セローはなぜ35年も売れ続けたのか

世の中にはさまざまなトレールバイクが存在するけれど、セローのように幅広い層のライダーから支持を集め、30年以上にわたって堅実な熟成を行ってきたモデルは、ほかにないのではないだろうか。

もっとも、初代がデビューした1985年を振り返ると、セローは異端児だったのである。何と言っても当時はレーサーレプリカ全盛期で、オフロードの世界でもスペック至上主義がまかり通っていたのだから。そんな中で、“マウンテントレール”というキャッチフレーズを掲げて登場したセローは、ルックスが地味だったうえに、スペックに突出した要素がなかったため、当初は一部のマニアしか注目しなかったのだが……。

未舗装路における驚異的な扱いやすさと抜群の耐久性、そして街乗りからロングツーリングまで多種多様な用途に対応できる万能性が知れ渡るにつれて、セローの人気はジワジワと高まっていった。その状況に手応えを感じたヤマハは、数年に1度のペースで仕様変更を行いながら、セローを大切に育ててきたのだ。

そんなセローの系譜は、1985〜2004年の225時代、2005年以降の250時代に大別できる。225時代には4度の仕様変更が行われ、250にはキャブレター仕様とインジェクション仕様が存在するので、厳密に言うならこれまでに8つの世代が販売されたことになる。

ツーリングセロー・2016年モデル(55万9440円※発売当時価格)

2018年に復活した第8世代セロー

第7世代のセローは排出ガス規制への対応が難しくなったため2017年8月に一度生産を終了。しかし1年のインターバルを経て、2018年8月31日から規制に対応した第8世代のセロー250が発売された。

基本的には第7世代の構成を踏襲する第8世代のセローだが、インジェクションはO₂フィードバック制御を取り入れた新世代となり、燃料タンクには蒸発したガソリンの外気排出を低減するキャニスターを導入。燃料タンク容量は、第7世代より0.3ℓ少ない9.3ℓとなった。

もっとも開発陣は、単なる排出ガス規制対応モデルにはしたくなかったようで、パワーユニット各部の見直しを行った結果、最高出力は18→20psに、最大トルクは1.9→2.1kgmに、定地燃費は40→48.4km/ℓへと向上している。

一方の車体では、LEDテールランプとロングリヤフェンダーを採用。これによりカタログの車重は、第7世代より3kg重い133kgとなった。

第8世代でちょっと残念だったのは、第7世代に対して価格が5万7240円上がったことだろう。とはいえ前述した変更点を考えれば、この価格上昇はやむを得ないものだった。

セロー250・2018年モデル(56万4840円※発売当時価格)
セロー250・2018年モデル

ファイナルエディションで歴史に一区切り

そして2020年には、生産終了を記念したファイナルエディションが登場。外観は初代セローをイメージしたグリーン×ホワイトのグラフィックを採用した特別仕様となり、長年愛され続けてきたトレールの歴史に一区切りが付けられた。

軽さと扱いやすさを武器に“山を楽しむバイク”という文化を築いたセロー。1985年の登場から約35年、その存在は今も多くのライダーの記憶に残り続けている。

セロー FINAL EDITION(58万8500円※2020年発売当時価格)

中古価格が落ちない理由

現在でもセローの人気は高く、中古市場では状態の良い車両が高値で取引されるケースも少なくない。実際に中古車サイトを見ると、2010年代のセロー250でも40万〜50万円台の価格が付く車両が多い。

例えばバイク王の在庫でも、2014〜2019年モデルのセロー250が40万円台後半〜50万円台で販売されており、生産終了から時間が経った現在でも価値が大きく落ちていないことが分かる。

2026年3月現在、バイク王で販売されているセローの中古車は29台。※成約により、なくなっている場合あり。

セローの代わりになるバイクはあるのか? ライバルはシェルパ?

近年は林道ツーリングやキャンプツーリングの人気が高まったことで、「セローの代わりになるバイク」を探す声も増えている。

同じ軽量トレールというカテゴリーで見るなら、2024年12月に登場したカワサキ・KLX230シェルパやホンダ・CRF250Lといったモデルがまず候補に挙がるだろう。どちらも本格的なオフロード走行に対応した車体構成を持つトレールバイクで、現在の市場ではセローにもっとも近いカテゴリーに位置している。

一方で、山遊びという視点ではホンダ・CT125ハンターカブの人気も高い。低速トルクを生かしたトレッキング性能や実用性の高さは魅力だが、サスペンションストロークやホイールサイズなどは本格的なオフロード走行を前提とした設計ではない。

