QJモーター・SRV 400 A……838,000円




250よりもトルクが厚く、回転上昇には上品さがある

近年、二輪業界における自動変速化の波が著しい。その多くが既存のトランスミッションをベースに、ライダーの操作をアクチュエーターが代行するシステムを加えたもので、ヤマハのY-AMTやBMWのASAなどがその代表例である。中国のQJモーターもこの分野に積極的で、最近では250ccのVツインクルーザーにAMT(オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)を採用して話題となった。
今回試乗したのは、SRVシリーズのミドルクルーザー「SRV 400 A」だ。車名こそSRV 250 Aに近しいが、スタイリングが大きく異なるのをはじめ、ホイールベースは250に対して120mmも長く、しかもリヤホイールは1インチ大きい。単なる排気量違いのバリエーションモデルではないところに、QJモーターの意気込みが感じられよう。
SRV 400 Aに搭載されているエンジンは、385ccの水冷Vツインだ。Vアングルに関する公式資料が見つからないのでオンライン分度器で測定したところ、60°で間違いないようだ。最高出力は34PSであり、直接のライバルとなりそうなエリミネーターの48PSよりはだいぶ控えめではある。なお、最大トルクは35Nm/5000rpmで、エリミネーターの37Nm/8000rpmよりもわずかに低いだけというレベルだ。


セルボタンを押してエンジンを始動する。デュアルトルペードサイレンサーから聞こえてくる低音のサウンドは、狭角Vツインらしいリズミカルなものだ。250のサウンドも耳に心地良かったが、400はさらに力強さを感じさせるもので、設計段階からエキゾーストノートにもこだわったのは間違いないだろう。
まずはオートマチックのDモードから。ハンドル左側にあるプラスボタンを押すと、小さな「カシャッ」という作動音とともに、ミッションがニュートラルから1速へと切り替わる。これでスタートの準備は完了だ。スロットルをわずかに開けるとすぐに車体は動き出し、4000rpmを超えたあたりで2速、そして3速へと自動的にシフトアップしていく。
この4000rpm付近までのトルクフィールは250よりも明らかに厚く、しかもバランサーシャフトのおかげで微振動がフッと消える領域があることから、回転上昇には上品さすら感じられる。エンジン自体がロングストロークな設定であること、また5000rpmという中回転域で最大トルクを発生することなどが、この豊かで上質なフィーリングを生んでいるのだろう。中~高回転型のエリミネーターとは明らかに対照的であり、クルーザーらしい味わいという点においてはQJモーターに軍配が上がる。

AMTについては、スロットル開度が少なめで、なおかつ低~中負荷領域であれば、シフトアップ/ダウンとも変速ショックが小さく、加減速とも非常にスムーズだ。一方、勾配のきつい坂道や、勢いよく加速するためにスロットルを大きく開けたときなどは、クラッチが切れている時間が長く、つながった瞬間に大きめの挙動が出ることもあった。とはいえ、シフトタイミングは主にエンジン回転数と速度によって決まっているようで、こうした挙動はいずれ慣れてしまうはずだ。なお、直線走行から減速しつつUターンするようなシーンでは、進入速度によって2速のままだったり、旋回中に1速にシフトダウンしたりするので、エンストこそしないものの十分に気を付けてほしい。
ライディングモードを「S」に切り替えると、シフトアップのポイントが6000rpm付近へと移行する。力強くなるので確かにワインディングロードでは有効だが、そこまで引っ張ると変速ショックが大きくなることから、少なくとも筆者はSTDモードの方が好みではある。また、マニュアルモードについては、エンジン回転数が許容範囲から外れていると変速操作を受け付けないほか、8000rpm付近を超えると強制的にシフトアップ(レッドゾーンは10000rpm)する設定なので、こちらも作動を確認した程度ですぐに使わなくなってしまった。とはいえ、こうした機能を盛り込んできたということは、さまざまな使い方や嗜好を想定していることの証だろう。
ビギナーでも扱いやすいハンドリング、乗り心地も良し

