まずはじめに、XSR125はどんなバイク!?

ヤマハのXSR125は、YZF-R125やMT-125と基本設計を共有するネオクラシックモデルだ。
クラシカルな見た目とは裏腹に、中身は15psの高回転型エンジンと倒立フォークを備えた本格スポーツ。
つまり——
“雰囲気バイクじゃない、ちゃんと速いネオクラシック”である。
そんなXSR125を、今回は500kmのロングツーリングで試した。
■XSR125 主要諸元
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 全長×全幅×全高 | 2030×805×1075mm |
| シート高 | 810mm |
| 軸間距離 | 1325mm |
| 最低地上高 | 170mm |
| 車重 | 137kg |
| エンジン | 水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ |
| 総排気量 | 124cc |
| 最高出力 | 15ps / 10000rpm |
| 最大トルク | 1.2kgm / 8000rpm |
| 燃料供給 | フューエルインジェクション |
| 変速機 | 6速リターン |
| 燃費(WMTCモード) | 49.4km/L |
| 燃料タンク容量 | 10L |
| フレーム | ダイヤモンド |
| フロントサスペンション | 倒立フォーク |
| リヤサスペンション | リンク式モノショック |
| フロントブレーキ | ディスク(267mm) |
| リヤブレーキ | ディスク |
| タイヤ(前) | 110/70-17 |
| タイヤ(後) | 140/70-17 |
一泊二日の旅でも決してヌルくはない?
高速道路を使えなくても、今どきの原付二種は1日500kmを普通に走れるのだなあ……。近年になってホンダのカブシリーズやダックス125、スズキGSX‐R125などでロングランを経験した僕は、そんな印象を抱いている。と言っても、普通の基準は人それぞれだし、走るルートにもよりけりなのだが、信号と交通量が少なめの県道や農道や舗装林道などを上手く組み合わせれば、僕の基準だと現代の原付二種での1日500kmは苦行ではない。もちろん、XSR125もその印象は同様と言いたいところなのだが……。
実は今回のツーリング試乗は他の企画の撮影もあったので、一泊二日で行った。となると、「500km程度じゃヌルい‼」というツッコミが入りそうな気がするものの、走行開始〜終了時間は、初日:4〜18時、2日目:8時半〜19時だったので(撮影には結構な時間がかかるのである)、そんなにヌルくはなかったと思う。そして全行程を終えて帰宅した時点で、心身にイヤな疲労を感じていなかったことを考えると、やっぱり近年の他の原付二種と同様に、XSR125にもロングランを快適にこなせる資質は備わっているのだ。
さて、初っ端から結論めいた話をしてしまったけれど、東京から伊豆半島南端に位置する石廊崎を目指した今回のツーリングでは、これまでの試乗では気づかなかった興味深い発見に出会えた。以下の文章では時系列順で、その発見を紹介したい。
ビンビン回るエンジンと包容力が十二分の車体
カメラチームとの待ち合わせは、伊豆半島の首根っこのやや下に位置する修善寺のコンビニに8時なので、そこから逆算して東京都多摩市の自宅を4時にスタート。走り始めてしばらくは周囲が真っ暗だったものの、山中湖に向かう国道413号(道志みち)に入る頃には明るくなってきたので、少しずつペースアップ。そんな状況下で僕は、ルックスがネオクラシックでも、やっぱりこの車両はYZF‐R125と基本設計を共有するスポーツバイクなんだな……という印象を抱いた。
何をいきなり自明の理を言っているんだと思われるかもしれないが、XSR125の乗り味は相当にスポーティなのである。可変バルブ機構のVVAを導入した単気筒エンジンは、往年の2ストを思わるフィーリングでビンビン回るし、ツインスパータイプのフレームや倒立式フォーク、リンク式モノショックを採用したシャシーの安定感と剛性は十二分。あえて言うなら、ブレーキにはちょっと物足りなさを感じるけれど(フロントディスク径は、YZF‐R125より15mm小さい267mm)、危険を感じるレベルではない。そんなわけだから今回のツーリングは、かなりの好感触で始まったのだ。
もっとも山中湖から修善寺に向かう国道138/246/1/136/414号は、通勤時間帯ということもあって混雑しているので、僕は適度なストレスを覚悟していた。ところが、車格が小柄で車重が軽いことに加えて(1325mmの軸間距離と137kgの車重は、前後17インチの原付二種スポーツバイクでは一般的な数値)、シートが高くて上半身が起きているXSR125は周囲の状況がよく見えるから、交通量が多い国道の移動はなかなか快適。サクッと修善寺に到着してしまった。
マッタリ走行で感じた微妙な物足りなさ
カメラチームと合流してからは、県道18号経由で標高800〜900mの西伊豆スカイラインに向かい、駐車場でいろいろと撮影し、国道136号を西に進んで南下。その道中で走行写真やイメージ写真を撮影する際に嬉しかったのは、乗り降りや押し引き、Uターンを面倒と感じなかったこと。
もちろん、それは原付二種では当然なのだが、少なくとも僕の場合は、スポーティなバイクに乗車中は走りを中断したくない、と感じることが珍しくないのである。でもXSR125には、それはそれでという感覚で気軽に寄り道を楽しめる、包容力が備わっていた。
その一方でちょっと気になったのは、エンジンが事前の予想よりフレキシブルではなかったこと。カメラカーと共に周囲の交通の流れに身を任せて走っていて、前走車との距離が開いた際に右手に力を込めると、アレ、意外に加速しない? と感じる場面に何度か遭遇したのである。
もっともその背景には、マッタリ走行時に無意識で高めのギヤを使いがちな僕のクセがあるのだが(すぐに5速や6速に入れがち)、7400回転を境にカムシャフトが低速・高速用で切り替わるVVAを採用しているのだから、個人的にはホンダのカブシリーズやダックス125のような、充実した低速トルクを期待していた。
でもXSR125の低速・低回転域の加速はそこまで万全ではなく、超高回転指向のGSX‐R125ほどではなくても、ある程度はスピードと回転数とスロットル開度のバランスを意識する必要があったのだ。
いや、この表現だとカブ系がエラいみたいだが、必ずしもそうではない。絶対的な速さやエンジンを回す楽しさなら、XSR125とGSX‐R125のほうが優位。念のために各車の最高出力・最大トルクを記しておくと、XSR125は15ps/10000rpm・12Nm/8000rpm、ホンダ・カブシリーズの代表格と言うべきCT125は9・1ps/6250rpm・11Nm/4750rpm、GSX‐R125は15ps/10500rpm・11Nm/8500rpmである。
そしてこの数値から推察すると、XSR125のエンジン特性はGSX‐R125に近そうだが、30cm定規に当てはめて、CT125を0cm、GSX‐R125を30cmとするなら、XSR125は22cmあたり……という印象。前言と矛盾するようだが、基本的に高回転型でありながら、低回転域もそれなりに使える特性は、VVAの効果だと思う。
などということを考えながら走っているうちに、土肥と松崎を通過して、18時には宿泊地の雲見温泉に到着。この日は3時起きだったので多少の眠気はあったけれど、心身がグッタリではまったくなかった。

