1988年4月、本田技研工業株式会社に入社し国内二輪部・販売課所属を経て、2001年からタイ、インドネシアに海外駐在。2007年から4年間、国内販売会社のホンダモーターサイクルジャパンに勤務したのち2011年から2021年までイギリス、ベトナム、インドへ駐在。2022年4月に二輪・パワープロダクツ事業本部パワープロダクツ事業統括部長に就任したのち2024年4月より執行役 二輪・パワープロダクツ事業本部長兼二輪事業統括部長に就任(現職)。
Q:前回ショーよりも二輪車の展示が増えた理由と狙いは?
加藤:今回のJMSでは、ホンダ全体で陸海空から宇宙まで豊富な領域を紹介しました。その中で二輪においては、将来への提案である「EVアウトライヤーコンセプト」、「EVアーバンコンセプト」「e-MTB」といったコンセプトモデルに加え、CB1000Fシリーズ、カブシリーズ Liteやディオ110Lite等のタイムリーな商品を展示することで、より幅広いお客様に興味を持ってもらいたいと考えました。

Q:コミューター(電動車、新基準原付等)へのホンダの考えは?
加藤:現在、日本国内において原付一種市場は418万台の保有があり、通勤、通学、買い物、仕事等で利用されており、多くのお客様にとって生活に密着した移動手段となっています。このことを踏まえ、ホンダとしてお客様の選択肢を残すことを目指し、先日新基準原付のラインナップをいち早くご紹介しました。従来の 50cc 原付よりも最高出力、最大トルク共に向上したことでスムーズな加速力と登坂力が得られ、前輪へのディスクブレーキ採用、タイヤサイズの大径化、シート高の見直しなどにより運転のしやすさと安心感を高めています。
また、ホンダはICE(内燃機関)車だけでなく電動車も選択肢として提供しています。排ガスが出ない静かなコミューターとして、お客様の様々なニーズに合う商品と充電方式を提供し、原付クラスに加えて今後は上位機種へも拡大してカーボンニュートラル(CN)を推進していきます。

Q:電動車でのファンモデルとコミューターモデルの位置づけは?
加藤:大きなバッテリーを搭載しにくい二輪車の特性を踏まえながら、比較的近距離での移動手段であるコミューターモデルから、アジアを中心に電動化モデルの投入を進めています。これらのモデルはお客様の使い勝手を考慮し、交換式と固定式の両方を展開しています。交換式は、ステーション等で必要な時に充電済みバッテリーに交換でき、充電時間を待つことなく効率的に利用できます。固定式は専用の充電器を使うことで、自宅で気軽に充電できる等のメリットがあります。
一方、先日発表した「HONDA WN7」は、静かでスムーズな乗り味に加えて、操る楽しさと走る喜びを高次元で実現している初の電動モーターサイクルです。固定式バッテリーの採用によりコミューターモデルより長い航続距離を走行でき、充電方式には急速充電を可能にするCCS2(※1)を採用し、外出先でも30分で80%まで充電でき、待機時間のストレスを軽減します。ファンモデルからコミューターモデル、固定式と交換式バッテリーとバリエーションを揃えることでお客様の多様なニーズに応えたいですし、「さすが、ホンダが出したEVだね」と言ってもらえるような商品を提供していきたいと考えています。

