トラクションコントロール

「トラクションコントロール」は、後輪が空転しそうになると、自動でエンジン出力を抑えてくれる機能で、通称「トラコン」と呼ばれている。

たとえば、タイヤが滑りやすい雨天時のマンホールや道路の白線、峠の砂利道など、ちょっと前ならヒヤリとする場所でも比較的滑りにくくなり、安心感を固めてくれるのだ。

トラコンについては、機能のオン/オフができたり、高級モデルでは介入レベルの選択ができるものもあり、走行シーンに合わせた調整が可能だ。

また、採用機種は、スーパースポーツなどのハイパワーバイクだけでなく、ツアラーやアドベンチャーモデルなど、最近は多様な機種に設定されており、幅広いシーンでその恩恵を受けることができるようになってきている。

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トラクションコントロールは、雨天時はもちろん、ドライ路面でもコーナリングの安心感がアップする(写真はスズキ・GSX-S1000GT)

ライディングモード

スポーツモデルやツアラーなどでは、「ライディングモード」の切り替えができる機種も増えてきた。モデルによっても選べるモードは違うが、たとえば、「スポーツ」や「レイン」「ツーリング」など、選択したモードによってエンジンの出力やトラコンなどの特性を変更可能。天候や路面状況、走り方や好みなどに応じたセッティングを選べるようになっている。

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「ライディングモード」の切り替えができる機種では、選択したモードによってエンジンの出力やトラコンなどの特性を変更可能。天候や路面状況、走り方や好みなどに応じたセッティングを選べる(写真はホンダ・CB1000Fの例)
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レトロなスタイルながらライディングモードなど先進装備も備えるCB1000F

電子制御サスペンション

「電子制御サスペンション」は、走行状況や好みなどに応じ減衰力やプリロード(スプリングの初期荷重)などを自動制御する機能。とくに、高級モデルなどに採用例が多い。

また、近年は、ライディングモードと電子制御サスペンションが連携する機能を持つバイクも登場。さらに、走り方や路面状況、好みなどに応じた細かいセッティングが可能となっている。

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電子制御サスペンションのオーリンズ製スマートECシステムを採用するホンダ・CBR1000RR-RファイヤーブレードSP

アシスト&スリッパークラッチ

「アシスト&スリッパークラッチ」は、クラッチ操作を軽くする「アシスト機能」と、シフトダウン時の急激なエンジンブレーキ(バックトルク)による後輪のホッピング(タイヤが跳ねること)を抑制する「スリッパー機能」を兼ね備えたクラッチ機構だ。

クラッチ操作が軽くなるアシスト機能は、たとえば、発進時のクラッチミートや低速走行時の半クラッチ操作などがやりやすくなり、市街地走行などでの疲労軽減に貢献する。

また、スリッパー機能は、急激なシフトダウン時などに、過度なエンジンブレーキが掛からないように制御するもの。後輪のロックやホッピングを抑制する。不安なく減速からコーナリングに移ることができ、安定した走行を可能にすることが特徴だ。

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アシスト&スリッパークラッチの構造例(写真はホンダ・CB650R用)
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ホンダ・CB650R E-クラッチ

クイックシフター

クラッチやアクセルの操作なしで、変速操作を可能とする機能が「クイックシフター」だ。バイクによって、シフトアップだけ可能なタイプと、シフトダウンの両方に対応するタイプがある。

基本的に、シフトアップ時は、エンジンの点火を一瞬カットすることで、クラッチを切ったり、アクセルをオフにせずともシフトペダルをかき上げることが可能(正シフトの場合)。操作の簡略化となり、アクセルを戻す必要もないことで、より素早くスムーズな加速などに貢献する。

一方、アクセル操作を電子信号で制御する「ライド・バイ・ワイヤ」システムを採用するバイクなどでは、シフトダウン時もクラッチやアクセルの操作が不要のクイックシフター機構を持つことも多い。

ちなみに、シフトダウンの可能なクイックシフター機能を持つモデルには、「自動ブリッピング機能」併せ持つ場合もある。これは、急激なシフトダウンをした際などに、エンジンブレーキが過大に発生して後輪がロックなどをしないよう、減速に合わせエンジン回転を上げるもの。先述のアシスト&スリッパークラッチと同様、コーナリング時の車体安定性を高める効果が期待できる。

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シフトアップ/ダウンの両方に対応するCBR600RRのクイックシフター
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ホンダ・CBR600RR

電子制御シフト(E-クラッチ/DCT/Y-AMTなど)

近年は、さまざまな電子制御シフト機構も登場してきた。たとえば、ホンダの「E-クラッチ」は、クラッチレバーを握らなくても発進や変速が可能。また、通常のマニュアル操作もできることで、「MTの楽しさ」と「ラクさ」の両立を可能としている。搭載モデルは、ホンダの「CBR650R」「CB650R」「レブル250」「CL250」など、多種多様。さまざまな排気量やスタイルのバイクに設定されている。

