Maserati MC Pura Cielo / Maserati GT2 Stradale

試乗の舞台は袖ヶ浦フォレストレースウェイ

デビューはGT2ストラダーレ(左)が2024年8月、MCプーラ(右)が2025年7月。両車のフロントバンパー形状はよく似ており、GT2ストラダーレはMCプーラのスタイリング、即ちMC20のマイナーチェンジ要素を先行して取り入れていたことがわかる。
デビューはGT2ストラダーレ(左)が2024年8月、MCプーラ(右)が2025年7月。両車のフロントバンパー形状はよく似ており、GT2ストラダーレはMCプーラのスタイリング、即ちMC20のマイナーチェンジ要素を先行して取り入れていたことがわかる。

「MCプーラ」とのファーストコンタクトがこんなカタチで実現するとは思いもよらなかった。

マセラティが久しぶりに世に送り出したミッドシップ・スーパースポーツの「MC20」と、そのコンバーチブル版である「MC20チェロ」には、これまで国内外の様々なロケーションで触れてきたが、MC20のフェイスリフト版として昨年7月にデビューしたMCプーラは、まだステアリングを握ったことがなかった。

今回は、その待望のチャンスが巡ってきたわけだ。おまけに、公道試乗をすっ飛ばしていきなりサーキットで操れるというのだから嬉しくないはずがない。

しかも、会場は袖ヶ浦フォレストレースウェイだという。全長は2.5km弱とどちらかといえばコンパクトなサーキットだが、アップダウンに富んでいるうえに小気味いい中速コーナーを複数備えたこのコースは、公道では許されないレベルのコーナリングを試すにはうってつけの舞台。実は、個人的に走り慣れたコースであることも嬉しいポイントのひとつだった。

両車ともに3.0リッターV6ツインターボの「ネットゥーノ」ユニットを積む。最大トルク720Nmは両車共通だが、最高出力はMCプーラの630PSに対し、GT2ストラダーレは640PSへと引き上げられている。
両車ともに3.0リッターV6ツインターボの「ネットゥーノ」ユニットを積む。最大トルク720Nmは両車共通だが、最高出力はMCプーラの630PSに対し、GT2ストラダーレは640PSへと引き上げられている。

さらに、今回はMC20のサーキットバージョンというべき「GT2ストラダーレ」と比較試乗できるというオマケつき。私自身は、スペインのアスカリサーキットで行われたGT2ストラダーレの国際試乗会に参加して、そのキャラクターは十二分に理解しているつもりなので、MCプーラを評価する際のリファレンスとしてはうってつけの存在。そこで、まずはGT2ストラダーレの感触を再確認する気持ちで、そのコクピットに飛び乗った。

足まわりは異例なほどしなやか

マセラティのミッドシップスーパースポーツ、MC20がマイナーチェンジ。新たに「MCプーラ」として登場した。またサーキット専用モデル=マセラティGT2のロードリーガル版「GT2ストラダーレ」も時を同じくして日本上陸。袖ヶ浦フォレストレースウェイで比較試乗を試みた。そこで明らかになった両車のキャラクターとは──。
スワンネック型の大型リヤスポイラーを備えるマセラティ「GT2ストラダーレ」。

試乗車はサーキット走行向きのミシュラン・パイロットスポーツカップ2Rを履いていた影響もあって、ステアリングを通じて得られる感触はガッシリとしていて安心感が強い。トレッド剛性やケース剛性が高いタイヤで路面を確実に捉えている様子がダイレクトに伝わってくる、そんな印象だったのだ。

にもかかわらず、ハンドリングがまるで神経質に思えないのは、GT2ストラダーレのサスペンションがその名からはちょっと想像できないくらいしなやかだから。これは公道での快適性をもたらすだけでなく、サーキットでの扱い易さを確保するという面でも極めて有効なセッティングである。そういったことはスペインでの国際試乗会でも把握していたが、おかげでクルマの前提条件を改めてチェックする必要がなく、ただちに全開テストに入れた。走行時間が限られたサーキット試乗では、これは実にありがたいことだ。

