ホンダ・Dio110……286,000円(2025年3月6日発売)

Dio110の登場は2011年で、当時の価格は19万9500円だった。2021年にフルモデルチェンジし、プレス成形材を使用したeSAFフレームに、ボア×ストロークおよび圧縮比を変更した新eSPエンジンを搭載。2023年に最新の排出ガス規制に適合するとともに、スマートキー非採用の低価格バージョン「Dio110・ベーシック」をタイプ設定した。
標準装着タイヤはチェンシン製のC-922F/Rのほかに、Vee Rubber製のV431F/Rを設定。指定空気圧はフロント:200kPa/リヤ:225kPaだ。
車体色はマットギャラクシーブラックメタリックのみ。2021年にも同名のカラーリングが設定されていたが、2025年モデルはリヤキャリアと車名エンブレム、フロントのHONDAマークを赤として差別化を図っている。
Dio110の2021年モデル(筆者の試乗インプレッションはこちら)。最高出力8.7PS/7500rpm、最大トルク9.0Nm/5750rpmこそ2021年から変わらないが、排出ガス規制に適合した2023年モデル以降、WMTCモード値が54.9km/Lから55.6km/Lへと微増している。

穏やかな加速フィールは排出ガス規制の影響か

2011年に発売されたホンダ・Dio110は、排気量こそ原付二種(125cc以下)の上限いっぱいではないものの、軽量コンパクトかつ比較的安価なことで人気を集めている良作だ。

筆者は2013年に二輪専門誌の企画で、当時販売されていた国内メーカーの原付二種モデル7機種(ホンダ・PCX/リード125/Shモード/Dio110、ヤマハ・シグナスX SR/アクシストリート、スズキ・アドレスV125SS)を集めて比較試乗したことがある。このとき、加速性能を簡易測定しており、5%程度の上り坂で停止状態から60km/hに達するまでのタイムを比較したところ、1位はリード125の10秒台前半で、PCXは14秒台前半の4位。そしてDio110は21秒台中盤の最下位だった。

タイム的にはリード125の2倍以上を要しており、負荷が増える状況ほど排気量やパワーの差が出やすいことが証明された。だが、平坦路であればここまでの開きをライダーは感じない。事実、パワーウエイトレシオはアクシストリートを上回り、Dio110=キビキビ走るという印象が強く残っている。

その後、Dio110は2021年にフルモデルチェンジを実施。新型の109cc空冷eSPエンジンは、最高出力こそ9.0PSから8.7PSへと微減したものの、実用域での動力性能はそのままに、低振動や静粛性がさらに極まったと感じた。124ccの水冷eSP+エンジンを搭載するPCXやリード125の方がよりトルクフルであり、なおかつ上質さをも感じさせるが、Dio110はそれに比肩するレベルのものを低価格で実現したことが素晴らしいのだ。

さて、今回試乗したのは、2023年に平成32年(令和2年)排出ガス規制に適合して以降の最新モデルだ。最高出力8.7PS/7500rpm、最大トルク9.0Nm/5750rpmというスペックは、規制前の2021年モデルと同じである。ゆえに、走り自体は基本的に変わっていないと思っていた。ところが……。

2021年モデルでボア×ストロークを50.0×55.1mmから47.0×53.1mmに、圧縮比を9.5から10.0:1とした、109cc空冷SOHC2バルブ単気筒“eSP”エンジンを搭載。燃費性能や環境性能に優れるのが特徴で、アイドリングストップ・システムも備える。

スターターのモーター音やアイドリング時の静かさは相変わらずだが、閑静な住宅街を抜け、片側二車線のバイパスに入った時点でほんの少し首を傾げる。以前はもう少し元気良く走ってくれたような……、そう思ったのだ。あくまでも記憶の中での比較なので断言はできないが、具体的には30km/hから50km/hへの加速フィールにもたつきが感じられたのだ。トルクピークよりも低い回転域でCVTが変速していくようなイメージであり、スロットルを開けてから速度が伸びていくまでに少なからず“待ち”が生じる。前日に試乗した弊媒体の編集長も「Dio110ってこんな感じだったっけ?」とコメントしていたので、筆者の印象もあながち間違いではないと思われる。

2023年モデルでエキゾーストマフラーCOMPとフライホイールCOMPが変更に。

その理由を探るべくパーツリストを見てみると、2023年モデルでエキゾーストマフラーCOMPとフライホイールCOMPが変更になっていることが判明。また駆動系では、無段変速の変速比(2.520~0.820)こそ2021年から変更はないものの、2025年モデルはドライブフェイスとドリブンフェイスセットの部品番号がそれまでと異なっていた。そのほか、シリンダーヘッドCOMPやスロットルボディASSYが2021年、2023年、そして2025年で違うなど、いくつもの変更が確認できた。これらパーツの実際の差異と変更理由については想像の域を出ないが、「何となく中間加速が穏やかになった」という印象との因果関係はありそうだ。

とはいえ、そうした感想は最初のうちだけで、しばらく走っていたらすっかり馴染んでしまった。何より微振動が少ないとか静粛性に優れるといった、快適性の高さがDiO110のエンジンの強みであり、なおかつ燃費も良いのだから、日常の足としてはもってこいだ。

前後14インチホイールによる優れた安定性、かつ小回りもしやすい

Dio110は、2021年に従来の鋼管アンダーボーンフレームから、高張力鋼板をプレス成型してレーザーで溶接した新タイプとなり、これによって操安性が大きく底上げされた。特にステアリングヘッド付近の剛性が高まったことで、ライダーの操作に対するレスポンスが向上。旋回中やブレーキング時の安定性も向上し、軽量な車体と相まって、スポーティさすら感じさせるほどになった。

