ホンダ・スーパーカブ50(初代1958年)
ホンダの「スーパーカブ」シリーズといえば、1958年に登場した初代モデル「スーパーカブC100(排気量は50cc)」以来、世界的に大きな支持を受けているビジネスバイク。取得が楽な原付免許で乗れる50ccクラスのなかでも、とくに、配達業などの商用から日常の足まで、手軽な移動手段として長年支持をうけてきたバイクだといえる。


特に、現行モデルでは、兄弟車の110ccモデル「スーパーカブ110」と同様、レッグシールドや丸目ヘッドライトなど、往年のカブを彷彿とさせるスタイルを採用。各部に配したクロームメッキのパーツなどで上品な印象とした外観や、クラッチ操作不要の4速リターン式シフトによる軽快な走りも自慢だ。
そんなスーパーカブ50だが、ホンダはすでに生産終了することを発表しており、その最終仕様となる「スーパーカブ50・ファイナルエディション」を受注期間限定で2024年12月12日(木)に発売した。

主な特徴は、往年のスーパーカブをイメージした「ボニーブルー」のカラーリングや、エンブレム類などに専用デザインを設定。また、メーターリムとマフラーカバーをメッキ仕様としたほか、シート前部と後部をグレーとしたツートーンのシートを採用するなどで、特別感を演出している。
ホンダは、同時に、スーパーカブ50をベースに、サンリオの人気キャラクター「ハローキティ」の50周年を記念した「スーパーカブ50・HELLO KITTY」も発表。こちらは、スーパーカブ110をベースとした「スーパーカブ110・HELLO KITTY」も設定するが、いずれにしろ、これで最後となるスーパーカブ50に2タイプの特別仕様車をリリースした。

これら2タイプは、受注期間限定での販売だが、受注期間は2024年11月8日(金)から2024年11月24日(日)までだったので、すでに終了。価格(税込み)は、スーパーカブ50・ファイナルエディションが29万7000円(通常仕様車の4万9500円アップ)。スーパーカブ50・HELLO KITTYは33万円(通常仕様車の8万2500円アップ)。いずれも価格(税込み)24万7500円の通常仕様車より高くなるが、新車で買える最後のスーパーカブ50だけに、購入できる人はかなりラッキーではないだろうか。
ちなみに、兄弟車の110ccモデル「スーパーカブ110」(税込み価格30万2500円)や125ccの「スーパーカブC125」(税込み価格45万1000円)などは継続販売。スタイルはスーパーカブ50とほぼ同様で、排気量をアップした原付二種モデルの存在により、「スーパーカブ伝説」はまだまだ続くことになりそうだ。


ホンダ・ジャイロX(初代1982年)
スーパーカブ50と同じく、昭和に生まれて今でもラインアップが続くビジネスモデルが、原付三輪スクーターの「ジャイロX」だ。

初代モデルは1982年に登場。当時のホンダは、前1輪+後2輪のスリーホイールを備えた50ccバイクを、新感覚な乗り物「スリーター」としてリリース。1981年に発売した乗用車的イメージの「ストリーム」に続き、スリーター第2弾として発売したのがジャイロXだった。

初代ジャイロXの主な特徴は、最高出力5PSを発揮する49cc・2サイクル単気筒エンジンを搭載し、コーナーリング時にフロントボディが左右にスイングするナイトハルト機構を採用。3輪の安定性とバイクの持つ軽快な操縦性を兼ね備えたことが魅力だった。

また、ノンスリップデフ機構、ワイルドパターンの低圧ワイドタイヤなどの装備により、不整地や雪道、坂道などでの優れた走破性も実現。アウトドアをイメージさせるタフな外観や、フロントデッキとリア大型キャリアなどによる高い積載性や実用性も実現した。

なお、1990年には、ルーフやワイパー付きウインドスクリーン(風防)を備えた屋根付き3輪バイクの兄弟車「ジャイロキャノピー」も登場。宅配などの配送業などに便利な高い実用性を備えることで、ジャイロXと共にビジネス向け3輪バイクのスタンダードモデルとして定着する。

現行のジャイロXは、2008年に登場。兄弟車のジャイロキャノピーと共にエンジンを刷新し、従来の2ストロークエンジンから49cc・水冷4ストローク・OHC・単気筒エンジンに変更。従来モデルに比べ燃費を約30%向上させるなど環境性能をアップしつつ、滑らかな出力特性も両立したことが特徴だ。

