CFMOTO 250SR-S……67万4300円(2025年3月上旬現在)



5,000rpmを超えると二字曲線的に本領のパワーを発揮

CFMOTOは、1989年に中国の温州で設立され、現在は杭州市に本社を置く。2011年にKTMと商業パートナーシップを締結し、2023年にはヤマハとの合弁事業をスタートするなど、成長著しい二輪メーカーだ。MotoGPに詳しい人なら、「CFMOTO Asper Team」所属のダビド・アロンソ選手が、昨年のMOTO3クラスでチャンピオンを獲得したことを覚えているだろう。

今回試乗したのは、軽二輪スポーツモデルの「250SR-S」だ。世界中でホットなジャンルの一つであり、仕向地によっては298ccの「300SR-S」が販売されている。エンジンはショートストロークの249cc水冷4ストローク単気筒で、動弁系はDOHC4バルブ。最高出力は29.2psを公称し、これを155kgという軽量な車体に搭載する。

セルボタンを押してエンジンを始動する。カウリングによって増幅されるのか、メカノイズがやや大きめに聞こえるが、排気音は単気筒らしい歯切れの良いものだ。スリッパー機構を採用したクラッチはレバーの操作力が軽く、ニュートラルからローへのシフト操作もスムーズだ。軽い暖機運転のあと、いざマシンを発進させる。
アイドリングのすぐ上、2,000rpm付近でクラッチミートする。この領域はトルク感がまだ薄く、スロットルの動きに対する反応がスムーズになるのは2,500rpmを超えてからだ。車体が軽いこともあって、上り勾配のきつい場所でも発進には困らないが、かといってトルクフルと表現するには程遠い。しかし、これは鳴りを潜めているに過ぎなかった。このエンジンは5,000rpm付近を境にパワーカーブが二次曲線的に盛り上がり、本領発揮とばかりにレッドゾーンまで一気に吹け上がるのだ。特定の回転域で豹変するこうした二面性は、かつてカワサキが販売していた水冷シングルのカワサキ・Ninja250SLを彷彿させるものであり、2気筒勢に立ち向かうべくパワーを追求した結果、真の中高回転型に生まれ変わったような特性となっている。
明確なパワーバンドによる爽快感がこの水冷シングルの面白さだ。1軸バランサー付きながら微振動は多め、しかしそれすらも力強さの演出と思えるほど走らせていて楽しい。マシンのターゲットとしては若年層なのだろうが、この歯応えのあるエンジンフィールはベテランライダーもハマる可能性大だ。
サスの作動性は良好、ハンドリングは自然で扱いやすい

フレームについては、カウリングに隠れているためほとんど見えないが、パーツリストを確認すると、ネイキッドの250NKやスクランブラーの250CL-X、そしてクルーザーの250CL-Cなど、バリエーションモデルとプラットフォームを共有しているようだ。

実際に走らせてみると、φ37mm倒立式フロントフォークに負けないほどフロント周りの剛性が高く、ハードなブレーキングからでも狙ったラインをトレースしやすい。基本的なハンドリングは、車体の傾きに対してナチュラルに舵角が付くという扱いやすいもので、Uターンのような小回りから高速コーナーまで、その印象は大きく変わらない。
フロントフォークは、初期から奥まで作動性がほぼ一定であり、シングルレートか、それに近いスプリングを採用しているような印象だ。動きが非常に分かりやすく、慣らし運転が進めばもっとスムーズになるだろう。リヤについても同様で、CST製のラジアルタイヤと合わせて乗り心地の良さを生んでいる。
ブレーキについては、試乗車のパッドがまだ馴染んでいないのか、フロントについては強めのレバー入力を必要とした。ただし、握り込みに対して発生する制動力は正比例であり、コントロール性は上々と言えるだろう。一方、リヤはペダルへの踏力による速度調整がしやすく、特に不満は感じなかった。
現状、250SR-Sと価格が最も近いのは水冷パラツイン搭載のYZF-R25で、その差はわずか1万6500円だ。CFMOTOは中国製、ヤマハはインドネシア製であり、TFT液晶メーターを採用する前者の方が高級な印象すらある。シングルならではの軽さと、まだ乗っている人が少ないという希少性が250SR-Sの推しポイントであり、このスタイリングにピンと来たらぜひ試乗してみてほしい。
ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)






