KOSO(台湾)とKN企画のコラボレーション企画が立ち上がる

2011年、SS1/32mileというモトチャンプが開催していた50.29mのタイムを競うドラッグレースが人気となっていた頃、KN企画の佐々木氏の脳裏に閃いたのが2気筒エンジンのドラッグレース用スクーターだった。KN企画は台湾のKOSO社と関係が深く、KOSO社はエンジン設計や実際の製造に関するノウハウや機材も有していることから、両社のコラボレーションによる2気筒計画がスタートした。

DOHCヘッドは、しばしばその側面形状からミッキーマウスに例えられる。このマシンの呼称が「ミッキー&ミニー」なのも、おのずと伝わってくる。KOSO製φ34㎜キャブレターにはファンネルなどは使用せず、直キャブ仕様となっている。

当時は機密事項だったカップリングも初公開

エンジンのディティールは、当時KOSOから市販されていたシグナスX用のDOHCを2基、並列に並べるレイアウトとなった。その後、CADを使用してクランクケースの製図が進められた。ノーマルのクランクケースを3Dスキャナーで計測し、中間部のクランクケースを新規に設計。2個のクランクを接続するカップリングと呼ばれるパーツもゼロからの設計となった。実はカップリングは当時非公開とされていたが、この取材で初公開となっている。

左右のクランク軸が接続されている初公開(2025年8月当時)となる画像。左右のクランクはKOSO製の61㎜ロングクランクを加工して使用しており、接続部にはカップリングという無垢材から削り出しで作られた初公開のパーツが使用されている。
左右のクランクを接続するカップリングというパーツ。ネジ山が切ってある部分にはホーローセット(イモネジ)を着脱することにより、クランクのバランスを微調整できるように設計されている。

構想は佐々木氏、図面はKOSOが担当

佐々木氏の構想をもとにKOSOのデザイナーが図面に落とし込んでいく。それを佐々木氏が確認し、何度も修正を加えて図面が完成。フレームのワンオフ加工やマフラーのワンオフ製作は佐々木氏が担当。ホイールベースなどのディメンションは佐々木氏の経験に基づいて作り込まれていき、マフラーは四国のマフラーブランド、HOT LAPがワンオフで製作することになった。

HOT LAPによるワンオフのマフラーは複雑な取り回しで装着される。この撮影のために久しぶりにマフラーを装着したという佐々木氏も、「久しぶりだったので迷ってしまった」というほどだ。

ぶっつけ本番のシェイクダウンで3秒フラットを記録も、実はトラブルを抱えていた

いよいよエンジンが車体に搭載され、2012年11月に秋ヶ瀬サーキット(さいたま市)で開催されたスクーターミーティングでのSS1/32mileがシェイクダウンとなった。それ以前も同様だが、佐々木氏は「プロとしてのハンデ」というポリシーのもと、ぶっつけ本番でのアタックを選択した。1本目のタイムは3秒131。その後3秒089までタイムを削っていった。シェイクダウンにしては悪いタイムではなかったが、実は問題を抱えていた。

3秒フラットと言えばシェイクダウンにしては上出来にも思えるが、実は点火系に問題を抱えていた。単気筒用のCDIを2個、隣接して設置していたため、お互いが干渉してノイズが発生しており、点火不良によってエンジンの吹け上がりが良くない状態だったのだ。

SS1/32mileで流行っていたのが周回レース用のレインタイヤをローテーションを逆にして装着する手法。これはダンロップ製のTT72GPだが、松ヤニを塗布してバーンナウトすることから、テールカウルにはタイヤがこびりついている。また多少減ってきた時が接地面積が増えてグリップ力が増すという。

一年後、対策が施され、SS1/32mileの世界最高記録を更新

その後、この問題が解消されたのは1年半後のことだった。CDIを固定する箇所にアルミ製のボックスを設置し、2個のCDIをアルミ板で仕切り、別室に配置したのだ。この対策を施し、本来のパワーを発揮するに至った2014年4月20日、イワイサーキットで開催された大会で驚異的なタイムをマークする。SOクラスのワールドレコードのみならず、SS1/32mile全クラス通してもワールドレコードとなる2秒860を記録したのだ。

さらに驚くのは、その後もM&Mは進化を続け、2016年8月には2秒851、2016年12月のマスターズ戦(シーズン上位ランカーだけが出場できる大会)では2秒839までタイムを削っていった。

単気筒用のCDIを近くに配置したことにより、ノイズが発生し、エンジンの吹け上がりが悪くなっていたが、このアルミ製のボックスを設置したところ問題は解消。直後のSS1/32mileでは全クラス通してSS1/32mileの世界記録を叩き出すに至った。

この車両と並行して2スト2気筒スクーターも制作

ちなみに、このM&Mを進化させていく作業と並行して、2014年には2気筒の2ストエンジンを搭載したエアロックスを完成させた。多気筒スクーターの2号機だ。このエアロックスは2014年10月のSS1/32mile台湾大会でデビュー。多くの観客が見守る中、初アタックにも関わらず、2秒929という驚異的なタイムを叩き出した。

その後KN企画&KOSOのタッグは2スト3気筒に挑戦することになる

この2スト2気筒の完成を受け、2スト3気筒のBIG Bが誕生することになっていく。やはり改めて驚きなのが、このような前代未聞のワンオフの塊のようなエンジンにも関わらず、大きなトラブルもなく、シェイクダウンから通常以上の速さを発揮し、SS1/32mileではワールドレコードを含む、トップレベルに君臨してしまうことだろう。この多気筒エンジン初号機から、速さだけでない安定の信頼感も10年以上受け継がれている。

軽量化を追求したフロント周り

フロントフォークはワンオフのリジッドとし、ホイールはアルミ鍛造の削り出しによる2.5J-12サイズ。タイヤはKENDA 製の80/70-12サイズとしている。

自転車用パーツで性能と軽量さを両立!

フロントのディスクローターやキャリパーは自転車用の小型なものを採用。キャリパーは小型ながら油圧式がチョイスされている。

車体の剛性アップと適度なシナリの確保

軽量化のためにメインフレームには徹底してホールが設けられているが、その分の剛性アップと、適度なフレームのシナリをもたらすため、細めのサブフレームを2本設置。

徹底した軽量化を実施

見ての通り、メインフレームには徹底的な軽量化が施される。SS1/32mileだけでなく、レース用のマシンでも、ウエイトを積んで意図的に重量を増す作戦が取られることもあるというので、重量バランスもセッティングの重要なファクターであることがわかる。

マフラーはテールエンドのデザインも美しくクール

HOT LAP製のワンオフマフラーは、テールエンドの角度や配置も絶妙でスタイリッシュ。

自転車用の超小型ブレーキシステムを採用

フロントのマスターシリンダーとブレーキレバーも自転車用が採用され、非常にコンパクトな仕上がりとなっている。

駆動系カバーはFRP製でワンオフ制作

駆動系カバーはLIB DESIGNによるワンオフのFRP製が装着される。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年8月号のものです。

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