エンジンのフィーリングと同等以上に感心したのはハンドリングだ。特徴的なフロントカバーに隠されているのは倒立式フォークで、フロントタイヤは250よりもワンサイズ太い130/90-16を採用。リヤはコンベンショナルなツインショックで、リヤタイヤは150という太さこそ250と共通だが、400は1インチ大きな16インチとなっている。
車体の傾きに対する舵角の付き方は、微速域からニュートラルだ。切れ込んだり、フラついたりといった挙動が一切なく、これならビギナーを慌てさせることはないはずだ。30km/h付近から上の速度域ではホイールのジャイロが強まり、ハンドルの押し引きに多少の手応えが出てくるが、裏を返せば安定性が高まってくるとも言えるだろう。バイクとライダーによるシステムとしての重心位置が絶妙なのか、クルーザーでありながらネイキッドのような扱いやすさがあり、積極的に旋回するタイプではないものの、コーナリングも十分以上に楽しめる。
試乗した車両が積算計100km未満の新車だったため、前後サスペンションの動きにはまだ渋さが残っていたが、それでも乗り心地は良好な部類であり、慣らし運転が進めばロングツーリングも快適にこなせるようになるだろう。なお、今回は後ろに別のライダーを乗せてタンデム走行も試してみたのだが、フレームには十分以上の剛性があることを確認。加えて、リヤショックは大きく沈むものの、大きめのギャップを通過しても底付き感はなかった。
ブレーキについては、前後とも手で操作するというのが新鮮だ。長めのレバーストロークで減速をコントロールするタイプで、サスペンションと同様、慣らし運転が進めば初期からの制動力はより増してくるだろう。

こうした自動変速機構が登場するたび、ライダーの間で必ず交わされるのが「要不要論」だ。筆者はというと、基本的には不要と考える側に立つ。左手で緻密に動力を制御する感触や、左足の操作によってギヤがスライドしていく様子を頭の中でトレースするのが好きだからだ。加えて、そうした一連のプロセスこそが、内燃機関のバイクを操る醍醐味だとも思っている。
さらに、少なくとも今回試乗したSRV 400 A以上にシフトショックを抑える操作ができるという自負もあるし、この秀逸なVツインは、より広い回転域を使ってこそ真価が引き出されるはず。その意味で、現状のマニュアルモードの制御には、やや物足りなさが残るのも事実である。
しかし一方で、イージーライド化による疲労軽減効果は明確だ。操作に割いていたリソースを周囲の状況確認へと振り向けられる点は、安全面において大きなアドバンテージと言えるだろう。
さらに想像してみてほしい。もし自分がケガや病気によって足首の可動域に制約を抱えたとき、それでもバイクに乗ることをあきらめるだろうか。おそらく多くのライダーが「否」と答えるはずだ。SRV 400 Aは、日本ではAT限定免許で乗れる点が注目されがちだが、すでにそうした事情を抱える人々にとっても、新たな選択肢となり得る存在なのだ。
ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)
シート高は720mmで、足着き性はご覧のとおり優秀だ。上半身を直立させた状態においてハンドルが自然な位置にあり、また足元はフットボードゆえにポジションの自由度が高いのも好印象。ライダーシートは座面が広く、クッション性も良好だ。
ディテール解説

















QJモーター・SRV 400 A 主要諸元
エンジン
Type 2-Cylinder V,2V,Liquid-Cooled
ボアストローク 60.0×68.0mm
排気量 385cc
最高出力 25.0kW(34.0PS)/8000RPM
最大トルク 35.0NM/5000RPM
燃料システム EFI
燃料供給装置形式 Electric
クラッチ Wet multi-plate
トランスミッション AMT Belt drive
シャシー
フロントサスペンション Upside down telescopic forks
リアサスペンション Side mounted shock absorber
フロントタイヤ 130/90-16
リアタイヤ 150/80-16
フロントブレーキ Disc ø300mm
リアブレーキ Disc ø240mm
ディメンション
全体L×W×H 2210×830×1100mm
ホイールベース 1520mm
座席高 720mm
地上高 160mm
車両重量 184kg
燃料容量 16L






