ヨーコとアイリのふたりが荒廃した世界を旅する『終末ツーリング』
連載開始から5年目で待望のアニメ化を果たす

2025年10月4日~12月20日にかけてオンエアされた「2025年秋アニメ」のなかでも、バイク好きから熱い注目を集めていたのが、ふたりの少女が荒廃した世界を往年のオフロードバイク・セロー225Wで旅をする『終末ツーリング』だ。

2025年10月27日に発売された『終末ツーリング』の最新刊となる第8巻。少女2人が終末世界をヤマハのセローでトコトコ巡る異色のツーリングマンガだ。東北の名所を回りつつ、青森の三沢基地へとたどり着いたヨーコとアイリ。そこで生存者のクレアと出会う。誰もいない世界でF-4ファントムを乗りこなす彼女はどこから来て、何を語るのか……。

2020年9月から「電撃マオウ」(KADOKAWA)にて連載を開始した『終末ツーリング』は、ヨーコとアイリの少女ふたりを主人公に、誰もいない朽ち果てた世界をのんびりと駆け抜けるツーリングをテーマにしたSF×バイクマンガである。

『終末ツーリング』のふたりのヒロイン。バイクを運転するのがヨーコで、タンデムしているのがアイリ。じつはアイリは人間ではなく、アンドロイドの少女のようだ。現在に比べてロボット工学や宇宙開発技術は相当に進歩しているようだ。

作者のさいとー栄先生は、次原隆二先生や桂正和先生、荒木飛呂彦先生などのベテラン作家のアシスタントとして実力を磨いた、メカと美少女を得意とするマンガ家だ。読み切りなどでオリジナル作品を発表する一方、『ヘヴィオブジェクト』シリーズや『艦隊これくしょん〜艦これ〜いつか静かな海で』『刀使ノ巫女』『スーパーカブRei』といったアニメやゲーム、小説などのコミカライズを数多く手掛けてきた。

さいとー先生にとって、一般向けのオリジナル連載作品としては『終末ツーリング』が初となるが、連載開始とともに大人気作品となり、現在までにコミックスは8巻が刊行され、アニメも好評のうちに全12話の放送を終了。昨年12月からBlu-ray/DVDのリリースが開始され、現在、全4巻が好評発売中だ。

第45話「三沢基地その①」で登場した崩壊前の世界では宇宙飛行士だったクレア・キーンス。長岡でヨーコとアイリが見た上空を飛ぶ戦闘機を操縦していたのは彼女だった。空自や米空軍が運用する第5世代戦闘機のF-35ではなく、旧式のF-4を使用したのはアナログ設計の時代ゆえの修理の容易さから。三沢基地に隣接する青森県立三沢航空科学館にはF-4EJが屋外展示されている。

そこで今回はアニメの放送終了を記念して、さいとー先生にインタビューを申し込んだ。じつは筆者がさいとー先生に話を聞くのは2回目。前回は「モトチャンプ」2021年11月号でのことだったので、今から4年前のこととなる。その間に箱根から始まったヨーコとアイリの旅は、関東を離れ、東北地方を通り、海を渡って最新のエピソードは北海道を舞台としている。その間に物語は大きく進んでおり、三沢では宇宙飛行士のクレア・キーンスとの出会いもあった。

この作品を執筆しようと思った動機から制作の舞台裏のエピソード、アニメの感想まで、さいとー先生に話を聞くことにした。

さいとー栄先生も絶賛したアニメ版『終末ツーリング』
アニメ化にあたってさいとー先生はどのように制作に携わったか?

ヨーコとアイリが旅の伴とするヤマハ・セロー225W。外観はオリジナルの状態を残しているが、エンジンは腰下はそのままに高性能バッテリーとモーターを積むEVバイクに改造されている。そのためEVでありながら、クラッチレバーが機能するマニュアル操作仕様となる。 

「ボクの作品がアニメ化されるのは今回が初めてのことです。マンガと違ってアニメは動いて音が出る。そして、モノクロの漫画とは違ってフルカラー! やはり色がつくと違いますよね。それだけで感動しました。それと背景がとても綺麗ですよね。背景美術に力が入っているなぁ~と感心しました。徳本善信監督をはじめ、制作会社のNexusさんなど関わってくださった方々の頑張りによって、素晴らしいアニメ化にしていただいたことに感謝しています。マンガ版とは基本的に同じストーリー、同じキャラが活躍する作品なのですが、マンガとアニメだと見え方も変わっていい意味で違う作品だと思っていますので、一視聴者として毎回オンエアをワクワクしながら拝見させていただきました」。

