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MASERATI GHIBRI

マセラティ ギブリとは

「マセラティ ギブリ」という名称は、1960年代に登場した2ドアのグランドツアラーに由来する。初代ギブリはジョルジェット・ジウジアローが手がけた流麗なクーペとして知られ、マセラティのスポーティなGT像を決定づけた存在だった。1990年代にもV6ツインターボを搭載するクーペとしてその名が復活した。いずれも情熱的なモデルに与えられてきた名称である。

今回紹介する「マセラティ ギブリ」は、ブランドの販売拡大と若返りを担うモデルとして開発され、2013年に登場したミドルサイズのラグジュアリースポーツセダンだ。従来の4ドアセダン「クアトロポルテ」よりコンパクトなボディを採用しながら、マセラティらしい走りと高級感には妥協がない。

現代のギブリは4ドアセダンという形をとりながらも、その名に込められた「風を切るような速さと官能性」(※)という思想を受け継ぐ存在だ。マセラティがこの名を主力セダンに与えたのは、単なる復刻ではなく、その思想を新しい時代の中核モデルに託すためだったといえる。

※ギブリ:地中海地方に吹き込む熱風を “Ghibli” と呼ぶ。ちなみに、アニメ制作会社の「ジブリ」も同じ由来。

マセラティ ギブリの外観・内装

マセラティ ギブリの外観と内装は、イタリア車ならではの華やかさとプレミアムセダンとしての品格を高次元で両立している。視覚的にきらびやかなだけでなく、ドライバーの感性に訴えかける造形と素材使いが随所に見られる。

外観:流麗さと力強さの融合

フロントに配されたトライデント(三つ又の矛)エンブレムとグリル、シャープなヘッドライトは、ひと目でマセラティと分かる強いアイデンティティを主張する。ロングノーズと低く構えたルーフライン、抑揚のあるキャラクターラインにより、4ドアセダンでありながらクーペのような流麗なシルエットを実現した。同じEセグメントセダンのメルセデス・ベンツ EクラスやBMW 5シリーズなどのドイツ勢が合理性を特徴とするのに対し、ギブリは感性に訴えるデザインで独自の個性を放っている。

内装:素材と造形に宿る高級感

インテリアには本革や天然のウッド、カーボンファイバーなど厳選された素材が用いられ、マセラティらしいクラフトマンシップを強く感じさせる空間が広がる。ダッシュボードやドアトリムに施されるステッチは丁寧に仕上げられており、量産モデルでありながら手仕事のような温もりを感じさせる。一方で、後期モデルではインフォテインメントシステムが刷新され、操作性や視認性が向上。伝統的な高級感とデジタル技術を自然に融合させている。

マセラティ ギブリのサイズ

マセラティ ギブリのサイズは、ラグジュアリーセダンとしての存在感と扱いやすさを両立するよう設計されている。日常性と高級感を高い次元で融合したパッケージだ。

ボディサイズ:堂々としながらも過度ではない大きさ

全長約5m、全幅約1.95mというボディサイズは、視覚的には堂々とした存在感を放つ。その一方で、扱いづらい印象を与えない絶妙なバランスにまとめられている。ホイールベースや前後オーバーハングは最適化されており、市街地走行時や駐車操作でも車両感覚をつかみやすい。

高速道路ではワイドトレッドと低重心設計が効き、直進安定性に優れたクルージング性能を発揮する。ミドルサイズセダンとして、スポーティなスタンスと実用性を高次元で両立している。

室内スペース:快適性を重視した居住性

前後席ともに十分なヘッドクリアランスとレッグルームを確保しており、比較的長時間の乗車でも、大人4人が快適に過ごせる室内空間が用意されている。外観は流麗なデザインを纏ったスポーツセダンでありながら、後席の足元にも余裕がある。同乗者の快適性を犠牲にしていないのもギブリの使いやすさにつながっている。トランク容量も500Lと実用的なレベルで、日常生活から週末の旅行まで幅広く対応できる。

マセラティ ギブリの走行性能・燃費性能

マセラティ ギブリの走行性能と燃費性能は、スポーツカーとしての走りの伝統と現代的な効率性を両立させている。

走行性能:操る楽しさを重視した味付け

FRレイアウトを基本とするシャーシは前後の重量配分に優れている。ステアリング操作に対して自然で分かりやすい挙動を示し、ドライバーの意思に忠実な走りを実現する。足まわりは快適性とスポーツ性のバランスを重視した設定で、街中から高速道路、ワインディングロードまで、操る楽しさと一貫した安心感を味わうことができる。さらにイタリアンスポーツらしいV6やV8エンジンの力強い加速と官能的なエンジンサウンドが、走る歓びをより強く演出してくれる。