ハンドリングに対するヤマハのこだわり
2日目のルートは初日の延長で、8時半に出発して国道136号を南下し、途中で県道16号に入って石廊崎へ。交通量が少ない海沿いの快走路でカメラカーを先導しながら走った僕は、XSR125の運動性に改めて感心。ライン取りやブレーキ&倒し込みのタイミング、スロットルの開け方で旋回力が変わってくる特性は、コーナリングのプロセスやライダーやバイクとの対話を大切にする、ヤマハならではだと思った。
他メーカーの車両でそういった感触が味わえないわけではないものの、ヤマハ車の場合はコーナリングの成功と失敗がわかりやすいので、上手く決まったときは「ヨッシャ‼」という気分になれる。だから大小のコーナーが続く海沿いの快走路を、飽きることなく走り続けられるのだ。
と言っても、そんな気分でいられる快走路はいつまでも続かず、石廊崎を通過して国道136号に戻って海沿いの道を北上すると、早咲きの桜で有名な河津までは、周囲の交通の流れに身を任せざるを得ない状況が続く。とはいえ、初日の経験で高めのギヤの常用は止めようという意識を持っていたので、加速に対する不満は特に感じなかった。
そして河津からは内陸に入り、国道414号を走ってほぼ全線ダートの天城山隧道へ。もう撮影はほぼ完了しているから、車体が汚れても構わないという意識で未舗装路に臨んだところ、なかなかイケることが判明。車格が小さくて車重が軽い原付二種のアップハンドル車では、それも当然のことなのだが、ライディングポジションにスーパーモタードやオフロード車的なところがあって、前後サスペンションがしっかりしているからか、XSR125はライバル勢より悪路がイージーな印象だ。
ちなみに、この時点までの僕は自分がXSR125のオーナーになったら、前後タイヤをスポーツ指向のラジアル(ブリヂストンS22やメッツラーM9RRなど)に変更したいと考えていたのだが、オフロードを満喫した後は、IRC・GP410やピレリ・スコーピオンラリーSTRなど、アドベンチャー系を選択するのもアリのような気がしてきた。


