Maserati Grecale Trofeo

Porsche Macan Turbo

同じクラスのSUVながら真逆のパワートレインを積む

もともとグレカーレはマカンの対抗馬となることを運命づけられて誕生したモデルである。ともに、ラグジュアリー・スポーツSUVとでも呼びたくなるユニークなカテゴリーに属しているが、どちらかといえばグランドツーリングが得意で、コーナリングにしてもハイスピード領域のスタビリティに強みがあったマカンに対し、グレカーレは長距離ドライブも難なくこなす一方で、ワインディングロードではその軽快なハンドリングゆえにタイトコーナーも痛快に駆け抜けられるモデルだった。その意味でいえば、グレカーレもマカンも、ブランドのエッセンスを見事に体現したミドルクラスSUVだったことになる。

ところが、新型マカンはBEVへと移行。内燃エンジン搭載の従来型も併売されているとはいえ、今も純内燃エンジンモデルのみをラインナップするグレカーレとは別の道を歩み始めたのである。

今回は、それぞれのトップグレードであるグレカーレ・トロフェオとマカンターボ・エレクトリックを乗り比べたのだが、いずれもブランドの個性が引き続き感じられる一方で、それぞれのパワートレインにマッチしたキャラクターに仕上げられていることも確認できたので、ここでレポートしたい。

未来感の演出に余念がないマカン

バッテリーEV(BEV)に生まれ変わったマカンのトップモデル。プラットフォームは800Vアーキテクチャーを有する「PPE」で、アウディと共同開発された。ドライブモードは「ノーマル」「スポーツ」「スポーツプラス」「オフロード」の4種だ。インテリアは近年のポルシェ流儀に従うもので、デジタル化が強く推し進められているのが特徴。5人乗車時のラゲッジルーム容量は480リットルだが、EVだけにフロントにも84リットルのスペースが別途用意される。
バッテリーEV(BEV)に生まれ変わったマカンのトップモデル。プラットフォームは800Vアーキテクチャーを有する「PPE」で、アウディと共同開発された。

まずはマカンから。ローンチコントロールを起動した際には最大で639PSものパワーを発揮し、0-100km/h加速を3.3秒でこなすハイパフォーマンスSUVゆえ、乗り心地がそれなりにソリッドなのはやむを得ないところだが、その「硬さの質」が内燃エンジン時代のポルシェとはいくぶん異なっているように思える。

これはあくまでも私の印象で客観的な裏付けはないものの、サスペンションはダンパーの減衰力よりもスプリングレートを高めたように感じられた。たとえば段差を乗り越えたとき、最初に足まわりがすっと動き出してからそれがジワリと抑え込まれる従来の感触から、まずは強いショックを受けてからすっと収まっていくような印象だったのだ。いずれにせよ、ボディや足まわりの剛性感は高く、いやな振動も残らないのでさほど不快ではないものの、「ああ、ポルシェも変わってきたなあ」と思わせる出来事だった。

パワートレインの印象も異なる。静かで滑らかな加速感が味わえることはいうまでもないが、大きくスロットルペダルを踏み込むと、まずは加速Gが急峻に立ち上がり、時間とともにこれが落ち着いていくように感じられる。つまり、マカン・エレクトリックは電気モーターの特性をそのまま反映させたような加速フィーリングだったのである。

一方でハンドリングはポルシェらしくスタビリティ重視。高速コーナーでの安定感はSUVとは思えず、もっと背の低いスポーツカー並みに優れていたが、ステアリングから得られるインフォメーションは意外にも薄めで、大きく曲がり込むコーナーでは、途中で切り足したり戻したりといった操作をしなければならなくなることが何度かあった。

新技術をして旧来の味わいを守るグレカーレ

試乗車はトップグレードの「トロフェオ」で、エアサスペンションが標準装備。走行モードは「コンフォート」「GT」「スポーツ」「コルサ」「オフロード」が用意されるが、エアサスは選択されたモードに応じて-15mm~+30mmの間で車高を自動的に調整する。オーダーメイドプログラム「フォーリセリエ」によって仕立てられたインテリアはイタリア車ならではの艶を感じさせるもの。5人乗車時のラゲッジルーム容量は570リットル。
試乗車はトップグレードの「トロフェオ」で、エアサスペンションが標準装備される。

