■ヤマハ・トリシティ125 57万2000円

現行トリシティ125の注目ポイントおさらい

・SUV的な新スタイリング
・4.2インチTFTディスプレイ
・シート下収納にLED照明
・USB Type-C充電ポート
・無加工で純正トップケースに対応

初代とは趣が異なるクロスオーバーテイストにデザイン刷新

4.2インチTFTディスプレイやスマホとの連携機能を強化したYコネクトの導入も注目すべき要素だが、26年型トリシティの最大のトピックは、シリーズで初めてスタイリングを一新したことである。

もっとも、その事実を広報資料で知った僕は、「エッ?」と思った。誕生から10年が経過した現在でも、僕は初代のスタイリングに古さを感じていなかったのだ。

とはいえ、クロスオーバーテイストを取り入れつつ(その印象に貢献するのは、従来型より持ち上がったフロントマスク、足まわりを囲うように配置された黒い樹脂製部品、左右幅が増してリッチな雰囲気になったテールカバー、ルーフレールを思わせるグラブバーなど)、NMAXから一部の灯火類を転用してヤマハらしさを強調した26年型を前にすると、やはり現代的で新しいと思う。

このスタイリングなら、これまでは二輪に興味がなかった人、四輪のSUV愛好者やオシャレ系の仕事をしている人など、新しい支持層を開拓できるのではないだろうか。

そして、そういった新規ユーザーにとって大きな安心材料になるのが、3本のタイヤと2本の前輪が滑らかに傾くLMW:リーニングマルチホイールだ。片側2本ずつのテレスコピック式フォークとパラレログラムリンクを組み合わせたフロントサスペンションの詳細は、本誌で何度も紹介しているので本記事では触れないが、今回の試乗で約5年ぶりにトリシティ125を体験した僕は、一般的な二輪車では持ち得ないLMWならではの資質に改めて感心した。

デザインのテーマは「A Lively Crossover! in my life」。真横から見た際の逆台形シルエットは兄貴分の300に通じる要素だが、125/155はよりマッシブさとパワフルさを強調している。

LMWがもたらす、安心という価値

LMWの最大の魅力は、二輪車と同様の自然な操縦感と三輪車ならではの安定感を高次元で両立していること。ちなみに23年以降のトリシティは、兄貴分の300やナイケン譲りのLMWアッカーマンジオメトリーを採用しているので、過去に僕が体験した車両と比較すると、深くバンクした際の旋回がスムーズになっている。また、ホイールベースの60mm延長(1350→1410mm)によって安定感が大幅に増していることも23年型以降の特徴である。

さらに言うなら今回の試乗で僕は、今さらながらフロント二輪ならではの乗り心地の良さや横風に対する強さ、フロントダブルディスクならではの制動力の高さを実感。いずれにしても新規ユーザーの視点で見るなら、トリシティは安心材料が盛りだくさんなのだ。

もちろん、二輪の世界にどっぷり浸かっているライダーの視点でも、トリシティの操縦安定性は十分に魅力的である。ただし半年ほど前にNMAX155で、任意のシフトダウンができるYECVTを体感した身としては、車重が重いこのモデルにこそ「あの機構が必要なのでは?」と感じなくもなかった。

なおYECVTを導入すると、おそらくトリシティ125の価格は70万円を超えるだろう。しかしヤマハの最新技術を思い切り満喫できることを考えれば、その価格は決して高くはないように思う。

LMWの最大の魅力は、二輪車と同様の自然な操縦感と三輪ならではの安定感を高次元で両立していること。60mm延長されたホイールベースやアッカーマンジオメトリーの採用により、深いバンク時の旋回もスムーズで安心感が高い。

TESTER PROFILE

中村友彦
京都生まれで岩手育ちの54歳。人生で初めて所有したスクーターは、16歳のときに先輩から1万円で購入したヤマハ・アクティブ。

モトチャンプ的、ヤマハ・トリシティ125の推しポイントおさらい

METER

4.2インチTFTディスプレイは、機能を中心としたスポーティなモードと、回転数に応じてバーが波打つエモーショナルなモードの2種類を用意。YコネクトのアプリをインストールしたスマホとBluetooth接続すれば、ターンバイターン式ナビの表示が可能になる。

