Lotus Emira Turbo SE
病みつきになるほど快感なターボSEの走り

「やっぱり、これだよ、これ!」雨上がりの横浜・みなとみらいエリア。先ほどまでのどんよりとした薄暗い雲が嘘だったかのように、燦々と朝陽が降り注ぎ、ガラス張りのビル群がキラキラと輝き出す。若干の眩しさを感じて目を細めた私は、真っ赤な「エミーラ・ターボSE」(以下ターボSE)の車内で、つい独りごちた。試乗会となったウエスティンホテル横浜からターボSEを駆り出し、交差点をいくつか曲がっただけで“ロータスらしさ”をそこに感じてしまい、笑みがこぼれてきた。
タイヤのひと転がりから感じられるボディの軽さ、つま先の意思を100%汲み取ったかのように効くソリッドなブレーキ、狙ったラインを素直にトレースする正確無比なハンドリング。「エリーゼ」「エキシージ」「エヴォーラ」から脈々と受け継がれてきた“ロータスのDNA”が、確かにそこに存在していた。エミーラをドライブするのは実に久しぶりだった。以前に乗ったのはたしか数年前、トヨタ製V6とAMG製4気筒ターボを積む「ファーストエディション」だったが、正直なところ、その記憶はかなり薄れていた。
エミーラのフラッグシップに位置づけられるターボSEは2025年モデルから追加されたグレードだ。試乗会にはターボSEに加え、ターボとV6のファーストエディションも用意されていた。
トルキーで獣のような咆哮を奏でる刺激的なエンジン!


本誌の読者の皆さんはすでにご存知だと思うが、エミーラはロータス最後のピュア内燃機モデルである。電動化に舵を切ったロータスの中で、エリーゼやエキシージほど軽くはない。それでもライトウエイト&ガソリンエンジンの組み合わせという好事家にはたまらない魅力を備えた最後のロータスになる可能性が高い。エミーラは私の中で実に儚く脆い存在として認識されていた。
なぜなら、2018年に発表された「ビジョン80」において、28年までにロータスはEVメーカへ移行する方針が示されていたからだ。だがここにきて、その流れに変化の兆しがでてきた。2024年に完全EV化計画を撤回したロータスは、その言葉通り、3月5日、中国でエレトレのPHV版ともいえる「フォーミー」を発表したのだ。従来EVしかラインナップされなかったエレトレにまさかのPHVが追加である。
ひとりのファンとしてここは正直でありたい。「エレトレ」「エメヤ」と続くEVハイパーカーを見ていて、私はあまり心が動かされなかった。私にとってロータスの魅力とはエラン、エスプリ、ヨーロッパ、エリーゼと脈々と続く、ドライバーとの一体感を強烈に感じさせるピュア過ぎるほどの走りへの希求。そして適度な出力のガソリンエンジンを余すことなく使い切って操る喜びに、ロータスというメーカーのアイデンティティを見ていたからだ。
シンプルながらも上質なインテリアデザイン


だからこそ現行ラインナップの中でエミーラの存在がより一層際立ち、貴重な存在であった。同時に儚さを漂わせながら……。だが、安心してほしい。ロータスはエミーラの販売を当面は継続するという。世界中のメーカーが完全EV化計画を修正する中、ロータスも自らのレーゾンデートルに気づき始めたのかもしれない。「フォーミー」の中国での発表はその象徴とも言える出来事だった。
閑話休題。ターボSEに話を戻そう。SEとは「Special Equipment」の略で往年のロータスの高性能モデルに冠されていた伝統の証である。ターボSEはその名に恥じない素晴らしい性能の持ち主だ。搭載されるAMG謹製「M139型」2.0リッター直4ターボはエミーラ用に最適なチューニングが施されており、正直いって滅茶苦茶愉しいユニットだ。
走行モードを「スポーツ」に入れ、アクセルを軽くひと踏みすると、ミッドに積まれたAMGユニットは実に痛快な音を奏でだす。まるで野生動物の咆哮のように荒々しく、感性を激しく揺さぶるサウンドはエミーラの真骨頂だ。406PS/480Nmのアウトプットを叩き出し、0-100km/h加速4秒の実力は伊達ではない。わずか1457kgのボディは軽やかな羽を得た鳥のように軽快にコーナーを駆け抜けていく。スポーツにすると若干の突き上げの硬さを感じるが、アルミ製のバスタブ型モノコックボディが全体でショックをいなすので不快さはない。
ロータス最後の内燃機モデル

