求められていたインディアンらしいビンテージスタイル
インディアン・モーターサイクル(以下インディアンMC)にとって、Chief(チーフ)という車両は、インディアンMCブランドが世界の二輪車市場を席巻したときに、モデルラインナップの中心にいたモデルだ。1901年に単気筒エンジン搭載のバイクを開発し、アメリカで最初のバイクメーカーとなったインディアンMCは、1906年にレース用のVツインエンジンを開発。翌1907年には、そのエンジンを市販車に搭載して、市販車初のアメリカンVツイン・ブランドとなった。そして1916年には排気量を1000ccに拡大した大排気量モデル/パワープラスをラインナップ。1924年まで生産を続けた。そのパワープラスの後継モデルとして1922年に登場したのがチーフである。チーフの2年前にデビューしたスカウトは、排気量606ccから始まり、後に745ccまで排気量を上げたものの、インディアンMCのなかでは軽量コンパクトなスポーツモデルという位置づけだった。
対するチーフは、排気量1000ccのVツインエンジンを(後に1200ccまで排気量を拡大)、大型フレームと豪華装備の車体に搭載する、今で言うところのラグジュアリーモデルという位置づけだった。フロントフォークやリアサスペンションを装着して乗り心地と走破性を高め、スカートフェンダーと呼ばれる前後タイヤを深く覆うフェンダーを装着、ヘッドドレスと呼ばれるフロントフェンダー先端に、インディアンヘッドを模った電飾内蔵の装飾をデザイン。豪華なサドルシートを採用して乗り心地もスタイルも豪華にまとめ上げた。

そしてインディアン・チーフは、大量生産による圧倒的な物量と、高いデザイン性を両立したアメリカ製品が、世界中を駆け巡った1940〜50年代を代表するアメリカン・プロダクトとなった。
インディアンMCが新たに発表した「チーフ・ヴィンテージ」は、その古き良きアメリカの雰囲気に溢れたチーフにインスピレーションを受けて誕生した新型車。ブランド創立125周年を祝うのに相応しいスタイルとテクノロジーが融合している。
チーフ・シリーズのプラットフォームを共有
「チーフ・ヴィンテージ」は、2021年にフルモデルチェンジしたチーフ・シリーズに加わった新型車だ。エンジンは、サンダーストローク116と名付けられた、熟成を重ねた排気量1890cc挟角49度空冷4ストロークV型2気筒3カムOHVエンジン。スポーツ/スタンダード/ツアーの出力特性が異なる3つのライドモードを持ち、また停車アイドリング中の油温上昇を抑えるため、一定の条件になると自動的にリアシリンダーを休止させる「リアシリンダーディアクティベーション」システムも搭載。それらのハイテク技術を駆使することで、大排気量OHVでありながら、オイルクーラーを採用することなく、美しい外観とハイパフォーマンスを両立している。

そのエンジンを、同じく2021年のフルモデルチェンジ時に新たに設計した、スチールパイプを中心に構成した新型フレームに搭載。この空冷OHVのVツインエンジンに鉄フレームというプラットフォームは、まさにアメリカンモーターサイクルの王道の基本骨格と言えるだろう。
3つのライドモードのプログラムはチーフ・シリーズで共通。前後サスペンションユニットやサスペンションセッティングも、前後16インチホイールを履くチーフ・ボバーやスーパー・チーフと同じだ。しかしその16インチホイール仲間と違い、リアホイール幅は5インチから3.5インチへとスリム化。合わせてリアタイヤ幅も180から150へと変更されている。それによってリアフェンダー内に隠されたリアフレームの形状を変更している。
「チーフ・ヴィンテージ」専用のディテールは、前後のスカートフェンダーと、そのフロント先端にデザインした電飾内蔵のヘッドドレスだ。2011年にポラリス傘下でインディアンMCが復活してからも、スカートフェンダー装着車をいくつもラインナップしてきた。しかし「チーフ・ヴィンテージ」のそれは、近代インディアンMCのなかでもっともスリムでエレガントなスカートフェンダーに仕上げられている。
またワイドなクラシックハンドバーにステッププレート、そして古いサドルシートを現代風にアレンジしたフローティングシングルシートによって構成される、少し胸を張るようなライディングポジションも「チーフ・ヴィンテージ」のオリジナルだ。
独自のディテールでスタイルと乗り味を磨く
シリーズで共通のエンジン、前後16インチホイールを履く兄弟モデルと同じサスペンションユニットとセッティングを持ちながら、「チーフ・ヴィンテージ」は独自の走行フィーリングを持つ。その大きな要因は、リアタイヤのサイズ変更とライディングポジションだろう。
先のディテール説明で記したように、「チーフ・ヴィンテージ」は16インチリアホイールに、3.5インチ幅のスポークホイールと150サイズのリアタイヤを装着し、ハンドリングは軽快感を増している。それは前後16インチホイールを履く兄弟モデルとも、フロント19インチ/リア16インチホイールを履くスポーツクルーザーのスポーツ・チーフとも違う。フロントからドンドン向きを変えていくような感覚とは違うものの、フロントは自然にコーナーの出口を向き、切り返しも軽い。


このコーナーリング特性には、ライディングポジションも影響しているだろう。とくに幅が広く少し垂れ角が付いた「チーフ・ヴィンテージ」のために設計したヴィンテージスタイルハンドルの影響も大きいだろう。1940〜50年代のチーフ・シリーズのハンドル形状をモチーフにしつつ、現行チーフ・シリーズの車体とのマッチングを考慮してその形状が設定されている。古いチーフでは、幅広で低いハンドルと高いシートによってカウンター・バーのスツールに腰掛けているような、すこし腰が伸びるようなライディングポジションだった。しかし「チーフ・ヴィンテージ」では古いサドルシートをアレンジしたフローティングシングルシートを低い位置に配置することで、専用開発したビンテージハンドルと合わせて、胸を張るようなライディングポジションになっている。
身体を起こして、幅広なハンドルで車体をコントロールする感覚は、他のチーフ・シリーズとは違い、それによって「チーフ・ヴィンテージ」独自の走行フィーリングに繋がっているのだ。他のチーフ・シリーズでは荒々しさすら感じたライドモードのスポーツでも、ホイール周りやライディングポジションが変わると、すこし紳士的になった?と思うほど乗り味は変化している。日本で「チーフ・ヴィンテージ」を走らせる機会を得たなら、スタイルとともに、その走りも堪能してほしい。
ディテール解説
「チーフ・ヴィンテージ」主要諸元

■エンジン種類:空冷4ストロークOHV49度V型2気筒リアシリンダー休止システム付/Thunderstroke116
■総排気量:1890cc
■ボア×ストローク:103.2×113.0mm
■圧縮比:11.0:1
■最高出力:–
■最大トルク:156Nm/3300rpm
■全長×全幅×全高:2441×887×1175mm
■軸間距離:1626mm
■シート高:686mm
■装備重量:327kg
■燃料タンク容量:15.1L
■燃料供給方式:FI/クローズドループ直径54 mm シングルスロットルボディ
■変速機形式:6段リターン
■ブレーキ形式(前・後):298mmシングルディスク(フローティング型)×4ピストンキャリパー・298mmシングルディスク(フローティング型)×2ピストンキャリパー
■ホイール(前・後):16×3.0インチ、16×3.5インチ
■タイヤ(前・後):Metzeler Cruisetec 130/90B16 71H・Metzeler Cruisetec 150/80 B16
■車体色:インディアン・モーターサイクル・レッド、ブラックメタリック
■メーカー希望小売価格(消費税込み):3,380.000円~
■国内発売時期:ディーラーに問合せ