また、新設計のアルミ製ホイールとチューブレスタイヤを前・後輪に採用したほか、後輪のサイズを6インチから8インチに大径化。後輪のトレッド拡大などと相まって、走行安定性の向上も図っている。
その後も、ジャイロXとジャイロキャノピーは、2017年にエンジンを平成28年排出ガス規制に適合させるなどの変更を受けており、環境性能を進化させた。だが、それでも、2025年11月の新しい排気ガス規制に適合できるのかは不明で、2025年3月3日現在ではとくにアナウンスはないが、生産終了の可能性も十分に考えられる。
ただし、これら2モデルについては、2021年に電動バイク「ジャイロe:」「ジャイロキャノピーe:」が出ており、これらは新排気ガス規制の影響がないことが予想できる。昭和生まれのスリーターモデルは、電動ユニット化により、今後もその伝統を受け継いでいくこととなるだろう。

なお、現行のジャイロX(50ccエンジン車)の価格(税込み)は、ウインドシールドとリアキャリアなしのベーシックタイプが40万4800円、ウインドシールドと車体の前後にキャリアを装着したスタンダードタイプで42万6800円。また、現行のジャイロキャノピーの価格(税込み)は57万900円だ。

ヤマハ・ジョグ(初代1983年)
ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)の原付一種スクーター「ジョグ」シリーズは、スポーティなスタイルとパワフルな動力性能などが魅力のロングセラーモデルだ。

1983年に登場した初代モデルは、2000年代前半頃まで続く、スポーティな50ccスクーターのブームを作った立役者といえる。当時としてはパワフルな4.5PSを発揮する49cc・2ストロークエンジンや、尖ったフロントカウルが前輪を覆う戦闘的スタイルなどが好評を博し、大ヒットを記録する。

その後、ジョグは、90cc・2ストロークエンジン搭載モデルなど、数々の派生モデルも誕生し、ヤマハ製スクーターの基軸となる。だが、一方で、年々厳しくなる排気ガス規制などの影響もあり、2007年には、4ストロークエンジン搭載車に変更される。
さらに、2018年に登場した現行の50ccモデルでは、後述するホンダの「タクト」をベースに、ヤマハのデザインを投入したOEMモデルとなった。かつてヤマハを代表した50ccスポーツスクーターは、外観とネーミングなどをオリジナルとし、エンジンや車体など基本構成は共用となっている。
そんなジョグの現行モデルは、ラインアップに上級モデルの「ジョグ デラックス」とスタンダード仕様の「ジョグ」を設定。最高出力4.5PSを発揮する49cc・水冷4ストローク単気筒エンジンは、登坂路でもグングンとストレスなく登れるパワフルな特性を実現。加えて、燃費や環境にも配慮していることが特徴だ。

特に、上級モデルのジョグ デラックスには、アイドリングストップ・システムを専用装備。燃料の余分な消費や騒音、排出ガス低減に貢献する。また、スタンダード仕様と共に、高い燃費性能も誇り、WMTCモード値58.4km/Lを実現する。
ほかにも、シート下トランクは、デラックスで20L、スタンダード仕様で19Lの大容量を確保。ヘルメットはもちろん、レインウェアなどの収納にも便利だ。さらに、(後輪ブレーキ用の)左レバーを操作すると、前輪にもほどよく制動⼒を配分し、ブレーキングをサポートするコンビブレーキなどで、高い安全性も確保している。なお、現行ジョグの価格(税込み)は、スタンダード18万1500円、デラックス19万4700円だ。

ちなみに、ジョグには現在、124cc・空冷4ストロークエンジンを搭載する原付二種スクーター「ジョグ125」もラインアップ(税込み価格26万7300円)。2022年に登場したこのモデルは、シリーズ共通のスポーティなスタイルを採用。ヤマハ独自の「ブルーコア(BLUE CORE)」エンジンの搭載により、最高出力8.3PSという力強いパワーと、WMTCモード値51.9km/Lという高い燃費性能を両立していることがポイントだ。
そして、おそらく50cc版のジョグが新排気ガス規制に対応できなくても、この原付二種モデルは生き残る可能性は十分にある。ロングセラーモデルの血統は、125ccモデルとしてこれからも続くことが予想される。

ホンダ・タクト(初代1980年)
40年以上の歴史を誇るホンダの原付一種スクーターが「タクト」だ。

初代モデルは1980年に登場。最高出力3.2PSを発揮する49cc・2ストローク単気筒エンジンにより、高い走行性能を実現。今では当たり前となったフラットなステップを持つステップスルーなど、快適かつ実用的な数々の装備により、大きな人気を獲得したモデルだ。