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ホンダE-クラッチの構造

一方、同じくホンダの「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」は、クラッチ操作だけでなく、シフト操作もすべて自動化した機構だ。そのため、ライダーはクラッチ操作だけでなく、シフトペダルの操作も不要。つまり、AT車と同じだ。ただし、左ハンドルにあるスイッチで、シフトのアップ/ダウン操作も可能で、4輪AT車のパドルシフト的な機能も備えている。搭載車には、ホンダの「ゴールドウイングツアー」「NT1100」「レブル1100シリーズ」「CRF1100Lアフリカツイン」など、大型ツアラーやアドベンチャーモデルが多い。

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DCT搭載車は大型ツアラーやアドベンチャーモデルに多い

一方、ヤマハ車では、近年「Y-AMT(ワイ・エーエムティ)」という電子制御シフト機構を採用したバイクが数多く登場してきた。この機構は、クラッチレバーやシフトペダルを廃し、ハンドルに装備したシフトレバーでの変速操作を可能とする自動変速トランスミッションだ。パドルシフトによる手動変速ができるMTモードと、フルオートで変速するATモードの選択が可能な点では、DCTに近い機構だといえる。これによりライダーは、クラッチやシフトペダルの操作が不要となり、体重移動やスロットル開閉、ブレーキングなど、ほかの操作に集中できることで、よりバイクを操る楽しさを堪能できることがメリットだ。「MT-09 Y-AMT」「MT-07 Y-AMT」「トレーサー9GT+ Y-AMT」など、人気のモデルに採用されており、今後も設定モデルが広がることが予想される。

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Y-AMTはクラッチレバーやシフトペダルを装備せず、MTモードで変速する場合は、左ハンドルにあるシーソー式スイッチで操作する(写真はヤマハ・トレーサー9GT+Y-AMT)
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ヤマハ・トレーサー9GT+Y-AMT

ACC

近年の高級バイクでは、高速道路などで、4輪車のように先行車を自動追従する「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」を搭載するモデルも出てきた。国産車では、カワサキの「ニンジャH2 SX SE」や前述のヤマハ・トレーサー9GT+Y-AMTが採用している。

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カワサキ・ニンジャH2 SX SE

いずれも、車体にミリ波レーダーを搭載することで、先行車などを検知。アクセルを操作しなくても設定速度での巡航ができ、先行車に追いつくと一定の車間を保つように速度を自ら調整し、自動の追従走行を実現する便利な機能だ。

アクセル操作なしに設定速度を維持して走るという機能だけなら、以前から「クルーズコントロール」という機能を持つバイクはあった。ただし、この場合、先行車を自動で追従する機能までは装備されていない。そのため、先行車に追いついた際は、ライダーがアクセルを緩めたり、ブレーキを掛けるなどの操作が必要となる。

一方、ACC搭載モデルは、レーダーセンサーの採用により、クルマと同じように車間距離を自動で維持。長距離ツーリングなどで、さらなる疲労軽減や安全性向上などに貢献してくれる。

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トレーサー9GT+ Y-AMTのACC作動イメージ。先行車を捕捉しているときは、設定したクルージングスピードを超えない範囲で、先行車の速度に合わせて加速や減速を行い(左)/設定したクルージングスピード以下で走行中、先行車がミリ波レーダーの検知から外れたときは、設定したクルージングスピードまで加速(右)*トレーサー9GT+ Y-AMT取扱説明書から抜粋

オートライト/マトリックスLEDヘッドランプ

バイクのヘッドライトは、1998年以降、エンジン始動と同時にヘッドライトが点灯し、夜間だけでなく、昼間も光る「常時点灯式」。ライトの操作はハイビーム/ロービームの切り替えのみとなっているのはご存じの通りだ。

「オートライト」は、そうしたハイビーム/ロービームの切り替えを自動で行う機能。カワサキ・ニンジャH2 SX SEなどに採用されており、切り替えの手間がないことで、ライダーの疲労軽減などに貢献する。

また、最近は、先述したヤマハ・トレーサー9GT+Y-AMTなどに採用されている「マトリクスLEDヘッドランプ」というものもある。

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マトリックスLEDヘッドランプを搭載するトレーサー9GT+Y-AMT

これは、複数のロービーム用LEDとハイビーム用LEDをユニット内に規則正しく配列したヘッドランプシステム。フロントカウルに組み込んだカメラと連動して周囲の交通状況を判断し、自動的に点灯、もしくは消灯し、照射エリアを調整する機能を持つ。

これにより、たとえば、ハイビームで走行中、対向車や先行車を検知すると、それら車両の部分だけライトを消灯することで幻惑などを防ぎつつ、周囲をできるだけ明るく照らすことが可能。夜間の高い視認性と安全性などに貢献する。