電動車ではファンとコミューターいずれのモデルもコスト低減が課題のひとつですが、モジュール化した電動専用設計のモデル開発を行い、2028年中にインドで稼働を開始する高効率な電動車専用ラインでの生産を行うことでコストを削減します。 ホンダは、開発、生産、顧客接点を増やす販売網の拡充、バッテリーのリパーパス(※2)まで含めたバリューチェーン全体で将来的には電動市場でシェアナンバーワンを目指します。
※1 CCS2:欧州での標準化が進むEV急速充電規格のひとつ。普通充電と急速充電の両方に対応したコンバインド充電システム
※2 バッテリーのリパーパス:EV用バッテリーを家庭用蓄電システムに転用するなど使用済みバッテリーを別の用途に再利用すること
Q:国内コミューター市場の現状と今後をどう予測しますか?
加藤:50ccエンジン原付一種は生産終了となるものの、国内の原付市場に急激な変化が起こるとは想像していません。ホンダとしては国民の生活の足を守り、お客様の選択肢を残すべく新基準原付の開発を行いました。またICEだけではなく、パーソナルそしてビジネス向け電動二輪車もラインアップし、多様化するニーズに応えます。ヤマハさんとの電動二輪車のOEM供給合意(※3)も国内電動市場の形成と国内コミューター市場維持の一助になると考えており、今後も市場活性化にむけて取り組みます。
※3 交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を動力用電源とする原付一種電動二輪車のOEM供給
Q: CN実現へコミューターが果たす役割とは?
加藤:ホンダは2050年にホンダの関わるすべての製品と企業活動を通じたCNの実現を目指しており、二輪事業では環境戦略の主軸として電動化を進めながらICEの進化にも継続的に取り組んでいます。今後も継続して需要の拡大が見込まれるICE製品は、CO2排出量の削減に継続的に取り組むとともに、さらなる燃費向上技術の開発を進めています。ブラジルでは既にフレックスフューエル対応車(※4)の導入を行っており、インドでもこの先の需要を想定し他社に先駆けてフレックスフューエル車を投入しました。インドネシアやインド等には、昨年よりボリュームゾーンとなるコミューター市場に電動車の投入を開始しています。 日本では、コミューターは全体市場で大きなボリューム(約5割)を有しているので、既に電動二輪車では「Honda eビジネスバイクシリーズ(ベンリィe:、ジャイロe:、ジャイロキャノピーe:)」を展開しており、この領域でのCNを推進しています。今後も市場動向を注視しながら、地域のエネルギー事情に合わせた商品展開を図ります。 ホンダはマルチパスウェイによる取り組みで燃費と環境の両面でリードし、ホンダの商品を使えば環境負荷低減につながると思ってもらえるよう、今後も事業活動を展開していきます。
※4 フレックスフューエル対応車:ガソリンとバイオエタノールの混合燃料で走行できる車両。バイオエタノールが植物由来なのでCO2排出量を削減可能

Q:国内市場のコミューターに関するCASEとMaaSは?
加藤:電動車においては、CASEの要素を多く含んでいると考えています。ホンダはバッテリー領域におけるシェアリングを積極的に行っています。国内でいうと国内二輪4社とエネオスで電動二輪車の共通仕様バッテリーのシェアリングサービス提供とそのインフラ整備にむけた株式会社ガチャコを設立し、循環型社会の実現を目指しています。 コネクテッド領域では、ホンダ独自のコネクテッド機能「ホンダ ロードシンク デュオ」を提供しています。車両とスマートフォンの連携によって快適性と利便性を拡充し、ソフトウェア技術によって車両を購入した後もOTA(※5)で進化する電動車となります。今後さらにコネクティビティ技術の進化が進むにつれ、車車間の協調制御や通信によりモビリティを目的地まで効率的に誘導するなど、二輪車と人、社会が相互に心地よく共生できる豊かなモビリティ社会を創造できると考えています。また、 AIやビッグデータを活用してバッテリーマネジメントシステムなどハードウェアをタイムリーに更新することで、最適な情報をもとにモビリティライフの可能性を拡張できると考えます。
※5 OTA:Over The Air(オーバー・ザ・エア)の略。無線通信により車両のファームウェアやソフトウェアなどを遠隔で更新する技術

Q:50ccエンジン原付一種の生産終了はバイク通学にも影響します。電動車や新基準原付は代替モビリティとなりえますか?
加藤:これまで同様、簡便に取得できる原付免許(および四輪付帯免許)で運転可能な原付一種は、生活に密着した移動手段として多くのお客様の移動を支えていきます。この移動手段を電動車や新基準原付の形で引き続き提供することで50ccエンジン原付の代替モビリティになると考えています。
Q:電動車と新基準原付の普及、販売拡大に必要なものと課題は?
加藤:新基準原付という選択肢があるということ、新基準原付に適合したモデルはこれまでの50㏄とは異なる価格に合った商品魅力があることをお客様にいかにご理解いただくかがメーカー側の課題になると思います。 また、電動車の拡大にあたっては、商品の提供だけでなくお客様がストレスなく使えるインフラ整備が必要です。お出かけ先で充電できる設備の拡充が必要となりますので、各自治体などのご協力を得ながら業界としても整備拡充に取り組んでいく必要があると考えています。

国内コミューター市場をこれからも支えていくというホンダの意気込みと推進力に期待したい。