燃費性能:電動化で効率を向上

後期モデルに設定されたマイルドハイブリッド仕様は48Vシステムを採用し、発進時や低回転域で電動アシストを行う。燃費性能の向上と加速初期のレスポンス改善を実現したユニットを搭載している。走行フィールを損なうことなく効率性を高めたという点では、内燃機関から電動化へと移行する過渡期のマセラティを象徴する仕様といえる。このパワーユニットを搭載した「GT」(2021年モデル)の燃費は欧州仕様で8.1L/100kmとされており、約12.3km/Lの計算になる。

なお、V6エンジン搭載の「モデナ」は9.6L/100km(≒10km/L)、V8エンジンを載せたハイパフォーマンス仕様の「トロフェオ」が13L/100km(≒7.7km/L)とされている。

マセラティ ギブリの購入価格・維持費

マセラティ ギブリの最高峰 "Trofeo" (トロフェオ)。
マセラティ ギブリの最高峰 “Trofeo” (トロフェオ)。

マセラティ ギブリの購入価格・維持費は、海外ブランドのラグジュアリーセダンとしては標準的な水準といえる。

購入価格:性能に応じた価格設定

日本で販売されていた最終仕様は、マイルドハイブリッドを搭載する「GT」が約1000万円からでマセラティへのエントリーモデルとしての役割を担っていた。V6エンジン搭載の「モデナ」も1500万円ほどで、性能と装備のバランスに優れたギブリの中核グレードとして位置づけられていた。最上位の「トロフェオ」はV8エンジンを搭載し、価格も2000万円とギブリのフラッグシップにふさわしい水準。希少性と圧倒的なパフォーマンスを求める層に向けたモデルだった。

維持費:輸入高級車らしいコスト感

マセラティ ギブリの維持費は、同クラスの欧州ラグジュアリーセダンと比べて高額というわけではない。駐車場費用を除けば、比較的リーズナブルにイタリアンスポーツセダンを所有できる(以下は「GT」グレードの場合の概算)。

マセラティ ギブリモデル解説

最終期のマセラティ ギブリは3種類のパワートレインを軸としたグレード構成となっており、それぞれが明確に異なるキャラクターを与えられていた。

ギブリ GT

ハイブリッドのギブリ GTは、2.0リッター直列4気筒ターボに48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた最終期のエントリーグレードだ。電動ブースターにより低回転域から鋭いレスポンスを実現し、市街地走行でも扱いやすい特性を備える。燃費性能やCO2排出量に配慮しつつ、走行フィールはあくまでスポーティ。電動化時代への橋渡し役として、現代的なマセラティ像を体現したモデルといえる。

発表2021年
全長/全幅/全高/ホイールベース4985/1945/1485/3000mm
パワートレイン直列4気筒ターボ
総排気量1998cc
最高出力、最大トルク330PS(243kW)、450Nm
トランスミッション、駆動方式8速AT、RWD
車両重量2030kg
0→100km/h加速5.7秒
最高速度255km/h

ギブリ モデナ/モデナQ4

3.0リッターV6ターボエンジンを搭載するモデナは、ギブリの中核を担う王道グレードだ。FRが基本だが、全輪駆動のQ4もラインナップ。走行シーンやオーナーの好みに応じた選択肢が用意された。V6エンジンは力強いトルクと滑らかな回転フィールを併せ持ち、日常での使用から高速巡航に至るまで余裕のある走りを提供する。官能的なエンジンサウンドも含め、スポーツ走行の楽しさと快適性を高い次元で両立したモデルがモデナだ。

発表2013年
全長/全幅/全高/ホイールベース4985/1945/1485/3000mm
パワートレインV型6気筒ターボ
総排気量2979cc
最高出力、最大トルク430PS(316kW)、580Nm
トランスミッション、駆動方式8速AT、RWD/AWD(Q4)
車両重量2010kg (Q4は2090kg)
0→100km/h加速4.9秒 (Q4は4.7秒)
最高速度286km/h