また、軽量オフロードという意味ではヤマハ・WR125Rのようなモデルも存在するが、21/18インチのフルサイズホイールを備えたスポーティな性格で、セローのような低いシート高や穏やかなエンジン特性とはキャラクターが異なる。

そもそもセローは、速さを追求するトレールというよりも、山を楽しむための“トレッキングバイク”という独自のポジションを築いたモデルだった。

そして現在、そのポジションにもっとも近い存在と言えるのがカワサキ・KLX230シェルパだろう。軽量トレールというカテゴリーに再び注目を集める存在として、その登場は歓迎すべきニュースだった。

とはいえ、街乗りから林道ツーリングまでを自然にこなし、初心者からベテランまで幅広く楽しめるセローの絶妙なバランスはやはり特別なもの。

シェルパの登場を喜びつつも、「やっぱりセローが欲しい」と思ってしまうライダーが多いのも、無理はない話なのである。

セローは復活するのか?

現在のところ、ヤマハからセローの後継モデルや復活に関する公式発表はない。排出ガス規制の強化によって、シンプルで軽量なトレールバイクを新たに開発するハードルは高くなっているのが現状だ。

それでも林道ツーリングやアウトドア人気の高まりによって、「セローのようなバイク」を求める声は今も多い。もしヤマハが再び軽量トレールをラインナップすることがあれば、その存在は大きな注目を集めることになるだろう。

それでも今、セローが欲しくなる

しかし、街乗りから林道ツーリングまでを自然にこなし、初心者からベテランまで幅広く楽しめるセローのキャラクターは唯一無二だ。

だからこそ今でも、「やっぱりセローが欲しい」と思ってしまうライダーが後を絶たないのである。山に行きたくなったとき、真っ先に思い浮かぶバイクだからだ。

ツーリングセロー・2016年モデル。足周りには前21インチ、後18インチの軽量アルミリムに低騒音タイヤを採用。オフでの走破性とオンでのグリップ力を両立している。
ツーリングセロー・2016年モデル
ツーリングセロー・2016年モデルのメーター。液晶パネルはスピード、オド、トリップ、時計という構成で、大きくて押しやすいスイッチも実用的。
ツーリングセロー・2016年モデルの18インチリヤタイヤ。ホイールはチューブレスのスポークタイプなのでパンクしても補修がラク。
ツーリングセロー・2016年モデルの燃料タンクは9.6L。コンパクトな設計は誰でもニーグリップしやすい。
ツーリングセロー・2016年モデルのエンジンは空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒249cc(5速リターン)。低地燃費は40km/L。
ツーリングセロー・2016年モデル。がっちりしたフロントガードにスクリーンやナックルガードで快適性を高めている。
ツーリングセロー・2016年モデルのリヤキャリ。頑丈なステー×大型キャリアでどんな荷物もOK。シートともツライチだから載せやすい。

セロー250ファイナルエディションの主要スペックは以下の通り

車名・型式ヤマハ・2BK-DG31J
全長2,100mm
全幅805mm
全高1,160mm
ホイールベース1,360mm
最低地上高285mm
シート高830mm
車両重量133kg
乗車定員2人
最小回転半径1.9m
エンジン型式G3J9E
エンジン種類空冷4ストロークOHC2バルブ単気筒
総排気量249cc
ボア×ストローク74.0×58.0mm
圧縮比9.7:1
最高出力14kW[20ps]/7,500rpm
最大トルク20N・m[2.1kgf・m]/6,000rpm
燃料供給装置フューエルインジェクション
始動方式セルフ式
点火方式TCI(トランジスタ式)
潤滑方式ウェットサンプ
燃料タンク容量9.3L
燃費(定地)48.4km/L(60km/h)〈2名乗車時〉
WMTCモード38.7km/L(クラス2-1)〈1名乗車時〉
クラッチ湿式多板
変速機常時噛合式5段リターン
1速2.846
2速1.812
3速1.318
4速1.035
5速0.821
減速比(1次/2次)3.083 / 3.200
キャスター角26°40′
トレール量105mm
フロントサスペンションテレスコピック式(正立)
リヤサスペンションスイングアーム式
フロントタイヤ2.75-21 45P
リヤタイヤ120/80-18M/C 62P
フロントブレーキ油圧式ディスク
リヤブレーキ油圧式ディスク
フレームセミダブルクレードル
カラーホワイト/グリーン、ホワイト/レッド
価格58万8,500円(税込)
本体価格53万5,000円

※この記事は月刊モトチャンプに掲載した記事を基に加筆修正したものです。