まずはサスペンションがもっともソフトになるGTモードで走り始めると、左右に素早く切り返すセクションではクルマがふわっと浮き上がるような挙動が看取された。そこでスポーツ、コルサと順に切り替えていくと、当然のことながらコルサがもっともボディが落ち着いて安心してコーナーを攻められることがわかった。もっとも、本来コルサには4から1までのモードが用意されていて、順にスタビリティコントロールの効きが弱くなるのだが、そこまで子細に観察する時間はない。やむなく、スタビリティコントロールが若干残るコルサ4モードで走行を続けることにする。

それでも、走り始めた当初に認められた優れたタイヤのグリップ感やスタビリティ感が失われることは基本的になかった。グリップ感が薄くなる兆候はときおり認められたが、よほど無茶なことをしない限り、このサーキットでタイヤの限界を見極めるのは難しそう。一方で、高速セクションでも挙動をまったく乱さない点には感銘を受けた。これには、独立したリヤウイングなどを備えるGT2ストラダーレのエアロダイナミクスが大きく貢献しているはずだ。

ハイブリッドじゃないから、軽い!

マセラティのミッドシップスーパースポーツ、MC20がマイナーチェンジ。新たに「MCプーラ」として登場した。またサーキット専用モデル=マセラティGT2のロードリーガル版「GT2ストラダーレ」も時を同じくして日本上陸。袖ヶ浦フォレストレースウェイで比較試乗を試みた。そこで明らかになった両車のキャラクターとは──。
「MCプーラ」はMC20のマイナーチェンジ版。フロントスポイラーのデザインやリヤのディフューザー形状がアップデートされている。

続いてブリヂストンのポテンザスポーツを履くMCプーラに乗り換える。前述のとおり、MCプーラはMC20のフェイスリフト版で、フロントのチンスポイラーやリヤのディフューザーまわりの造形が見直されている。その印象をひと言でいえば、「よりスッキリとしていて現代的」となるだろう。まさにプーラ(英語でピュアの意味)の名にぴったりだ。

ただし、ハードウェア面は基本的にMC20と共通のようで、特徴的な3.0リッターV6ネットゥーノエンジンの最高出力も630PSで変わらない。足まわりなどに関しても、今回のマイナーチェンジで見直しが図られたなどという記述はプレスリリースからは見つけられなかった。

そんなMCプーラに鞭を入れてみたところ、GT2ストラダーレほどのスタビリティ感は伝わってこない。コーナリング中もビシッとした姿勢を崩さないGT2ストラダーレとは異なり、どこか落ち着かない挙動を示すのだ。これはGTモードだけでなく、スポーツ、コルサ(MCプーラにはGT2ストラダーレと違って4段階切り替えがなく、コルサモード1種だけが用意される)と切り替えていっても基本的に同じ。むろん、コルサの方がぐっと落ち着きは増すものの、GT2ストラダーレほどの安心感は認められない。まあ、これは乗る順番が悪かったともいえるし、サーキットが本籍地のGT2ストラダーレと比べるのはフェアではないともいえるだろう。

ただし、MC20から受け継いだ素性のよさは、はっきりと確認できた。それらは、カーボンモノコックが生み出すボディ剛性が圧倒的に高いことであり、ドライサンプ方式のネットゥーノエンジンゆえの重心の低さであり、コンパクトなV6エンジンをミッドシップすることで得た慣性モーメントの小ささなどと説明できる。考えてもみて欲しい。このクラスのミッドシップスーパースポーツで、ハイブリッドシステムを持たないV6エンジン搭載モデルはMCプーラをおいてほかにない。その軽快感は、実際の車重以上にライバルを引き離しているようにも思えるほどだった。

