
トライアンフ・新型トライデント800
トライアンフから新型「トライデント800」が登場。地中海の東の端に位置するキプロス島で開催された国際メディア試乗会から、2026注目の最新ロードスターの魅力をケニー佐川がレポートする。
伝統の名が与えられた格上ロードスター


「トライデント800」はミドルクラスの“ロードスター”である。平易に言えば軽快なネイキッドバイク。トライアンフの由緒ある“TRIDENT”の名にふさわしい存在感をまとい、今年リニューアルされた660版の兄貴分として、あらたにラインナップに加わった。ただの排気量アップ版ではなく、装備も走りもきっちり格上だ。
排気量を拡大した798ccの水冷3気筒は115psを発揮。中回転の厚みから高回転の伸びまで気持ちよく回り、あのトライアンフらしい3気筒サウンドもしっかり楽しめる。軽量スチールフレームに前後SHOWA製サスを組み合わせ、車重は200kg以下。軽快で扱いやすいのに、ブレーキもラジアルキャリパー装備と手抜きはない。また、ライディングモードやコーナリングABSにトラコン、クイックシフターにクルコンまで標準装備するなど電制も充実。日本価格124万9000円が特価に思える充実した内容となっている。
トライアンフ3気筒ならではの“うねる加速感




真っ青な地中海に浮かぶキプロス島は、冬でも陽射しが優しく路面はほぼドライ。そんな南欧の大地に降り立つだけで、『今日は特別な一日になる』── そんな予感が体中を駆け巡る。英国の誇る並列3気筒を搭載した新世代ネイキッド、トライデント800と共に、ふるい市街地から高速道路、狭く曲がりくねった山岳ワインディングまで、約150kmの公道ルートが僕らを待ち受けている。
まず目を奪われたのが、その独特のフォルム。車体の真ん中に向けてぎゅっとマス集中した近未来的なシルエット。そこにクラシカルな丸型ヘッドライトが調和し、どこか英国的な落ち着いた佇まいだ。筋肉質なタンクラインと細身のリアエンドが視覚に訴えかける“走りの気配”はまさしく現代の3気筒トライデントだ。
装備車重198kg、ホイールベース1402㎜というスペックからも想像できると思うが、数値以上に取り回しは軽快。初期の沈み込みが多めの前後サスペンションより、実際に跨ってみると810㎜のシート高も低めに感じ、分厚い低速トルクによって都市部でのUターンも気負いなくこなせる。日常でもスポーツでも、どちらの顔も持つポテンシャルが、乗り始めてすぐに肌感として伝わってきた。
ざらっとした独特のウェットな響きが耳に残る、トライアンフ独特の並列3気筒エンジンが目覚める。低回転域からの力感は穏やかで、ライダーを不安にさせるような“怒涛の押し出し”ではなく、芳醇なトルクが滑らかに立ち上がってくる“上品な加速のうねり”が気持ちいい。街乗りからワインディングまで、普通に2速〜4速で事足りるワイドレンジな出力特性が持ち味で、小気味よい吹け上がりと共にワインディングへと突入。4000〜5000rpmあたりからアクセルを開けていくと、トルクの塊とともにサウンドも鼓動からはハイトーンへと変わっていく。単に“速い”ではなく、アクセル開度に素直に反応するレスポンスの良さが魅力。つまり、扱いやすいのだ。スピードトリプル1200のような猛々しさや、ストリートトリプル765の鋭さはないが、それがかえって安心。そして、弟分の660からもう一歩踏み込んだ走りがムリなくできる。
走る歓びをさりげなく日常へ溶け込ませる
欧州本土並みのペースで流れる高速道路では、やや上体を伏せ気味にして風圧に耐える必要はあるがパワー的には必要十分。軽やかなレーンチェンジからワインディングに入ると、その軽快感はさらに際立ってくる。ホイールベースは600ccスーパースポーツ並みに短めで、フロントタイヤの接地感も豊富。タイトコーナーでもサクッと寝かせて膨らむことなく曲がっていくなど基本的に運動性能が良い。柔らかめのサスペンションは乗り心地が良く、路面の変化にも柔軟に追従してくれるが、一方でペースをぐんぐん上げていくとギャップで車体が暴れることもあった。これも路面や体重に合わせてリアサスのプリロードをかけることで解消できると思う。
途中で大粒の地中海スコールにも遭遇したが、レインモードは過剰な介入をせず、いたって自然なグリップ感。というよりも、軽くリーンしながらわざとアクセルを唐突に開けてもなかなかブレイクしない。陰で支えてくれる電子制御の有難みと「ミシュラン・ロード6」の全天候ぶりに感心したのだった。これも3気筒ならではのフラットな出力特性に加えて、車体全体のバランスが良くまとまっているから。また、ブレーキは手応えが薄めだがタッチは分かりやすく、コーナー進入時の速度コントロールもしやすかった。そしてアップ&ダウン対応のクイックシフターが標準装備なのがホント幸せ。動作はスムーズで反応も過敏すぎず、旋回中でも爪先だけで自然にシフトできる気軽さは一度味わうと手放せないものだ。総じて扱いやすく、どんな路面でも不安を感じさせない安心感は、初めて訪れた異国の道でも頼もしかった。
さて、トライデント800の立ち位置をひと言でいえば、「頑張らなくても気持ちいい」。尖ったストリートファイターでもなければ、パワーでねじ伏せるタイプでもない。日常では扱いやすく、ひとたびスイッチが入ればキビキビと応えてくれる。“笑顔になれる走り”を自然体で提供してくれるマシンだ。低〜中回転域の柔らかなトルクと滑らかなシフトフィール、そしてニュートラルで軽快なハンドリング。街中のストップ&ゴーも苦にならず、ワインディングでは適度な刺激で楽しませてくれる。性能を誇示するのではなく、走る歓びをさりげなく日常へ溶け込ませる──それがトライデント800の真骨頂だ。



スタイリング
マス集中した現代的なフォルムの中に往年の英国車を思わせる丸みを取り入れた個性的なデザイン。軽量スチールフレームなど基本骨格は660をベースとするが、エンジン性能に合わせて足まわりを強化。タンクやシート、アップマフラーやフライスクリーン、ベリーパンも専用装備だ。
足つきチェック(ライダー身長179cm・体重73kg)
広めのアップハンドルとストリート向けのステップ位置により、上体が起きたリラックスした構えになる。シート高は810㎜と低めで、3気筒ならではのスリムな車体に加え、初期が沈み込む前後サスペンションにより足着きも良好。


ディテール解説










主要諸元
ボディサイズ: 全長×全幅×全高=-×-×1088mm
ホイールベース: 約1402mm
シート:高 810mm
車両重量: 約198kg
エンジン: 水冷並列3気筒 DOHC 12バルブ排気量798cc
トランスミッション: 6速リターン
最高出力: 115 PS / 84.6 kW @ 10,750 rpm
最大トルク: 84 Nm @ 8,500 rpm
燃料タンク容量: 14L
フレーム: チューブラースチール ペリメーターフレーム
サスペンション(トラベル量):
フロント:倒立式テレスコピック(約120mm)
リア:リンク式モノショック(約130mm)
ブレーキ:
F:φ310mmダブルディスク+4Pラジアルキャリパー
R:φ220㎜シングルディスク+1Pキャリパー
コーナリングABS標準装着
タイヤ: フロント:120/70-17、リア:180/55-17
燃費: 4.7 l/100km
価格: 1,249,000 円~(消費税込み)







