連載

GENROQ ポルシェ年代記

Boxster / Boxster S(Type 986)

往年のモデルにインスパイアされて

1980年代からポルシェでは、「944」の後継となるエントリーモデルの開発を開始。1984年には944のコンポーネンツを流用した小型ミドシップ2シーターオープンの「984」を試作している。しかし、1987年に発生したブラックマンデーを起因としたポルシェの深刻な経営危機によって、その計画は白紙に戻されてしまった。

その6年後、1993年にヴェンデリン・ヴィーデキングがCEOに就任し、経営の立て直しを図る中で、再び「911」を支える“ベイビーポルシェ”の計画が始動することとなる。

そこでキーパーソンのひとりになったのが、1989年にチーフデザイナーとしてポルシェに復帰したハーム・ラガーイだ。「どのようなコンセプトを持っていようと、すべてのモデルがポルシェとして認識できるデザインでなければならない」というテーマを掲げ、新たなデザイン・アイデンティティを確立しようとしていたラガーイは、「『マツダ MX-5』(ユーノス・ロードスター)のような小型オープンスポーツを」というヴィーデキングの指示を受け、往年の356-001や550スパイダーにインスパイアされた小型の2シーターミッドシップ・オープンカー「ボクスター・コンセプト」をデザイン。1993年のデトロイト・ショーで発表した。

次期911とパーツを共有

ショーで多くの反響を集めたボクスター・コンセプトは、早速量産化が決定されたのだが、ここでヴィーデキングは生産効率の観点から、多くの部分を開発中の次期911と共有することを指示。また、各国の安全基準に対応させつつ、最適な居住性とラゲッジスペースを稼ぐために、ボディサイズを全長4315mm、全幅1780mm、全高1290mm、ホイールベース2415mmとプロトタイプよりひと回り大型化することとなった。

ラガーイの元でデザインを担当したスタイリングを担当したグラント・ラーソンは、フロントのオーバーハングが長くなるなど不利な用件が揃ったにも関わらず、コンセプトのイメージを踏襲したスタイルを実現してみせた。

1996年に発表された「ボクスター」は、996型と基本を同じくする新設計の水冷フラット6DOHCユニットを捩り剛性の高いシャシーの中央にマウント。スペース効率の関係で前後ともストラット式となったサスペンションはアルミ合金を多用することで軽量化が図られたほか、各部のエアフローを最適化することで996と同じCd値0.31と、リフトの低減を実現。こうした様々な努力によりボクスターは、ミッドシップカーらしいクイックなハンドリングと、良好なロードホールディング性を両立していた。

911を支える弟分のポジションを確立

デビュー当初は204PSを発生す2.5リッター・ユニットのみの設定だったが、ドイツ国内では993型「911 カブリオレ」の約半額という戦略的な価格設定も相まって、ポルシェの経営状況を一挙に好転させるほどの大ヒットを記録。特に1997年に996型911がデビューしてからは、ツッフェンハウゼンの本社工場だけでは生産が追いつかず、フィンランドのヴァルメット・オートモーティブに生産を委託しなければならないほどであった。

そして2000年には初のマイチェンを敢行。共鳴吸気システムの採用でトルクを増した220PSの2.7リッター・ユニットへと換装したボクスターに加え、252PSを発生する3.2リッター・ユニットを搭載し、新設計の6速MT、911と同じ大径のドリルドディスク・ブレーキを備えた高性能版の「ボクスターS」を新たに用意した。

さらに2003年モデルでは、前後スカートの形状変更、グローブボックスの追加などを行うとともに、フラット6エンジンに吸気バルブタイミング可変システム“バリオカム”を採用。マネジメントシステムをボッシュ・モトロニックME7.8へ変更することで2.7リッター、3.2リッターともにパワーが8PS増大したうえ、燃費も2%向上させることに成功している。

こうして2005年まで生産された初代ボクスターは合計で16万台を販売。996とともにポルシェの経営状況をV字回復させる立役者となると共に、これまで長年ポルシェを悩ませてきた911を支える弟分のポジションを確立したのである。

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