ラゲッジルームはフロントだけでなくリヤにも用意される。容量はフロントが50リットル、リヤが100リットル。この数値はクーペもオープンも変わらない。
ラゲッジルームはフロントだけでなくリヤにも用意される。容量はフロントが50リットル、リヤが100リットル。

そんなことを感じながらMCプーラを走らせていたところ、意外なことに気づいた。全体的なグリップ感が薄いことを逆手にとって、コーナーでは豪快なパワーオーバーステアに持ち込めることがわかったのだ。しかも、スライド中の接地感が良好なうえ、LSDの効果でスロットルペダルを踏み続けている間はずっとオーバーステアの態勢を保てる。これは私にとって大きな発見だった。

今回、MCプーラで公道を走るチャンスは得られなかったが、前述したとおり、サスペンションセッティングは基本的にMC20のころから変わっていないように思えた。仮にそれが事実だとすれば、一般道での快適性は、よりスパルタンなGT2ストラダーレだけでなく、同クラスのミッドシップスポーツをも確実に1ランク凌ぐはず。また、高速道路やワインディングロードで決して神経質な操縦性を示さない懐の深いハンドリングも、MC20から引き継がれていることだろう。

GT2ストラダーレでも日常使用は十分可能

マセラティのミッドシップスーパースポーツ、MC20がマイナーチェンジ。新たに「MCプーラ」として登場した。またサーキット専用モデル=マセラティGT2のロードリーガル版「GT2ストラダーレ」も時を同じくして日本上陸。袖ヶ浦フォレストレースウェイで比較試乗を試みた。そこで明らかになった両車のキャラクターとは──。
ライバルのスーパースポーツたちに比べ、高い快適性と実用性を持つ。それがGT2ストラダーレとMCプーラの特徴と言えるだろう。

では、MCプーラとGT2ストラダーレのどちらを選ぶべきか。

サーキット走行の機会が多いドライバー、もしくは日々のドライビングでもサーキット走行の雰囲気を満喫したいドライバーには間違いなくGT2ストラダーレがお勧めだ。そのレーシーなモデル名とは裏腹に、公道での快適性が十分に確保されていることは私自身、スペインで確認済み。だから、手元に置いておくスーパースポーツカーが仮にGT2ストラダーレ1台だったとしても不自由はしないだろう。

とはいえ、公道走行が中心となる多くのドライバーにはMCプーラを積極的にお勧めしたい。このクラスの平均を大きく上回るしなやかな乗り心地を味わえることが、その最大の理由。独立したウイングを持たないクリーンなデザインも私の好みだ。

そう、MCプーラの魅力を語るうえで、時間をかけてていねいに磨き上げられたその美しいスタイリングについて触れないわけにはいかない。

これはチーフデザイナーであるクラウス・ブッセが描き出したものだが、あるとき、彼のデザインを私が「シンプル」と表現したところ、ブッセに「シンプルよりもピュアという言葉が相応しいと考えます」と指摘されたことがある。ちなみにプーラがピュアを意味することは前述のとおり。つまり、MCプーラはブッセのエッセンスを凝縮した作品といって間違いないのである。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/佐藤亮太(Ryota SATO)、マセラティ・ジャパン
MAGAZINE/GENROQ 2026年4月号

SPECIFICATION

マセラティGT2ストラダーレ

ボディサイズ:全長4670 全幅1965 全高1220mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1620kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
最高出力:471kW(640PS)/7500rpm
最大トルク:720Nm(73.5kgm)/3000-5500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35ZR20 後305/30ZR20
車両本体価格:4394万円

マセラティMCプーラ・チェロ

ボディサイズ:全長4667 全幅1965 全高1214mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1560kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
最高出力:463kW(630PS)/7500rpm
最大トルク:720Nm(73.5kgm)/3000-5500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35ZR20 後305/30ZR20
車両本体価格:3545万円

【問い合わせ】
マセラティコールセンター
TEL 0120-965-120
https://www.maserati.co.jp/

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