎えた。

予選2(Q2)では、1分37秒459を記録して9番手。最後のアタックで記録したタイムは1分37秒349だったが、トラックリミットをオーバー(※フロントまたはリアタイヤがコース外に出ること)したため、ラップタイムは取り消しとなった。

「初日(金曜日)から悪くなかったんです。今日(土曜日のQ2)も(9番手タイムだった1分37秒349は)単独で出したタイムだったので、よかったと思います。もう少しタイムを詰められるかな、とは思っていましたが、最後はトラックリミットでラップタイムが取り消しになってしまいましたけど。仕方ないですね」

Moto3のような小排気量マシンで争われるクラスでは、特に、前のライダーの後ろにぴたりとつけて、自分のタイムを上げるスリップストリームという効果を使うライダーが多い。ただ、古里の9番手のタイムを誰かの後ろにつくのではなく、一人で走って記録したものだった。これが手応えとなった。

2年ぶりに走るバレンシアに、古里は「久々に走ってるので、あまり最初覚えてなかったですけど。でも、明日は大丈夫だと思います」と語っていた。

日曜日の決勝レースで、古里は優勝争いを展開する。レース序盤に表彰台圏内のポジションに浮上した。残り2周の最終コーナーでマキシモ・キレス(KTM)にかわされて3番手に後退するも、メインストレート直後の1コーナーでキレスを抜き返し、2番手にポジションを上げる。そしてトップを走るエイドリアン・フェルナンデス(ホンダ)をパスするタイミングを窺った。

しかし、惜しくもトップを奪うことはできず、僅差の2番手ゴールとなった。ただ、最終ラップでトラックリミットをオーバーしたため、1ポジションダウンのペナルティを受け、最終結果は3位となった。

「本当は残り3周、トップで入りたかったんですけど、できなかった。勝ちにいったんですけどね。最後はフェルナンデスとの勝負になると思っていたんですが、マキシモとバトルをしていて厳しかった。最後は余裕もなかったし、(フェルナンデスを)抜ける感じもなかったので、仕方ないですね」

トラックリミットのオーバーについては「(フェルナンデスを)抜くためにはアクセルを開けないと、と思って、開けたら滑り出してしまったんです。それでワイドになって、トラックリミットを超えました。(フェルナンデスを)抜いても2位だし、抜けなかったら3位、と思っていました」と、覚悟の勝負だったことを明かしていた。

最終戦バレンシアGPの3位により、古里はマレーシアGPから3戦連続の表彰台獲得を果たした。といっても、優勝を目指して勝負を懸けただけに本人の胸中は少し複雑だ。

「うれしいですけど、(Moto3クラスで)最後のレースだったから勝ちたかったな、という気持ちはあります。いい内容ではありましたけど、優勝できなかったのはちょっと残念です」

とはいえ、最後のMoto3クラスでのレースを、表彰台という素晴らしい結果で(本人には不満の結果だとしても)終えたことは事実だ。

4年間のMoto3クラスでの戦いを終え、古里は2026年、Moto2クラスに戦いの場を移す。

最終戦バレンシアGP決勝レース、優勝争いを展開した古里(#72)©MotoGP.com