ハンドリング自体は、前後14インチという大きめのホイールと、太すぎないタイヤサイズによって、倒し込みや切り返しで軽快さがありながらも、車体の安定性は優れている。そのさじ加減が絶妙だからこそ、ビギナーでも乗りやすいと感じるはずだ。

アルミキャストホイールは前後とも14インチ。フロントブレーキはニッシン製シングルピストンキャリパーを組み合わせたシングルディスクで、フロントサスはユニットステアだ。リヤブレーキはドラム式で、左レバーを引くとフロントにもほどよく制動力を配分するコンビブレーキを採用。

ブレーキは、フロントがシングルディスク、リヤがドラムで、ABSではなく前後連動式を採用。前後のブレーキを同時に使うことが原則だが、左レバーの操作だけでもかなりの制動力を発揮してくれる上、コントロール性も高い。右手はスロットル、左手はブレーキ操作に集中できるという点においても、ビギナーフレンドリーと言えるだろう。

Dio110の兄弟車その1:Vision110。Dio110のように見えるが、フロントに16インチホイールを履く。生産国のベトナムをはじめ、欧州各国ではこちらが販売されている。
Dio110の兄弟車その2:Dio110。インド市場では同名でこのモデルが販売されている。ホイール径はフロント12インチ、リヤ10インチで、ブレーキは前後ともドラムだ。多機能TFTメーターを採用するDLXをタイプ設定。

Dio110のシート下にある収納スペースは容量20L以下と小さめであり、またメーターに距離計や時計すらないのは現代の基準では不便に感じるだろう。とはいえ、車体の軽さとスリムさ、そしてすぐ肌に馴染む扱いやすさこそがこのモデルの美点であり、その本質は最新モデルでも変わらなかった。

今回試乗したのは上位仕様のDio110で、スマートキーは便利なのは確かだ。とはいえ、物理キーも従来通りの使い勝手で問題はなく、車体色が3色から選べる(Dio110は黒の1色のみ)こと、また価格が約13%安いこともあって、個人的にはDio110・ベーシックを推す。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

シート高は760mmで、足着き性はご覧の通り良好だ。フロアボードの前後長が短いので、足のサイズが大きい人ほどフロアボードが狭く感じるかも。とはいえ、ステップスルーデザインによる乗降車のしやすさは、街乗りにおいて非常に有利だ。全体的にコンパクトな乗車姿勢であり、また1.8mという最小回転半径の小ささもあって、小回り性能は原付二種においてトップクラスだろう。

ディテール解説

リヤサスペンションはユニットスイング式で、ショックユニットは左側に1本のみ。フロント、リヤとも2021年から部品番号が共通であることから、サスセッティングは変わっていないと推察される。
シンプルなデザインのコックピット。純正アクセサリーとしてグリップヒーター(1万9965円)を用意する。
140km/hフルスケールの指針式速度計に液晶画面を組み合わせたメーター。液晶画面はTOTAL=積算計とバーグラフ式の燃料計のみというシンプルさで、燃料計のマークが一つだけ点滅を開始したときの燃料残量は約0.9Lだ。
必要最小限のスイッチボックス。右側にアイドリングストップモードの切り替えスイッチがある。
タンデムが可能なシート。前方がほどよく絞り込まれており、この形状が足着き性の良さに貢献している。
シート下のトランクは容量約18Lで、隅に車載工具が収まる。サイズや形状によってはフルフェイスヘルメットが収納可能だ。シートヒンジの左右にはヘルメットホルダーあり。
Dio110はホンダスマートキーを採用しており、メインスイッチはご覧のようなデザインとなっている。スマートキーにあるアンサーバックスイッチを押すと、ウインカーが点滅して自車位置を教えてくれる。
ハンドルの左下にあるグローブボックス。リッドを開けた状態であれば500mlのペットボトルが差し込んでおける。このほかに便利なコンビニフックあり。
グラブバーを兼ねるリヤキャリア。純正アクセサリーとしてリヤキャリアベース(6050円)とトップボックス 35L(2万7500円)、キーシリンダーセット(3025円)が用意されている。
ヘッドライトは35/35Wのハロゲン球。フロントウインカーはフィラメント球だ。
テール/ストップランプ、リヤウインカー、ナンバー灯もフィラメント球だ。リヤキャリアの裏面に荷掛けフックがあるのを確認できる。

ディオ110/ベーシック(2025年モデル)主要諸元

車名・型式 ホンダ・8BJ-JK03
全長(mm) 1,870
全幅(mm) 685
全高(mm) 1,100
軸距(mm) 1,255
最低地上高(mm) 150
シート高(mm) 760
車両重量(kg) 96
乗車定員(人) 2
燃料消費率(km/L)
 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 59.4(60)〈2名乗車時〉
 WMTCモード値 55.6(クラス 1)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 1.8
エンジン型式 JK03E
エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒
総排気量(cm³) 109
内径×行程(mm) 47.0×63.1
圧縮比 10.0
最高出力(kW[PS]/rpm) 6.4[8.7]/7,500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 9.0[0.92]/5,750
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式 セルフ式
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L) 4.9
変速機形式 無段変速式(Vマチック)
タイヤ
 前 80/90-14M/C 40P
 後 90/90-14M/C 46P
ブレーキ形式
 前 油圧式ディスク
 後 機械式リーディング・トレーリング
懸架方式
 前 テレスコピック式
 後 ユニットスイング式
フレーム形式 アンダーボーン

製造国 ベトナム