FRONT POCKET

右側はリッド式ポケット、左側にはUSB Type-C電源ポートを装備。日常使いでの利便性をしっかり押さえている。

FRONT MASK

唯一無二の魅力をブラッシュアップ。先代と同様のY字ラインを維持しつつ、複数の部品が嵌合するフロントマスクは現代的な造形。ヘッドライトはNMAX用モジュールを転用し、ポジションランプは新作。

TRUNK SPACE

トランクスペース容量は23.5L。23年型以降の125で廃止されていたLED照明が、26年型で復活。グラブバー上部カバーを外せば、トップケースをボルトオンで装着できる。

ちなみにライバルは?

125ccスクーターの中でトリシティのライバルとなるのは、ホンダ・PCX、ヤマハ・NMAX、スズキ・バーグマンストリート125EXだ。それぞれ価格とキャラクターは異なるが、上質感や快適性を重視した“プレミアム志向”という点では共通している。PCXは高い完成度と充実装備、NMAXは走行性能と先進機構、バーグマンストリートは快適性と価格バランスが魅力だ。トリシティはそこにLMWという唯一無二の安心感を加えた存在である。

125cc プレミアムスクーター 価格比較

車種価格特徴
トリシティ125(Yamaha)572,000円LMW(リーニングマルチホイール)による3輪ならではの安定感が最大の特徴。4.2インチTFTやYコネクトも採用し安心感と先進性を両立。
PCX(Honda)379,500円4バルブeSP+エンジン、トラクションコントロール、スマートキーなど装備充実。完成度の高い万能型。
NMAX(Yamaha)389,400円水冷エンジン、トラクションコントロール、前後ディスクABS。走行性能を重視したスポーティモデル。
バーグマンストリート125EX(Suzuki)317,900円SEP-αエンジン、アイドリングストップ、広いフットスペースで快適性重視。価格とのバランスも良好。

比較のポイント

  • PCXは価格帯の中心的存在で、装備・質感・性能の総合力が高い。
  • NMAXは走行性能と先進性に重点を置いたモデルで、スポーティ志向が強い。
  • バーグマンストリート125EXは価格を抑えつつ快適装備を充実させたコストパフォーマンス型。
  • トリシティ125は価格ではやや上位に入るが、LMWによる安定性と安心感という“代替不可能な価値”で差別化している。

■トリシティ125 主要諸元


トリシティ125
認定型式/原動機打刻型式8BJ-SEL4J/E35DE
全長/全幅/全高1,995mm/750mm/1,215mm
シート高770mm
軸間距離1,410mm
最低地上高165mm
車両重量173kg
燃料消費率*1国土交通省届出値
定地燃費値*2
42.4km/L(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値 *345.4km/L(クラス1) 1名乗車時
原動機種類水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列単気筒
総排気量124cm3
内径×行程52.0mm×58.7mm
圧縮比11.2:1
最高出力9.0kW(12PS)/8,000r/min
最大トルク11N・m(1.1kgf・m)/6,000r/min
始動方式セルフ式
潤滑方式ウェットサンプ
エンジンオイル容量1.00L
燃料タンク容量7.2L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式フューエルインジェクション
点火方式TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式12V, 6.0Ah(10HR)/YTZ7V
1次減速比/2次減速比1.000/10.208
クラッチ形式乾式, 遠心, シュー
変速装置/変速方式Vベルト式無段変速/オートマチック
変速比2.386~0.748:無段変速
フレーム形式アンダーボーン
キャスター/トレール20°00′/68mm
タイヤサイズ(前/後)90/80-14M/C 43P(チューブレス)/130/70-13M/C 63P(チューブレス)
制動装置形式(前/後)油圧式ディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後)テレスコピック/ユニットスイング
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプLED/LED
乗車定員2名

このモデルの[環境情報]を見る他のモデルと仕様を比較する※1燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。※2定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。※3WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。


※この記事は月刊モトチャンプ2025年12月号に掲載されたものを加筆修正したものです。