さいとー栄先生が絶賛している通り、アニメ版『終末ツーリング』の見どころとなっているのが背景美術の美しさだ。ふたりのヒロインが日本各地の廃墟となった名所を回る。画像は第3話「世田谷・新橋・有明・東京ビッグサイト」に登場するレインボーブリッジ。

さいとー先生にアニメ版『終末ツーリング』について感想を求めると、開口一番、熱のこもった声で作品のクオリティの高さと、映像に強く引き込まれたことを語る。

さて、ここで気になるのはアニメ化に当たってのさいとー先生の関わり方だ。この作品のように原作付きのアニメの場合、原作者の関わり方は作品によって大きく異なる。アニメと原作は別ものとしてスタジオにすべてを委ねてしまうケースもあれば、原作者自身がアニメの監督を務めるケースがあるなどさまざまだ。さいとー先生は『終末ツーリング』のアニメ化に当たって、どのように制作にかかわられたのだろうか?

「先ほども述べたとおり、ボクの作品がアニメ化するのははじめてのことです。他のマンガ家がどのように作品に携わっているのかもわからない状態でしたが、今回、ボクは制作会社から送られてきた設定や脚本に目を通してチェックを入れた感じです。修正をお願いした部分もありますが、マンガとアニメは同じ物語でも見せ方が違いますし、作品に対しては認識を共有してもらっていたこともあり、監督を信頼してお任せしました」

100名以上が参加したオーディションで決まったヨーコとアイリ役の声優

『終末ツーリング』は、いわゆるポストアポカリプスものだが、世界崩壊の理由を探る謎解きの要素よりも、ふたりの少女の旅と日常を描くことに軸足が置かれている。

声優の選出はどんなふうに決まりましたか?

「ヨーコとアイリの声優はオーディションで決まりました。ボクは送られてきたデモテープを聞いて、自分の頭の中にある2人の声に近い声の方をリストアップしたのですが、この作業が意外に大変でした。登場するメインキャラクターが少ない作品にもかかわらず、新人からベテランまで100名以上の声優さんが応募されて、『日本にはこんなにたくさんの声優がいるんだ』とあらためて驚いた次第です。その中から候補を何人かに絞り、会議で同じように候補を選んできたアニメのスタッフとすり合わせをして、最終的にヨーコ役に稲垣好さん、アイリ役に富田美憂さんと決まりました。お二方ともそれぞれのキャラクターのイメージに合った声で、演じていただいて良かったと思います」。

「オープニングテーマ曲(以下、OP曲)とエンディングテーマ曲(以下、ED曲)については、Conton CandyによるOP曲の『Touring』、MyukによるED曲の「グライド」のどちらも作品のテーマに合った本当に良い曲だと思います。どちらもバックに映像が入るとなんともエモいですよね。OP曲とED曲のどちらもすごく気に入っています」。

第6話「海ほたる」のワンシーン。このエピソードでは嵐の東京湾アクアラインを駆け抜け、なんとか海ほたるに辿り着いたふたりに野生化したネズミが襲う。逃げるふたりのアクションが見どころとなっていた。

「2025年秋アニメ」の中でも、とくに評価の高かった『終末ツーリング』だが、アニメ版はコミックス4巻に収録された第24話「ビーナスライン」まででひとまず幕を閉じた。もちろん、原作マンガはまだまだ続いている。となるのは今後の展開が気になるところだ。第2期はいつ頃オンエアとなるのか? それとも次は映画化か? 実写ドラマというのもぜひ見てみたいが……。

「それはボクにもわかりませんよ(笑)。アニメ、原作マンガともに今後ともぜひご声援をお願いいたします」。

第8話「霞ヶ浦・モビリティリゾートもてぎ」に登場した霞ヶ浦大橋のたもとにある虹の塔。エレベーターはもちろん使えなくなっていたので展望台までは階段を昇ることに。

アニメについての感想をお聞きしたところで、次回からは原作漫画についてさいとー先生に話を聞くことにする(続く)。

第12話(最終話)「ビーナスライン・シェルター」のワンシーン。アニメ化された『終末ツーリング』クオリティが高く、原作ファンも納得の出来栄えだった。第2期制作が待ち遠しい。