クロスカブを“スポーク×チューブレス”に戻すという提案

現行のクロスカブ110やスーパーカブ110はキャストホイールを採用し、チューブレスが前提となっている。扱いやすさという面では優れているが、クロスカブらしいアウトドア感やカスタム的な見た目という意味では、スポークホイールを望む声も根強い。

しかし従来のスポークホイールはチューブタイヤが基本。チューブレスだった純正から“チューブ化する”という逆転が起きてしまい、ここがユーザーにとっての悩みどころだった。

そこでTGRが用意したのが、VMXチューブレスホイール(TYPE-VMX)。スポークでありながらチューブレスタイヤに対応し、「見た目はスポーク」「使い勝手はチューブレス」という理想的なバランスを実現する。

今回話を聞いたテクニクス代表の井上氏も、「スポークにしたいという声は多いが、チューブになるのはダウングレードに感じる。その課題を解決したかった」と開発の狙いを語る。

クロスカブ110(22〜25年式)対応で、前後セット9万9000円。サイズは前後とも1.85×17インチ、2026年6月デリバリー予定。

さらにリム幅は純正の1.60から1.85へとワイド化。接地面積が広がることで安定感やグリップ力が向上し、見た目だけでなく走りにも確実に効いてくるアップデートとなっている。

TGR VMXチューブレスホイール装着状態。スポークながらチューブレス構造を採用し、見た目と実用性を両立する。

リヤショックは“気持ちよさ”に振ったハイスペック

リヤに装着されているのはTEC-7.1 パフォーマンスショック。価格は10万7800円(税込)。別体リザーバータンクとゴールドのアジャスターが目を引くこのユニットは、クロスカブには明らかにオーバースペックな構成だ。

だが、その中身は単なる高性能ではない。ツインチューブ構造(オーリンズTTXと同様の思想)を採用することで、初期作動のスムーズさを徹底的に追求。さらにスプリングプリロード、リバウンド、コンプレッションの調整が可能なフルアジャスタブル仕様となっている。

開発側の狙いは明確だ。「ツインチューブにすることで初期の動きがすごく優しくなる。高性能ショックは渋くなりがちだが、それを解消できる」という。

速さではなく“気持ちよさ”に効くサスペンション。クロスカブのキャラクターを壊すことなく、走りの質を底上げする方向のチューニングだ。

リヤにはTEC-7.1パフォーマンスショックを装着。別体リザーバータンク付きの本格仕様で、クロスカブとは思えない存在感だ。

フロントは剛性も作動も別次元へ

フロントに装着されていたのはTGRフロントフォークキット(参考出品)。見た瞬間にノーマルとの違いがわかるほど、構造からして別物だ。

クロスカブの純正フロントは片持ち構造で支えられており、ブレーキ時に“ぐにゃっとする”という声も多い。それに対しこのキットは上下で支える三又構造を採用し、剛性を大幅に向上。さらに内部にはツインチューブカートリッジを組み込み、作動性能も引き上げている。

実際にテストした印象としても、「ブレーキング時の安定感や路面追従性はかなり良くなった。とりあえず付けて走ってみたら、めちゃくちゃ良かった」という手応えが得られている。

さらにスポークホイールとの相乗効果も見逃せない。重量増によるネガを感じさせるどころか、「重くなってむしろ安定感が出て良かった」と評価されるほど、全体として完成度の高い仕上がりとなっている。

三又から交換することで高い剛性感を実現。純正の片持ち構造に対し、剛性を大幅に向上させた設計が特徴だ。

グローバル生産×ジャパンクオリティという答え

ここで今回のパーツの“本質”に触れておきたい。

この足周りは、ホイールのVMX、ショックのKKEといった海外パートナーと協業し、製造は中国で行われている。一方で最終的な組み立てやセッティングは日本で実施。TGRのノウハウを注ぎ込むことで、品質を担保しつつコストを抑える構造を実現している。

いわば“グローバル生産×ジャパンクオリティ”。単なる海外製パーツではなく、日本のセッティング思想を最終工程でしっかり乗せることで、走りの質まで成立させている。この仕組みがあるからこそ、ここまでのハイスペックな足周りを現実的な価格で成立させることができているのだ。

日本トップクラスのサスペンションブランドが“クロスカブ”に本気な理由

改めて、このカスタムを手がけているのはテクニクス。モトクロスやエンデューロといったオフロードレースの現場で鍛えられた技術をベースに、ハイエンドなサスペンションを展開する国内トップクラスのブランドだ。

なぜそのテクニクスがクロスカブなのか。

「クロスカブやハンターカブは乗っている人が多く、その中に“こだわるユーザー”が確実にいる」

気軽なバイクの中にも、本気で楽しみたい層がいる。その期待に対して妥協のないスペックで応えた結果が、このカスタムというわけだ。

お話しを聞かせてくれたのはテクニクス代表の井上浩伸さん。

これはもうクロスカブじゃない

実車を見ると、その違いは一目瞭然。足周りのボリューム感、削り出し感のある三又、ゴールドのアジャスター類。どこを切り取っても“ガチのサスペンションブランド”の仕事であり、従来のクロスカブのイメージとは完全に別の領域にある。

それでいてベースはクロスカブ110。

日本トップクラスの足周りブランドが、本気で仕立てたクロスカブ。このギャップこそが、今回のカスタム最大の面白さだ。

今後の試乗企画を乞うご期待!

テクニクスが提示したのは、クロスカブを“軽く遊ぶバイク”で終わらせないための提案だ。見た目、走り、所有感。そのすべてを底上げする足周りからのアップグレード。

そして何より印象的なのは、“あのテクニクスがクロスカブを本気でやっている”という事実。

これはもう、乗って確かめるしかない。

ディテールチェック

ベースは現行クロスカブ110。キャストホイール仕様の車体をあえてスポーク化し、アウトドア感と走破性の両面を引き上げているのがポイント。
前後セット9万9000円のTGR VMXホイール。リム幅は1.85インチへワイド化され、安定感と接地性の向上にも貢献する。
チューブレス対応の専用リム構造を採用。従来のスポークホイールの弱点だったチューブ化を回避し、扱いやすさを維持している。
高剛性スポーク+アルミニップルを採用。いわゆるセロー系と同様のチューブレス構造を採用している。
ツインチューブながらもピギーバックタイプのリザーバータンクを採用。耐熱やタイキャビテーション性能を向上させている。
コンプレッション(圧側)とリバウンド(伸び側)を完全独立で調整可能なダンピングアジャスターを装備。
プリロードアジャスターは無段階タイプ。
三又とフロントフォークがセットとなるTGRフロントフォークキットを装着。参考出品だが7~8月頃発売見込みだという。
コンプレッションとリバウンドをそれぞれ調整可能。好みのセッティングにアプローチできる。
フロントフォーク内部にはツインチューブカートリッジを採用。路面追従性を高め、バタつきを抑えたしなやかな動きを実現している。プリロード調整は無段階。

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