連載

ベントレー100年車史

CONTINENTAL GT

ベントレーの新しいスタンダードデザイン

1998年にフォルクスワーゲン・グループ傘下として再出発を果たしたベントレーは、既存のアルナージの生産を継続する一方で、3年でル・マン24時間を制覇する計画を打ち出し、2001年から「ベントレー EXPスピード8」で参戦を進めるなど、スポーツイメージの向上に取り組んでいた。

そこで彼らが新生ベントレーの真打として開発を進めていたのが、2002年のパリ・ショーで発表された2ドアクーペ「コンチネンタルGT」である。ベントレー史上初めて既存モデルからの流用パーツなく、すべて一から開発されたモデルとなったコンチネンタルGTは、デザインディレクターのディルク・ファン・ブレイケルと、インテリアデザイン責任者のラウル・パイレス率いるクルーのデザイン・スタジオによるものだ。

ツインラウンドヘッドランプがベントレー・メッシュグリルを挟み込みフロントフェイス、フロントホイールのパワーライン、そしてリヤホイールのホーンチ、そしてルーフのシェイプというキーラインからなるマッシブなボディは、戦後の傑作であるRタイプ・コンチネンタルをモチーフとしながらも新しいベントレーのスタンダードデザインを作り上げた。

過剰すぎる装備に賛否の声も

シャシーはスチール製モノコックにステンレス製のフロントサブフレームを組み合わせたもので、ノーズには2001年にフォルクスワーゲンが開発した6.0リッター72度W型12気筒DOHC48バルブツインターボをベースとし、最高出力560PS、最大トルク650Nmを発生するWR12型ユニットを搭載。ギヤボックスはZF製の6速ATで、駆動方式がトルセン式センターデフを介したフルタイム4WDとなっていたのが最大の特徴であった。

そのほか電子制御ダンパーを備えたエアサスペンション、前後ベンチレーテッドディスクブレーキ、エレクトリック・スタビリティ・コントロール(ESP)、ブレーキアシストシステム、雨粒感知式ワイパーといった、数々の最新装備を盛り込んでいた。

当初はその過剰すぎる装備に賛否の声も上がったが、最高速度318km/h、0-100km/h加速4.8秒というパフォーマンスは、当時の2ドアGTとして文句なくトップクラスのもの。またフルタイム4WDと電子デバイスの組み合わせは、あらゆる環境下でも抜群の走行性能を示し、ライバルたちに大きな影響を与えるベンチマーク的存在となった。

ベントレーの主力モデルへと成長

圧倒的なパフォーマンスと存在感で、英国はもとよりヨーロッパ、アメリカ、中東、そして日本においても発表直後から好調なセールスを記録。コンチネンタルGTの成功でベントレーの年間生産台数は10倍に跳ね上がり、新生ベントレー飛躍の礎を築いたのである。

その後、2005年には4ドアの「コンチネンタル・フライングスパー」、2006年には25秒で開閉可能な耐候性の高い電動ソフトトップをもつオープンモデルの「コンチネンタルGTC」を追加することで、コンチネンタル・シリーズはベントレーの主力モデルへと成長を遂げた。

さらに2007年には、新設計のピストン、コンロッドの採用、エンジンマネジメント・システムの変更などのチューニングにより、最高出力610PS、最大トルク750Nmを発生する6.0リッターW12ツインターボを積み、最高速度325km/h、0-100km/h加速3.9秒を誇る、ハイパフォーマンスバージョンの「コンチネンタルGTスピード」「コンチネンタルGTCスピード」が登場する。

3万7700台以上が生産される大ヒット作に

しかしベントレー開発陣は、それに満足せずに水面下で開発を継続。新設計のアルミホイール、炭素繊維強化シリコンカーバイド(CSiC)セラミックディスクブレーキ、カーボンファイバー製シートフレームを採用した2シーターレイアウトにより約110kgの軽量化を実現。さらに630PSへチューンされたW12ユニット、新型クイックシフト6速AT、前後トルク配分をフロント40:リヤ60とした4WDシステムを採用したことで、最高速度329km/h、0-100km/h加速3.9秒を謳う、最強バージョンの「コンチネンタル・スーパースポーツ」を2009年に発表した。

このコンチネンタル・スーパースポーツでもうひとつ特徴的なことは、単なるパフォーマンスの追求だけでなく、ベントレー史上で初めてガソリンとエタノールを混合したフレックス燃料にも対応することで、排出ガス削減に向けての試みも行われていたことだ。

このように様々な進化を遂げながら、コンチネンタルGTは2011年までにクーペとコンバーチブルあわせて3万7700台以上が生産される大ヒット作となった。それと共にベントレーは、世界有数のラグジュアリーカーメーカーとしての名声と基盤を確立したのである。

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