さらに、近年は、コーナリング時に車体の傾きに応じて配光パターンを自動調整し、旋回時の良好な視認性に寄与する「コーナリングライト」も登場。これも、トレーサー9GTシリーズやニンジャH2 SX SEなどに採用されている。

フューエルインジェクション

「フューエルインジェクション(以下、FI)」は、電子制御により、エンジンにガソリンと空気を供給するパーツだ。ガソリンエンジンなどの内燃機関では、霧状のガソリンと空気を混ぜた混合気をエンジンに供給し、それを燃焼させることで動力を発生させるのはご存じの通り。FIは、アクセル開度や走行状況などに応じ最適な量の混合気を噴出することが可能。燃焼効率を高めることで、高出力化や低燃費化を実現する。

FIの普及前は、キャブレターというパーツを使っていたが、これは機械制御でかなりアナログ。FIのように、始動時や走行中に、ガソリンと空気の比率をすぐに調整できなかった。そのため、たとえば、寒い冬の朝などは、すぐにエンジンが始動しないことも多かったのだ。その場合、チョークという部品を使い、空気の量を少なくし、ガソリンを濃くすることで始動性をアップさせていた。FIになってからは、そうした操作は不要で、スタートスイッチを押すと一発始動も当たり前。その点では、かなり便利になったといえるだろう。

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近年は、レトロな外観でも、FIなど最新装備を持つエンジンも多い(写真はカワサキ・メグロS1のエンジン)
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カワサキ・メグロS1

ABS

「ABS」とは、「アンチロック・ブレーキ・システム(Anti-lock Brake System)」の略。ここでいうアンチロックとは、「車輪をロックさせない(車輪の回転を完全に止めない)」という意味だ。

たとえば、前方からクルマや人が急に飛び出してきたときのパニックブレーキなど、急制動時に車輪がロックすると、地面と接地しているタイヤが滑り(コントロールを失い)、転倒などの事故につながる可能性が高くなる。

そこで、ABSは、制動時にタイヤのロックが発生した場合、これを検知し、すばやくタイヤの回転速度を回復し車体の安定を保つ役割を担っている。

現在、ABSは、排気量125cc超のバイクには法律で装着が義務化されている。また、125ccなど原付二種(第二種原動機付自転車)についても、ABSまたはCBS(前後連動ブレーキ)のいずれかを装着しないと新車で販売できないことになっている。

いずれも、タイヤのロック防止や制動の前後バランス最適化などを生む有り難いシステムだが、気をつけたいのは、必ずしも万能ではないこと。くれぐれも、無理をせず、まさかの時には安全に停止できるようなライディングを心がけることが大切だ。

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ホンダ車のABSシステム例。主な仕組みは、前後輪に搭載されたセンサーにより前後のタイヤ回転速度を検知し、これらに差がある場合は遅いほうのタイヤがロックしていると判断。ロックしているタイヤに対してはブレーキを緩めて回転速度を回復させた後、再度ブレーキングを実施する。これを1/1000秒単位で繰り返し行うことで制動力を確保し、車体の安定を保つ

スマートキー

スクーターなどに採用例が多いのが「スマートキー」だ。キーを差し込む手間がなく、ポケットに入れたままエンジンの始動が可能。また、シート・給油口の解錠ができる便利機能だ。加えて、盗難防止機能(イモビライザー)も備わっているため、防犯性のアップにも貢献する。

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スマートキーの例(写真はホンダ・PCX用)
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ホンダ・PCX

TFT液晶カラーメーター

フルカラー表示で視認性も良好なのが「TFT液晶カラーメーター」。最近は、これに、スマートフォンと連携し、ナビアプリや通知などを表示できるモデルも登場し、利便性はさらにアップしている。

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TFT液晶カラーメーターの例(写真はスズキ・GSX-8T用)
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スズキ・GSX-8T

USB充電ポート

「USB充電ポート」を備えるモデルも増加傾向だ。スマホホルダーなどにセットしたスマホを走行中でも充電できることで、とても便利になっている。

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USB充電ポートの例(写真はスズキ・アドレス125のUSBタイプAソケットで、フロントインナーラック上に装備)
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スズキ・アドレス125

安全&便利だが過信は禁物

このように、最近のバイクでは、昔とは比べものにならないほど、様々な便利機能が使えるようになっている。そのため、たとえば、先に述べた昔のキャブレター搭載バイクなどと比べると、走るための手間は格段に少なくなっている。ただし、ベテランライダーのなかには、昔のバイクは「手間のかかるぶん愛着もわいた」という人もいるようだ。

たしかに、今のバイクにはない「味」的なものは、昔のバイクにはあるかもしれない。だが、より安心・安全に走るなら、やはり今の先進機能などが搭載されたモデルの方がいいのも確か。ただし、だからといって過信は禁物。テクノロジーがけっして万能ではないことを肝に銘じ、くれぐれも安全運転を心掛けたいものだ。