兄弟車とは異なる美点と走行後のカスタムプラン
天城山隧道での撮影を終えてカメラチームと別れた後は、国道414号を北上して修善寺に向かい、そこからは初日の朝のルートを逆戻り。徐々に日が暮れていく状況で山中湖周辺のワインディングと道志みちを走った僕は、今さらではあるけれど、基本設計の多くを共有するYZFR125やMT125とは趣が異なる、XSR125特有の美点を発見することとなった。
何と言ったらいいのか、XSR125のハンドリングは優しいのだ。25度30分のキャスター角や88mmのトレール、1325mmの軸間距離などは兄弟車と共通なのだが、フロントタイヤを他2車より1サイズ太い110/70‐17とし、アップライトな乗車姿勢で前輪荷重を少なめに設定した効果だろうか、車体を傾けた際の舵角にはフロント18インチを思わせる穏やかさがあって、安心して旋回に入って行ける。だから心身が適度に疲労して視界がどんどん悪くなる状況でも、スポーツライディングが楽しめたのだ。逆に考えると、フロント17インチならではの旋回性やシャープさが堪能しやすい他2車だと、おそらく、そういった感触は得られなかっただろう。
さて、道志みちを抜けて市街地を1時間ほど走った僕は、19時に自宅に到着。ガレージ内でXSR125を見つめながら2日間の行程を反芻していると、いろいろなカスタムプランが湧いてくることとなった。
と言っても、XSR125はノーマルでも十分に楽しいのだが、さらに楽しいバイクに仕上げる手法として、僕の頭に最初に浮かんだのはマフラー。兄貴分の155と基本構成を共有しているせいか、ノーマルマフラーのサウンドはちょっと抑え込みすぎの感があるので、アフターマーケットパーツを導入して単気筒ならではの鼓動感を強調してみたい。
それに続いて着手したいのはハンドル。ノーマルは前述したようにスーパーモータードやオフロード車的で、それはそれで大いにアリなのだけれど、日常的な扱いやすさを考えると、もう少し幅が狭くて絞りが強めでもいいような気がしたのだ。
また、身長182cmの僕にとっては問題ではなかったものの、小柄なライダーの気持ちになってみると810mmのシート高、いまひとつな足つき性は何とかするべき問題なのかもしれない。ショールームで跨った際の印象を考えると、ローダウンリンクなどで足つき性を改善するのも有効だろう。実際に純正アクセサリーパッケージとして低車高仕様も用意されているので、用途や体格に合わせた選択肢として検討する価値はありそうだと感じた。
あら、最後になって異論を述べるかのような展開になってしまったが、カブシリーズやダックス125、GSX‐R125などでロングランをした後も、やっぱり僕はカスタムプランを夢想したのである。だから個人的には、いじりたくなることはまったく悪いことではなく、バイクの評価を高めるプラス材料なのだ。いずれにしても今の僕は、XSR125のオーナーになったら相当に充実したバイクライフが過ごせるに違いない、と感じているのだった。


■500km総括!

給油①:253.6km ÷ 5.94ℓ = 42.7km/ℓ
給油②:280.2km ÷ 5.68ℓ = 49.3km/ℓ
峠道でかなりエンジンをブン回したことを考えれば、平均45.9km/ℓという燃費は驚きだ。
過去にモーターファンバイクスで1000km試乗を行ったGSX-R125が41.5km/ℓだったことを考えると、その数値は可変バルブ機構であるVVAの効果ではないかと思う。

この記事は月刊モトチャンプ2024年6月号に掲載されたものを加筆修正しています。