ギブリ トロフェオ

ギブリ トロフェオは、3.8リッターV8ツインターボエンジンを搭載するシリーズ最上位モデル。圧倒的なパワーと加速性能を誇り、高速域でのパフォーマンスはスポーツセダンの枠を超える。専用チューニングが施されたシャシーや足まわりがエンジンの高出力を確実に路面へ伝達。実用性を保ちながらもスーパーカー級の性能を織り込んだ、ピュア内燃機関時代のギブリを象徴するフラッグシップだ。

発表2021年
全長/全幅/全高/ホイールベース4985/1945/1465/3000mm
パワートレインV型8気筒ターボ
総排気量3799cc
最高出力、最大トルク580PS(427kW)、730Nm
トランスミッション、駆動方式8速AT、RWD
車両重量2080kg
0→100km/h加速4.3秒
最高速度326km/h

これら3グレードは、電動化への橋渡しを担うGT、走りと快適性の中核を成すモデナ、そして内燃機関時代の頂点に立つトロフェオという、マセラティ ギブリの進化と哲学を体現している。

マセラティ ギブリの中古車価格

ハイブリッドモデルにはブルーのアクセントカラーが使用された。
ハイブリッドモデルにはブルーのアクセントカラーが使用された。

マセラティ ギブリの新車での販売は終了しており、中古車市場が購入の中心となる。中古車の流通は比較的多く、年式やグレード、走行距離、車両の状態によって価格には幅がある。また、全輪駆動のQ4は、中古車市場での流通数は多くない。

モデル新車価格(当時)中古車価格(2025年12月時点)
マセラティ ギブリ GT1066万円~850万円
マセラティ ギブリ モデナ1456万円~1300万円
マセラティ ギブリ モデナ Q41530万円~800万円
マセラティ ギブリ トロフェオ1910万円~1800万円

マセラティ ギブリについて多い質問

トロフェオに与えられた"Sport Corsa" 走行モード。
トロフェオに与えられた”Sport Corsa” 走行モード。

以下では、マセラティ ギブリに対して多い質問に回答する。

Q:ギブリは新車で購入することはできないのか?

日本では新車販売を終了しており、現在は中古車のみが購入対象となる。ただし販売終了から時間が浅いため、低走行・高年式車や正規ディーラーの認定中古車が流通しておりコンディションの良好なクルマを手に入れることは可能だ。

Q:イタリア車は故障が多いという印象がある。マセラティおよびギブリの信頼性は高いか?

高性能な輸入車であるため、正規インポーター/ディーラーが推奨するメンテナンスや定期点検は不可欠だが、基本的に信頼性は安定していると言える。中古車の場合、これまでの整備など履歴が明確な個体を選べば致命的なトラブルの頻発は避けられるだろう。

Q:高級輸入車ブランドの中では比較的リーズナブルな価格設定のギブリだが、操作性はどうか?初心者でも扱えるクルマと言えるか?

ボディサイズは比較的大きいが、国産も含めたEセグメントモデルの中では標準的なサイズで取り回しは難しくないだろう。視界も良好で、ADAS(先進運転支援システム)も充実している。事前に試乗を行って確認することが推奨されるが、一般的には初めての高級輸入セダンとして扱いやすいモデルと言える。

マセラティ ギブリの購入方法

マセラティ ギブリの新車販売は終了している。マセラティにも正規ディーラーの認定中古車制度が利用できる。
マセラティ ギブリの新車販売は終了している。マセラティも正規ディーラーの認定中古車制度が利用できる。

マセラティ ギブリの購入手段は中古車に限られる。正規ディーラーの認定中古車は保証や点検内容が明確で、初めてマセラティを所有するユーザーにとって安心感が高い。一方で、中古車専業店では価格や仕様など選択肢の幅が広がるメリットがある。整備履歴や保証条件を十分に確認したうえで、自身の使用環境に合った個体を選びたい。

ローマ神話が由来のマセラティのエンブレム「トライデント」。

イタリアの至宝マセラティ “トライデント” が語るレースへの情熱とラグジュアリー 【自動車エンブレム秘話03:マセラティ】

イタリアが生んだ至宝、マセラティ。その歴史は、1914年にボローニャで創業された小さな工房から始まった。マセラティ兄弟の情熱と、故郷への誇りが生み出したエンブレム "トライデント" は、レースとラグジュアリーを融合させたマセラティのブランドアイデンティティを象徴している。

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