BYD SEALION 6

競合と伍する驚異の性能

BYD シーライオン6
BYD シーライオン6

中国の自動車メーカーBYDの日本市場第5弾モデルとなるミドルサイズSUV「シーライオン6」に試乗した。日本ではBEVメーカーとしての印象が強いBYDだが、シーライオン6はエンジン、モーター、バッテリーを組み合わせたPHEV(プラグインハイブリッド)である。

ボディサイズは当ウェブサイトが取り上げる車種で言うと「メルセデス・ベンツ GLC」「BMW X3」「アウディ Q5」が競合になるだろう。そしてPHEVという括りをつけるなら、「トヨタ RAV4 PHV」や「三菱 アウトランダーPHEV」がライバルと目される。実際、価格はFWDが398万2000円、AWDが448万8000円と日本車メーカーのライバル達よりも100万円以上安く、物価高の続く昨今では大いに注目されるだろう。

ただし搭載されるエンジンはFWDモデルが1.5リッター直4自然吸気、AWDモデルが1.5リッター直4ターボとやや控えめだ。駆動方式でエンジン機種が異なるのは、FWDは航続距離を、AWDは走行性能を重視しているためだという。今回試乗したFWD車のWLTCモード燃費は22・4km/Lで航続距離は1200kmを誇り、競合と伍する驚異の性能を示す。

市街地は80%EV、高速は70%エンジン

PHEVとしてEV走行を実現するのはBYD自慢のブレードバッテリーだ。フロアに敷き詰められたバッテリーの電力量は18.3kWhでEV走行は約100kmを謳うから、遠出をしなければBEVとしてのみ活用することも可能だ。

ハイブリッドシステムは本邦で一般的なシリーズ・パラレル式だが、トヨタのTHSⅡのような動力分配機構は備わらず、エンジンとモーターが基本的に個別に、場合によって協調して駆動する。市街地などの低速域ではモーター駆動でエンジンは発電のみを行い、高速道路など高速域では加速時にモーターとエンジンが協調して駆動する。そして高速巡航時はエンジンのみが駆動を担う。資料によれば、市街地走行時は約80%がEV走行で、高速走行では約70%がエンジン走行となったという。

なお走行時はEVモード、HEV(ハイブリッド)モード、そしてEV走行可能距離を最大化するEVマックスが選択可能で、さらにそれぞれでスポーツ、ノーマル、エコの3モードを選択できる。

驚くべきその静粛性

センターに備わる巨大な15.6インチディスプレイ。エアコン操作も集約されるので、ボイスコントロールの方がストレスが少ないだろう。
センターに備わる巨大な15.6インチディスプレイ。エアコン操作も集約されるので、ボイスコントロールの方がストレスが少ないだろう。

車名からもわかるようにBYDは海洋シリーズと称する海の生物にちなんだネーミングをすることが多い。海洋美学が取り入れらたというデザインは、例えばエクステリアでは波やしずくを連想させるヘッドランプが、インテリアでも波の動きを感じさせるダッシュボードが表現している。巨大な15.6インチセンターディスプレイだ。ここにエアコン操作なども集約されるため、手で操作するよりもボイスコントロールの方がストレスが少ないだろう。

走り始めてまず驚いたのはその静粛性だ。EVモードでは当然のこと、HEVモードにして坂道をフル加速(0-100km/h=8.5秒)しても1.5リッター直4は遠くで唸りをあげるだけで、遮音性の高さは目を見張るものがあった。ハイブリッド車に有利なアトキンソンサイクルを採用していることもあって、エンジンは定常的に回るだけで回転数はそれほど上がらないとはいえ、この静粛性は車両の高級感を演出していたように感じた。

“スーパーハイブリッド”を謳うDM-iテクノロジーによるエンジンとモーターの連携は見事で、今エンジンで走っているのか、エンジンで発電したモーターで走っているのかはっきりしない。なお、加速時の制御の滑らかさは驚くほどだが、フル加速をした後のエンジンの回転落ちはかなり遅く、耳で聞こえる範囲では吹け残りが多い印象だ。ロックトゥロック3回転というスローなギア比もあって、スポーティにガンガン走るようなドライビングスタイルは向いていない。

AWDは3月導入予定

センターに備わる巨大な15.6インチディスプレイ。エアコン操作も集約されるので、ボイスコントロールの方がストレスが少ないだろう。
センターに備わる巨大な15.6インチディスプレイ。エアコン操作も集約されるので、ボイスコントロールの方がストレスが少ないだろう。

車両の走行設定はかなり細かく、ADASはもちろんのことアンビエントライトやカーテシライトまで多彩だ。ステアリングやブレーキの重さも2段階から選択できる。回生ブレーキも回生量を2段階調整できるがワンペダルほどの強さはなかった。なおバイワイヤーブレーキはペダルストロークで効きを調整する印象だった。

社名が「Beyond Your Dreams」に由来することはよく知られているが、高いクオリティとほどほどの性能に圧倒的な値付けは、その期待を大きく超えるものであった。今回の試乗は2026年1月末からデリバリーを予定しているFWDのみだったが、AWDは3月に導入予定だという。

PHOTO/市健治(Kenji ICHI)

SPECIFICAIONS

BYDシーライオン6

ボディサイズ:全長4775 全幅1890 全高1670mm
ホイールベース:2765mm
車両重量:1940kg
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量:1498cc
最高出力:72kW(98PS)/6000rpm
最大トルク:122Nm(12.4kgm)/4000〜4500rpm
モーター:最高出力:145kW(197PS)
最大トルク:300Nm(30.6kgm)
トランスミッション:1速AT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:Fマクファーソンストラット Rマルチリンク
ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク Rディスク
タイヤサイズ:F&R235/50R19
環境性能 EV走行可能距離:100km(BYD調べ)
燃料消費率(WLTC):22.4km/L
車両本体価格:398万2000円

BYDから日本市場で初のプラグインハイブリッドSUV「シーライオン6」が発売開始

BYDから日本で5番目となるモデル、「シーライオン6」が発売された。ミドルクラスSUVのボディを持つこのクルマは、日本市場では初導入のPHVだ。モーターだけで約100kmを走行し、エンジンによる充電や走行も可能だという。その中身はバッテリーにもエンジンにも、注目のポイントが満載だ。