チューニングしやすい土壌にあった横型エンジン
ホンダの横型エンジンとは、49㏄〜125㏄ までの小排気量車に採用された空冷4ストローク単気筒エンジンのこと。腰上(シリンダーヘッド・シリンダー・ピストン)をフロントタイヤ側にレイアウトした、水平シリンダー式を採用しているのが特徴。代表的なモデルはモンキーやスーパーカブとなり、チューニングパーツも豊富でカスタムを楽しみたいなら横型がベストと言われるほど。
そうしたホンダ横型エンジンの歴史とカスタムをテーマに進めてみたい。
現在アフターパーツメーカー各社から、様々なボアアップキット等のエンジン用パーツがリリースされているが、実は排気量54㏄ エンジン搭載のスーパーカブC105が登場した1961年当時から、49㏄ のスーパーカブC100に、スーパーカブC105用シリンダー&ピストンを流用して、54㏄ にボアアップする手法が確立。
C100のシリンダーをボーリング加工して42mmに拡大し、C105用42mmピストンを組み合わせるのだ。さらに排気量54㏄ の スポーツカブC115用42mm ハイコンプピストンを流用して圧縮を上げてパワーアップなどのチューニングが行われていた。
頑丈で燃費も良い 世界で活躍する横型
そんなホンダ横型エンジン搭載の第1号車は、1958年(昭和33年)8月に登場した初代スーパーカブのC100。スーパーカブはスカートをはいた女性でも乗車できる、片足を上げて跨らなくてもよい、足元にスペースを設けたアンダーボーン型フレームを導入。水平シリンダーの横型エンジンは、このフレームに収まるように設計。“ スーパーカブのアンダーボーン型フレームありき” で誕生したともいえる、小排気量車ならではのエンジンだ。
ホンダの横型エンジンはスーパーカブを筆頭に、モンキー、ゴリラ、ダックス、シャリィ(シャリー)、モトラ、ジャズ、ベンリィ等々、さまざまなモデルに採用。排気量も車種に合わせ、49㏄ 、54㏄ (OHVエンジン)、72㏄ (SOHCエンジン)、85㏄(SOHCエンジン)、87㏄ (OHVエンジン)、109㏄ (スーパーカブ110)、123㏄ (スーパーカブC125)が設定されてきた。
横型エンジンのポイントは、山岳地など過酷な状況下でも壊れない頑丈さ、たった1リットルのガソリンで180kmも 走る燃費性能(1983年式スーパーカブ50カスタムのカタログ値)。スーパーカブやモンキーなどに搭載されたホンダの横型エンジンは、国内はもちろん、海外でも高い信頼性を獲得。現在世界中で活躍する横型エンジンは、基本設計は変わらずとも、時代に合わせて進化を遂げてきた。

レトロなOHVエンジン 1958年〜
初代スーパーカブのC100、セルフスターター付きのスーパーカブC102、54㏄ のスーパーカブC105、スポーツカブC110、国内では多摩テックで活用されたモンキーの第1号であるZ100などに採用。
OHV(オーバーヘッドバルブ)エンジンとは、プッシュロッドという長い棒を介してロッカーアームを動作させ、バルブを開閉させる機構。現行型のSOHCエンジンに比べ、高回転域でのバルブ開閉が安定しにくいのがネックだが、鼓動感を奏でるOHVエンジンはレトロ好きなカブフリークに根強い人気がある。現況OHVエンジンは、アメリカンなど中型車以上のモデルのみに採用されている。