そんな、電動化を果たしていかにも新時代に突入したように思えるマカン・エレクトリックに比べると、グレカーレ・トロフェオはわれわれが長年親しんできた内燃エンジン車らしい味わいに溢れていた。

その足まわりは、ハーシュネスがきつかった初期型に比べると格段にマイルドになったものの、相変わらず強力なダンパーで締め上げられていることがはっきりと感じられるセッティング。ソリッドな乗り心地という意味ではマカン・エレクトリックと共通しているけれど、「スプリング優勢」なマカンに対して、グレカーレは「ダンパー優勢」なように感じられる。またボディ周りの剛性感ではマカンのそれが強く印象に残るけれど、私たちに馴染みのある「スポーツカーらしい乗り味」という面ではグレカーレにより共感を覚える。

加速のスタイルもまったく同様で、グレカーレはエンジン回転数が高まるにつれて加速Gも高まっていく「内燃エンジンらしい」加速フィーリングが味わえる。今回、改めて乗ってみて、この方がよりコントロールしやすく、肉体的にも違和感を覚えにくいように思えた。

ハンドリングの仕上がりもマセラティらしく、中立付近で過敏さを感じさせない一方で、絶妙なリニアリティによりタイトコーナーからロングコーナーまで一発の操舵で狙ったラインをトレースできる。このえも言われぬ一体感こそが、グレカーレ最大の魅力といっても構わない。

しかも、2000rpm以下で籠もりがちだったエンジン音が、5000rpm以上では高らかに鳴り響くファンファーレのような快音を発する。その官能性に「ああ、やっぱりこれだよなあ」と胸を撫で下ろすスポーツカーファンは少なくないだろう。

異なる姿勢でスポーツSUVの魅力を引き出している

一方で、マカン・エレクトリックに「スポーツカーの未来像」を見いだす先進的なファンが存在することも理解できる。内外装のデザインもこうしたキャラクターとよくマッチしていて、まとまりのいいエクステリアはとにかくクール。理性的もしくは無機質と表現できるインテリアは、ある種の未来感を映し出しているとも解釈できる。

これに対しグレカーレは、伝統的な手法で情熱的な世界観を表現したデザインといえるだろう。とりわけパーソナライゼーション・プログラムの「フォーリセリエ」で仕立てられたインテリアは、素材もカラーも粋で妖艶。イタリア人らしいセンスに溢れている。

マセラティとポルシェはともにモータースポーツ志向の強いブランドであり、その精神はプロダクトにもよく反映されている。だが、面白いことに人気のDセグメントSUVでは真逆のアプローチを採る。純エンジン車とEV、果たしてそれぞれのスポーツ性やブランドアイデンティティはどのあたりに感じられるのだろう。

2台は異なる思想でラグジュアリー・スポーツSUVの魅力を引き出しているが、どちらもすべてが完璧なわけではなく、わずかな“綻び”が見受けられるのも事実。そんなとき、我々が長く経験してきた“綻び”のほうがより自然に受け入れやすいようにも思えるが、いかがだろうか。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2026年5月号

SPECIFICATIONS

マセラティ・グレカーレ・トロフェオ

ボディサイズ:全長4860 全幅1980 全高1660mm
ホイールベース:2900mm
車両重量:2030kg
エンジン/モーター:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
最高出力:390kW(530PS)/6500rpm
最大トルク:620Nm(63.3kgm)/2750rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/40R21 後295/35R21
0-100km/h加速:3.8秒
最高速度:285km/h
車両本体価格:1713万円

ポルシェ・マカンターボ

ボディサイズ:全長4784 全幅1938 全高1621mm
ホイールベース:2893mm
車両重量:2420kg
エンジン/モーター:永久磁石同期電動機(前/後)
総排気量:──
最高出力:470kW(639PS)
最大トルク:1130Nm(115.3kgm)
トランスミッション:1速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後5リンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前235/55R20 後285/45R20
0-100km/h加速:3.3秒
最高速度:260km/h
車両本体価格:1541万円

【問い合わせ】
マセラティコールセンター
TEL 0120-965-120
https://www.maserati.co.jp/

ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

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