当時は、先に紹介したジョグなど、ヤマハ製の原付スクーターも大きなセールスを記録。「HY戦争」と呼ばれる販売競争に発展したほどだったが、そんななか、ホンダ勢の中心的モデルのひとつとなったのがタクトだった。
ちなみに、これも前述の通り、現在、ホンダのタクトはヤマハへOEM供給されていて、「ジョグ」の名称でも販売。かつてのライバルが、今となっては兄弟車になっているというのも、どこか不思議な縁のようなものを感じさせる。
そんなタクトは、一時期ラインアップから外れていたものの、2015年に16年ぶりの復活を果たした現行モデルが登場。エンジンには、扱いやすい出力特性を備え、環境性能にも優れた水冷・4ストローク・OHC・単気筒の「eSP(イーエスピー)」を搭載。最高出力4.5PS、最大トルク0.42kgf-mを発揮し、WMTCモード値で58.4km/Lという優れた燃費性能を誇る。
ラインアップには、アイドリングストップ機構付きの「タクト」に加え、シート高を15mm下げてより足つき性に配慮し、アイドリングストップ機構を省いて価格をリーズナブルにした「タクトベーシック」を設定。


いずれのグレードも、ヘルメットや小物を収納できるラゲッジボックス、被視認性の高い大型マルチリフレクターヘッドライトやテールランプ、軽い力で掛けられるよう配慮したセンタースタンドなど、利便性を考慮した装備が満載だ。
なお、現行タクトの価格(税込み)は、タクトベーシックが17万9300円、タクトが19万2500円。このモデルについては、現時点(2025年3月3日現在)で生産終了になるのか、また電動化や排気量アップなどで後継機種が出るのかなどは不明。だが、40年以上愛されてきたモデルだけに、絶滅だけはなんとか避けてもらいたいものだ。
スズキ・アドレスV50(初代1987年)
「アドレスV50」も、1987年に登場した初代「アドレス」以来、ロングセラーを続けるスズキの原付一種スクーターだ。

スポーティでファッショナブルなフォルムを持つ初代モデルは、6.5PSの高出力を発揮する49cc・2サイクル空冷単気筒エンジンを搭載。フルフェイスヘルメットの収納が可能なパーソナルスペース(多目的収納スペース)をシート下部に設けるとともに照明も装備し、使いやすさを充実させていたことも特徴だ。

1990年には、上級モデルの「アドレスV」が登場。ゆったりと運転できる大柄な車体に、最高出力6.8PSの49cc・2サイクル単気筒エンジンを搭載。スポーティーな走りが楽しめるほか、長距離走行に便利な大容量4.8Lの燃料タンクを装備するなどの特徴があった。

また、2006年には、上級スクーターのアドレスVシリーズをベースに、エンジンを4ストローク化した「アドレスV50」が登場する。

現行モデルでは、フューエルインジェクションを採用した49cc・4サイクル空冷単気筒エンジンを搭載。最高出力3.7PSを発揮するエンジンは、スポーティで力強い走りを実現。また、WMTCモード値52.8km/L という高い燃費性能も両立し、毎日の通勤・通学などでの高い快適性と経済性を追求している。
シート下トランクスペースは、フルフェイスヘルメットが横向きに収納できる大容量サイズを採用。グローブなどの小物が入る便利なフロントインナーラックやリアキャリアなどで、荷物の積載性も良好だ。また、鍵穴へのいたずらや盗難を抑止するシャッター付きキーシリンダーなども採用し、高いセキュリティ機能も合わせ持つ。

なお、現行アドレスV50の価格(税込み)は、19万3600円。スズキのスクーターには、125ccエンジンを搭載する原付二種の「アドレス125」もラインアップする(税込み価格27万3900円)。

そのため、もしアドレスV50が新排気ガス規制の影響で生産終了となっても、シリーズは存続することになるのは確かだろう。ただし、手軽でリーズナブルな原付一種スクーターがなくなってしまう可能性は高い。いずれにしろ、このモデルについても、現時点(2025年3月3日現在)でとくにアナウンスがないため、今後の動向に注目したい。
昭和から続くモデルは今後も存続するか?
ここに挙げたモデルでは、スーパーカブ50のほかは2025年3月3日現在、まだ生産に関するアナウンスはない。だが、先に述べたように、2025年11月から施行される新排気ガス規制の影響を何らかの形で受けるのは間違いないだろう。
昔からバイク初心者のエントリーモデルとしてや、通勤・通学、商用などの用途で、街中での気軽な移動手段として活躍してきた50ccの原付一種バイク。とくに、ここで紹介した元祖が昭和生まれのバイクたちは、長い歴史を持つモデルばかり。ぜひ、何らかの形で存続させてもらいたいものだ。