現行型のSOHCエンジン 1964年〜
技術の進化に伴い、スーパーカブシリーズはOHVエンジンからSOHCエンジンに移行。SOHC(シングル・オーバー・ヘッド・バルブ)とはOHCとも呼ばれる、カムチェーンとカムシャフトを介してロッカーアームを動作させ、吸排気バルブを開閉させる方式。低コストかつ高回転域でのバルブ開閉が安定するため、国内ではほとんどの小排気量モデルにSOHCを採用している。
横型エンジンで最初にSOHCを採用したのは、1964年に登場したスーパーカブC65。以降に登場したモデルは順次OHVから、静粛性、出力特性、燃費アップの3つを実現したSOHCに刷新された。
ポイント点火からCDI点火へ 1981年~
1981年(昭和56年)に登場したスーパーカブ50は、点火方式を定期的にメンテナンスが必要な「ポイント式」から、メンテナンスフリーの「CDI式」に変更。カムチェーンテンショナーが「マニュアル式」から「自動油圧式」に変更され、メンテナンス性が大幅に向上した。
6Vから12Vに進化 1986年〜
1986年(昭和61年)に登場したスーパーカブ50より、既存の6Vバッテリーから、バイク用バッテリーの主流になりつつあった12VのMF(メンテナンスフリー)バッテリーに変更。12V・MFバッテリーのメリットは、6Vバッテリーよりも安定した電力を供給。また補水の手間がかからないため、メンテナンス性に優れている点だ。
上記のCDI点火化や12V化は、同じ横型エンジンを搭載したモンキーやゴリラなどにも継承。6V時代の横型エンジンは「6ボルト」、12V になったエンジンは「12ボルト」と呼ばれ、区別されている。なお「12ボルト」はエンジン関連のアフターパーツも豊富で、チューニングにも適しているのが特徴。

時代はキャブレター吸気からFⅠに 2007年〜
新排ガス規制に伴い、2007年(平成19年)に登場したスーパーカブ50は、吸気系を従来のキャブレターからFI(フューエルインジェクション/電子制御燃料噴射式/PGM-FI)に変更。
このシステムは様々な走行条件に対し、コンピューター制御で最適な燃料を供給。特にアクセルの開閉頻度が多い市街地における燃費を向上。寒い朝などの始動を容易にし、スムーズな発進加速も実現した。また排気ガスを浄化する触媒装置(キャタライザー)をエキゾーストパイプ内に装備することで、平成18年国内二輪車排出ガス規制に適合。人気のモンキーも2009年にFI化された。
通称「FI(エフアイ)」と呼ばれるこのエンジンは、「6V」や「12V」と基本設計は変わらないが、
・シリンダーヘッドの吸排気バルブステムを小径化し、バルブの挟み角を狭くしている。
・カムシャフトとのフリクションロスを低減するローラーロッカーアームを採用。
・ロッカーアーム本体の長さを短縮して軽量化。
・放熱性に優れたアルミブロックシリンダーを採用。
・CDI点火からより排ガス浄化性能の高いトランジスタ点火に変更。
・オフセットシリンダーの採用によりクランクケースやクランクシャフトを変更するなど、エンジン内部をほぼ一新。そのため「6V」や「12V」のキャブレーター車に適合するエンジンパーツはごく一部を除き、基本的に使用不可。エンジンチューンが好きなユーザーはあえてキャブ車を選ぶこともある。

エイプにも採用されたCB系の縦型エンジンにも注目
ホンダの小排気量エンジンには横型のほか、腰上を上方にレイアウトした縦型もあり。CB 系とも呼ばれる縦型エンジンは1970年(昭和45年)、横型エンジンを搭載したスポーツモデル「SS50」の後継機種となるベンリィCB90に初搭載。ライバルのヤマハ2スト50㏄ モデル「FS-1」に対抗できる4ストロークエンジンとして、横型エンジンよりもパワフルかつ頑丈に作られているのが特徴だ。
シリンダー・シリンダーヘッド・ピストンを上向きにレイアウトした縦型エンジンは、ピストンやコンロッドの重さの引力を利用することで、クランクシャフトの回転がスムーズになる。加えてオイルの循環性も良く、基本的にパワーを出しやすい=レーシングエンジンとしての資質が高い。またエンジン全体を車体の前方に搭載できるため、フロント荷重を増やせて操作性も向上しやすいのがポイントだ。
縦型エンジンは伝説のスーパースポーツモデル・ベンリィCB50/90、トレールモデルのXE50/75、レジャーモデルのR&P。また時を経て2001年以降に登場したエイプやエイプ100、XR 50 /100モタードなどに採用された。
