Encor Series 1

1975年のデビューから50周年を記念

ロータス エスプリ S1を現代にアップデートした「アンコール シリーズ1」のエクステリア。
アンコール・デザインは、1975年のパリ・モーターショーでデビューした「ロータス エスプリ」の50周年を記念し、「シリーズ1」を開発した。

1975年のパリ・モーターショーにおいてワールドプレミアされ、世界を魅了したミッドシップスポーツ「ロータス エスプリ」。その50年後、英国チェルムスフォードのアンコール・デザインが、同社初のプロジェクト「アンコール シリーズ1」を発表した。

ロータス、アストンマーティン、ケーニグセグ、スカイシップス・オートモーティブなど、様々な自動車メーカーでの経験を持つデザイン/エンジニアリングチームは、アイコニックな英国製ミッドシップ「エスプリ」を現代に甦らせることを考えた。

シリーズ1の生産はわずか50台、価格は43万ポンドから(ドナーカーとして別途「エスプリ V8」が必要)。オーダーは英国チェルムスフォードのアンコール・デザイン本社だけでなく、海外向けにリモート商談にも対応するという。デリバリーは2026年第2四半期から2027年にかけて開始される予定だ。

元ロータスのエミーラ主任デザイナーで、アンコール・デザインのデザイン責任者を務めるダニエル・デュラントは、シリーズ1について、次ように説明を加えた。

「エスプリ S1は先進的かつ純粋、妥協を排したスポーツカーでした。この美しいフォルムに手を加えることは、大きな責任を伴います。私たちはオリジナルの意図を尊重しつつ、そのシルエットが約束していた走り、感触、機能を実現するために、一部に変更を加えました」

カーボンファイバー製一体型ボディ

ロータス エスプリ S1を現代にアップデートした「アンコール シリーズ1」のエクステリア。
ボディはオリジナルのFRP製から一体型カーボンシェルへと置き換えられた。

ダニエル・デュラント率いるアンコールのデザインチームは、オリジナルのエスプリをデジタルスキャンし、最新ツールで形状を磨き上げた。狙いは“完成度”、ハイライトはよりタイト、ラインはよりピュアに徹底されている。また、パーツの精度と素材の誠実さも徹底的に追求したと謳う。

オリジナルのエスプリのFRP(繊維強化プラスチック)製ボディにあった2ピース成形線は取り除かれ、オートクレーブ処理の一体型カーボンシェルへと置き換えられた。

この結果、ひと目でエスプリと分かるフォルムを維持しながら、緊張感を持ったホイールアーチ、シャープなショルダーライン、精緻なフロントセクションなど、大幅な品質アップを実現したという。最新スペックのタイヤとクーリング性能を引き上げるべく、ボディはわずかにワイド化された。

エスプリの特徴でもあるリトラクタブルヘッドライトは、超小型LEDプロジェクターをライトユニットへと組み込み、ウェッジシェイプを保ちながら、空力と視認性を向上させている。

400PS超を発揮する4.0リッターV8ターボ

ロータス エスプリ S1を現代にアップデートした「アンコール シリーズ1」の3.5リッターV型8気筒ツインターボ。
リヤミッドに搭載される3.5リッターV型8気筒ツインターボは、大幅にアップデートされ、最高出力405PS発揮する。

フルカーボン製ボディシェルの下には、アイデンティティとドナーカーの登録に関する継続性のため、エスプリのV8エンジンがあえて残された。シャシーはストリップダウン、ブラスト洗浄、再仕上げを行ったのち、完全にリビルドされたパワートレインと組み合わされる。

リヤミッドに搭載される3.5リッターV型8気筒ツインターボは、鍛造ピストン、強化インジェクター、リマニュファクチャードターボチャージャー、電子スロットルボディ、新燃料/冷却システム、新開発のステンレス製エキゾーストシステムを導入。ロータスの魂を維持しつつ、現代的なパワーユニットにアップデートされたという。

トランスミッションは、クワイフ(Quaife)社と協力し、オリジナルの5速MTに強化型シャフト、改良ギヤ比、ヘリカルLSD、専用ツインプレートクラッチを導入。これにより高いシフト精度と耐久性を実現した。サスペンションは「Sport 350」仕様、ブレーキはAPレーシング製、ステアリングは油圧アシストが残され、エスプリ本来のフィーリングが守られると主張している。

目標スペックは最高出力405PS、最大トルク475Nm、車両重量は1200kg以下。0-100km/hは約4.0秒、最高速度は280km/h前後を想定している。

「軽さとフィーリングがすべての判断基準です。シリーズ1は、アナログスーパースポーツに期待される純粋さ、そしてオリジナルが夢見た能力の深みを持って走ります。DNAへの完全な敬意をもって成し遂げた変革です」と、元MIRAのエンジニアで技術責任者のマイク・ディキソンは指摘した。

過去と現在が交錯するコクピット

ロータス エスプリ S1を現代にアップデートした「アンコール シリーズ1」のコクピット。
コクピットは、オリジナルのエスプリが持つエッセンスを残しながら、大型ディスプレイを導入するなど、現代的にアップデートされた。

コクピットは、オリジナルのエスプリの記憶が色濃く残されることになった。鋭く傾斜したダッシュボード、タータンチェックのアクセント、ドライバー中心の深く座り込むシート。これらすべてが、アンコールによってゼロから再構築された。

最も印象的なのは、浮遊するインストゥルメントクラスターだろう。アルミニウム削り出しパーツが最新のデジタルディスプレイを包み込む。シートは骨格から再生され、発泡材を刷新し、生地を張り替えたことで、サポート性と美しい仕上げを実現した。共同創業者のウィリアム・アイヴスは、シリーズ1の完成度に自信をのぞかせる。

「ロータス エスプリは、私たちの物語の一部にありました。オーナーの皆さんと共に、このクルマと暮らし続けてきたのです。今回、それらの経験すべてを、ひとつの考え抜いたパッケージにまとめるチャンスを得ました。このプロジェクトは常にオリジナルへのリスペクトがコアにあります」

クルマに興味があればRUFの名を一度は聞いたことがあるだろう。その外観から高性能なポルシェ、と思ってしまいがちだが、RUFは独立した自動車メーカーでありその中身はほとんどがオリジナルだ。その歴史と最新のプロダクトに迫ろう。

チューナーではなく実は自動車メーカー!「RUFのクルマは何がすごい?」を解説

クルマに興味があればRUFの名を一度は聞いたことがあるだろう。その外観から高性能なポルシェ、と思ってしまいがちだが、RUFは独立した自動車メーカーでありその中身はほとんどがオリジナルだ。その歴史と最新のプロダクトに迫ろう。(GENROQ2025年11月号より転載・再構成)