Porsche 962 C with Prince Carl Philip

カレラカップ最終戦でデモランを披露

マンタープ・パークで、憧れのグループC「ポルシェ 962C」をドライブしたスウェーデン王室のカール・フィリップ王子。
カール・フィリップ王子は、カレラカップ・スカンジナビア最終戦のマンタープ・パークに登場。憧れのポルシェ 962 Cでデモランを披露した。

スウェーデン王室のカール・フィリップ王子殿下が少年だった頃、ハンス=ヨアヒム・シュトゥックはADACスーパーカップ選手権をグループCレーシングカー「ポルシェ 962 C」で戦っていた。現在46歳となったフィリップ王子は、熟練したレーシングドライバーでもあり、シュトゥックが駆った伝説的なチャンピオンマシンをテストドライブし、長年の夢を叶えることになった。

962 Cが搭載する3.0リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンは最高出力700PSを発揮し、車両重量はわずか850kg。そのスペックは現代でも十分に驚異的だが、シュトゥックがADACスーパーカップを連覇した約40年前は、まさに圧倒的とも言えるパフォーマンスを誇っていた。

今回、フィリップ王子がステアリングを握った962 Cは、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)の「ポルシェ・ドッペルクップルング(PDK)」のテストベッドでもあり、その輝かしいキャリアの中でPDKとマニュアルトランスミッション(MT)でレースに参戦した貴重な個体。2021年、ヴァイザッハ開発センターにおいて、レッドとイエローのシェル/ダンロップ・カラーの1987年仕様にフルレストアされた。

この962 Cが、2025年シーズンのポルシェ・カレラカップ・スカンジナビア最終戦のマンタープ・パークに登場。エキシビション走行でドライバーを担当したのが、フィリップ王子だった。

現在もレーシングドライバーとして活躍

マンタープ・パークで、憧れのグループC「ポルシェ 962C」をドライブしたスウェーデン王室のカール・フィリップ王子。
フィリップ王子は、現在もレーシングドライバーとしてポルシェ・カレラカップ・スカンジナビアに参戦。これまで様々なカテゴリーを経験してきた。

「まさに子どもの頃からの夢が叶いました。このような機会をいただけて、本当に感謝しています」と、962 Cがポルシェ・モータースポーツのトランスポーターから降ろされるのを見ながら、フィリップ王子は感慨深げに語った。

フィリップ王子は、この任務にふさわしい経歴を持つ人物だと言えるだろう。2008年からポルシェ・カレラカップに参戦を続けており、今シーズン、記念すべき100戦目を記録した。また、スウェーデン・ツーリングカー選手権やスウェーデンGTシリーズなど、様々カテゴリーでも豊富な経験を持つ。

フィリップ王子がクルマに強い関心を抱くのは当然かもしれない。スウェーデン王家は代々クルマ好きとして知られており、熱心なポルシェ・ファンでもある。1973年、殿下の父、カール16世グスタフ国王は、当時恋人だったシルビア王妃とともに911 タルガでドライブを楽しんでいた。

カール16世グスタフ国王は、現在も様々な車両をコレクションしており、その中には、この911 タルガも含まれている。そして、国王は毎年、フィリップ王子が参戦するカレラカップ・スカンジナビアの最終戦を訪れることことは、現在ではスウェーデン王室の年中行事となった。

大観衆の前でアグレッシブな走り披露

マンタープ・パークで、憧れのグループC「ポルシェ 962C」をドライブしたスウェーデン王室のカール・フィリップ王子。
豊富なレース経験を持つフィリップ王子だが、グループCのパワーに驚かされたという。今回、決勝前に3周のデモランを披露した。

普段レースでドライブしている911 GT3 カップから、962 Cに乗り換えたフィリップ王子は、コクピットの狭さに驚いたようだ。シュトゥックは長身だったが、この時代のグループCレーシングカーのキャビンはかなりタイトだったのだ。それでもすぐに962 Cの扱いに慣れ、周回ごとにタイムを縮めていく。スリックタイヤが適正温度に近づくにつれて、ペースも上がっていった。

「簡単に扱えるクルマではありませんが、タイヤが温まれば驚くほどよく走りますね。ターボの過給が効いたときのパワーは……覚悟しておかないと驚かされます(笑)」と、初ラップを終えたフィリップ王子は興奮を隠さない。

ヘリテージ オペレーション&コミュニケーション部門責任者のアレクサンダー・クラインは、殿下のドライビングテクニックに感心したという。

「数周走っただけで、この強烈なグループCレーシングカーを、あれほど速く走らせるのは簡単ではありません。殿下が経験豊富で自信に満ちたドライバーであることがよく分かりました」

今回のデモンストレーションランでは、テスト走行でのスリックタイヤから、本番ではより早く適正温度に達するトレッドタイヤが装着された。フィリップ王子は集まった観客から大声援を受けて、走り出しから思い切ったドライブを披露する。

「走りはじめから、しっかりグリップ感がありました。観客の前での3周だけのエキシビションなら、少し攻めたほうが彼らも嬉しいでしょうし、私自身も楽しめますからね!」

グループCの40周年でレジェンド達が明らかにしたポルシェ956、962の驚くべき開発秘話

2022年のヒストリックカー界最大のトピックといえば、グループCの40周年に尽きる。4月のグッドウッド・メンバーズ・ミーティングを皮切りに、ル・マン・クラシックなど様々なイベントで特集が組まれる中、その生みの親とも言えるポルシェがミュージアムの総力を結集したワークショップをドイツ・ライプツィヒのエクスペリエンス・センターで行った。