なぜ“グリファス”から“X”に戻ったのか……
今回のモデルで見逃せないのが、車名が再び「シグナスX」に戻された点だ。
先代は“グリファス”というサブネームが与えられていたが、新型ではあえてそれを外し、原点ともいえる名称へ回帰している。
台湾での発表時、台湾ヤマハの総経理(社長)である石村良太氏は、冒頭の挨拶でこう語っている。
「私は台湾ヤマハのテコ入れのためにここに来た」
この言葉からも伝わってくるのは、今回のモデルにかける並々ならぬ覚悟だ。
実際、新型ではフレームをはじめ20箇所以上に及ぶ改良が施され、その多くがユーザーの声を反映した内容となっている。単なるリニューアルではなく、“もう一度シグナスという存在を見直す”という強い意思が貫かれている。
その積み重ねの先にあるのが、この「シグナスX」という名前なのだろう。

これは正常進化ではない
最初に言っておきたい。
今回のシグナスXは、いわゆる正常進化ではない。
フレーム、駆動系、ブレーキ、装備——すべてに手が入った“再構築”に近いモデルだ。軽快さという従来の持ち味を残しながら、走りの質を一段引き上げている。この方向性こそが、今回の進化の本質だと感じた。
台湾仕様の試乗で見えた走りの質の変化
モトチャンプはすでに新型シグナスXに試乗している。
その台湾仕様の試乗でまず印象的だったのが、フロント周りの安心感だ。従来モデルの軽快なハンドリングはそのままに、ブレーキング時の接地感が明らかに向上している。
新開発のDL8フレームによって縦剛性は約19%向上。減速から旋回にかけての動きがスムーズで、これまでの“ヒラヒラ系”から一歩進み、「しっかり曲がれるシグナス」へと変化した印象だ。軽さと安定感がきちんと両立されている。
駆動系の味付けで加速のキャラクターが変わった
今回の試乗は台湾仕様でのものになるが、スペック上の最高出力は12.2PSと大きな変化はない。それでも実際に走らせてみると、体感フィーリングには明確な違いがあった。ウエイトローラーは11gから9gへ軽量化され、エンジン回転の立ち上がりは鋭く、さらにハイスロットル化されたアクセル特性によってスロットル操作に対する反応もかなりダイレクトになっている。
その結果、発進から中速域にかけての加速感は力強く、スペック以上に速く感じる仕上がりだ。ただし、日本仕様が同様のチューニングになるかは現時点では未公表。今後の正式発表を待ちたいところだ。
ブレーキの進化が走り全体を底上げしている
試乗で特にわかりやすかった進化がブレーキだ。フロントディスクはφ245mmからφ267mmへ大型化され、キャリパーも強化。制動力がしっかり底上げされている。
さらにレバー比の見直しにより操作力も軽減されており、効きの強さと扱いやすさが両立されている。フレーム剛性の向上と相まって、“止まれる安心感”が走り全体の質を引き上げているのは間違いない。

足周りはしなやかで扱いやすい方向へ
サスペンションはややソフト寄りのセッティング。そのぶん路面追従性が高く、街乗りでの快適性は確実に向上している。とはいえフレームがしっかりしているため、単なる柔らかさではなく芯のある乗り味に仕上がっているのがポイントだ。
リアショックには調整機構も備わり、用途や好みに応じたセッティング変更が可能。日常使いからスポーティな走りまで幅広く対応できる懐の深さを感じる。
国内仕様の実車で見えた完成度の高さ
モーターサイクルショー2026で実車を改めて確認すると、試乗で感じた印象はより確かなものになる。ディスク径の拡大や足まわりのボリューム感、LED灯火類の作り込みなど、細部まで抜かりがない。
単なるスポーティなデザインに留まらず、「中身までしっかり作り込まれている」ことが伝わってくる仕上がりだ。試乗で得た感触と視覚的な情報がここで一致し、完成度の高さが裏付けられた。

あらたなる伝説を作れるか!?
新型シグナスXは、走りの質、装備、実用性のすべてが底上げされたモデルだ。
そして国内での台湾仕様試乗とモーターサイクルショー2026を通して見えてきたのは、これが単なる後継ではないという事実。軽快さだけを武器にしてきた従来のイメージから一歩踏み込み、“もっと走りを楽しめる125スクーター”へと進化している。
125ccスクーターの中で、ここまで走りに踏み込んだモデルはそう多くない。新型シグナスXは、その基準を引き上げる存在になりそうだ。
ディテールチェック







【モトチャンプ】