今回はみなとみらい地区での試乗だったので、残念ながらワインディングを走らせる機会はなかったが、首都高の高速コーナーや交差点での所作を鑑みても、ターボSEのソリッド感溢れる走りに心が震えた。ステアリングを切ったら切った分だけ曲がる、ブレーキを踏めば踏力に応じて止まる、アクセルを入れれば高揚感のあるエキゾーストノートを伴い瞬時に加速する、ドライバーの意思がここまで100%ピュアに伝わるスポーツカーは実に稀有な存在だ。芳醇なインフォメーションを伝えてくれるステアフィールも美点だ。ターボSEは爽やかな春風のように、私の心を晴れやかにしてくれた。そうなんだよ、これがまさしくロータスそのものじゃないか。
一方エミーラV6ファーストエディション(以下、V6)は、ターボSEとは違う個性を披露してくれた。パワートレインはロータスが長きに渡って採用しているトヨタ製3.5リッターV6スーパーチャージャーに6速MTの組み合わせとなる。不思議なのはターボSEよりわずか1kgしかボディが重くないにもかかわらず、重厚感を感じたことだ。これはV6の特性もあるのかもしれない。
MTで操る喜びを見いだせるV6モデル

コーナーでの身のこなしや走り出しの軽やかさで圧倒するターボSEに対し、V6はややGT的な性格でどっしりとした走りが印象的だ。エンジンの好みは分かれるだろうが、私はAMG製2.0リッターに惹かれた。なぜなら、トヨタ製2GR-FEは悪くはないのだが、最新エンジンと比べると、残念ながら回転のもっさり感が気になる。逆に言えばスーパーチャージャーならではのNAに似たフィーリングを好む好事家はこちらに惹かれるのかもしれないが。
聞けばV6と2.0リッターのファーストエディションは、まだ在庫があり、ディーラーで購入することが可能だという。ちなみに2.0リッターのファーストエディションはターボSEと同じM139エンジン搭載だが、アウトプットは365PS/430NmとフラッグシップのターボSEと比べると控えめ。だが乗った印象でいえば、こちらでも十分に軽快で速く、エミーラの本質を味わうという意味ではその差は少ない。
小気味よい硬質なシフトフィール


実はもし余裕があれば「アルピーヌA110」が欲しいと思っていた筆者だが、今回エミーラに久しぶりに乗って目から鱗が落ちた気分だ。必要にして最小限の電子デバイスで構成された実に真摯に造られたピュア過ぎるほどのスポーツカー、それがエミーラでありターボSEであった。試乗会後、心底欲しくなってしまったのは内緒である。
REPORT/石川亮平(Ryohei ISHIKAWA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2026年5月号
SPECIFICATIONS
エミーラ・ターボSE
ボディサイズ:全長4412 全幅1895 全高1225mm
ホイールベース:2575mm
車両重量:1457kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCツインターボ
総排気量:1991cc
最高出力:298kW(406PS)/6500rpm
最大トルク:480Nm(48.9kgm)/4500-5500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35R20 後295/30R20
車両本体価格:1823万1400円
エミーラ・ファーストエディション
ボディサイズ:全長4413 全幅1895 全高1226mm
ホイールベース:2575mm
車両重量:1405kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCツインターボ
総排気量:1991cc
最高出力:269kW(365PS)/7200rpm
最大トルク:430Nm(43.8kgm)/3000-5500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35R20 後295/30R20
車両本体価格:1661万円
エミーラV6ファーストエディション
ボディサイズ:全長4413 全幅1895 全高1226mm
ホイールベース:2575mm
車両重量:1458kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHC+スーパーチャージャー
総排気量:3456cc
最高出力:298kW(405PS)/6800rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2700-6700rm
トランスミッション:6速MT/6速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35R20 後295/30R20
車両本体価格:1573万円
【問い合わせ】
ロータスコール
TEL 0120-371-222
https://www.lotus-cars.jp
