製作:OVER×RIDE DESIGN 車名:Luna-1 ※参考出品

太く大きなタイヤとトラス形状のパイプフレーム。ハンドル周りはまるで雄牛のツノのよう。

写真は、マフラーやフレーム制作で知られるバイクパーツメーカーのOVER Racingと、デザイン会社RIDE DESIGN(ライドデザイン)が共同開発した『Luna-1(プロトタイプ)』。

月面走行を見据えて作られた電動バイクである。

背景にあるのは、「アルテミス計画」

このプロジェクトがターゲットに据えているのは、2030年代に本格化するNASA(アメリカ航空宇宙局)主導の有人月面探査「アルテミス計画」だ。

同計画は、1970年代のアポロ計画以来、半世紀ぶりに人類を月面へ送る国際プロジェクトで、日本もJAXAを中心に参画している。2020年代後半から順次、有人着陸や月面基地の建設が予定されており、そこでの「移動手段」の確保は最重要課題の一つ。本車両は、その月面での実用的な機動力として提案されている。

地球上であれば数年持つタイヤも、強力な紫外線と鋭利なレゴリスが牙を剥く月面では瞬時に寿命を迎えるリスクがある実際の車両は写真のようなゴム製ではなく、金属メッシュ製のタイヤが採用される可能性が高い。

「月面」を走破する2WDシステム

月面は空気がなく、レゴリス(非常に細かく鋭利な砂)と多数のクレーターが点在する過酷な環境だ。

  • 前後2輪駆動(2WD):砂地に足を取られないよう、前後のホイール内にモーターを内蔵。片方の車輪が空転しても、もう一方が確実に路面を捉える設計だ。
  • 宇宙服での操作性:重装備の宇宙飛行士が足を高く上げずに跨れるよう、フレームの形状を工夫。さらに、厚手のグローブでも自然な姿勢で操作できる「ブルホーン型ハンドル」を採用している。

地上での「災害救助」への転用も視野に

開発チームは、月面で培った技術を地球上の課題解決にも役立てようとしている。震災による道路の寸断や、大雪による悪路など、通常の車両では立ち往生するような現場での救助活動だ。

「電気駆動なら酸素のない月でも走れる」という発想から始まったこの挑戦は、2026年1月には鳥取砂丘での実証実験でコンテスト優勝を飾るなど、着実に前進している。

プロジェクトのロードマップは、2030年に予定されているNASA主導の有人月探査「アルテミス計画」に照準を合わせている。「開発チームは『最短で2030年の月面投入』を掲げるが、それはあくまで通過点。たとえスケジュールが変動しても、その後に続く本格的な月面探査時代を見据え、継続的な開発を進めていく構えだ」

もし2030年のタイムリミットに間に合わなかったとしても、開発の手を止めることはない。月面基地の運用が本格化し、より日常的な移動手段が必要となる「ポスト・アルテミス」の時代を見据え、極限環境に耐えうる日本の技術を磨き続ける。このバイクが月の地平線を駆ける日は、そう遠くないはずだ。