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バイクの法律高速道路でのガス欠は道交法上の違反行為!
一般道と違い、高速道路はサービスエリアなどの休憩施設までいかなければガソリンスタンドはない。しかも、すべての施設にあるわけでもないので、給油のタイミングを間違えるとガス欠になる可能性は大だ。さらに、もしガス欠により高速道路上で停車してしまうと、後続車から追突されるなどで危険。しかも、道路交通法の規定により、交通違反にもなるという。
まず、なぜ交通違反になるのか。根拠は、道路交通法第75条の10にある以下の規定だ。
「自動車の運転者は、高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量又は貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、高速自動車国道等において燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量の不足のため当該自動車を運転することができなくなること又は積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない」
「自動車の運転者の遵守事項」を規定したのがこの条文だ。高速道路を運転する前にガソリンなどの燃料、エンジンオイルや冷却水の量、貨物の積載状況などを点検し、高速道路の走行中にガス欠やエンジンなどの故障、積載物の落下などが起こらないようにすることを義務付けている。
そのため、ガス欠により高速道路上で停車してしまう行為は「高速自動車国道等運転者遵守事項違反」に該当する。もし、検挙されると反則点数2点、反則金はバイクの場合7000円(普通車9000円、大型車1万2000円)を課せられることになる。なお、ガソリンだけでなく、エンジンオイルや冷却水の残量、積載物の落下などの確認を怠って停車した場合も同様だ。

燃料警告灯が点灯したら?
このように、高速道路上でガス欠による停車は道路交通法に違反するのだが、そうはっても「ついうっかり給油し忘れた」といったこともありうる。たとえば、まだ給油しなくても大丈夫だと思って高速道路に乗ったら、意外にガソリン残量が少なく、燃料メーターの目盛りもかなり減っていたというケースもある。さらに、その状況で燃料警告灯が点灯したりすると、かなりの不安に襲われる。とくに、燃料メーターがなく、残量が少なくなったときだけ警告灯が点灯するタイプのバイクに乗っている場合は注意が必要だ。
一般的に、多くのバイクが燃料警告灯が点灯してからも、ある程度走ることができるようになっている。そのため、こうした場合も想定して、自分の愛車は燃料警告灯の点灯後にどれくらいの距離を走れるのかは事前に知っておくといい。
調べる方法としては、まず、取扱説明書などで、自分のバイクは、どれくらいの燃料タンク残量で燃料警告灯が点灯するかをチェックする。
たとえば、ホンダの「CBR650R E-クラッチ」や兄弟車「CB650R E-クラッチ」の場合。

燃料計(FUEL)のマーク(目盛り)が1つから橙色の走行可能距離(RANGE)に切り替わると、燃料(リザーブ燃料)残量は約3.0Lだ。そして、その残量を元に、たとえば、カタログ上の燃費を調べれば、燃料警告灯の点灯後に、どれくらいの距離を走れるかが割り出せる。
CBR650R E-クラッチやCB650R E-クラッチは、カタログ上の燃費がWMTCモード値21.3km/L。これに燃料(リザーブ燃料)残量の約3.0Lを掛ければ航続距離が出る。
21.3km/L×3.0L=63.9km
つまり、これらモデルの場合は、燃料警告灯の点灯後も63.9kmほど走れる計算となる。ただし、この距離はあくまでカタログ数値上の計算なので、実際は走り方や天候によって変わってくる。

また、これらの数値は、モデルによっても異なる。たとえば、おなじホンダ車でも、
レブル250は燃料計のマークが1つ(E)だけ点滅したときの燃料残量は約2.2L
レブル1100は燃料計(FUEL)表示から橙色の走行可能距離(RANGE)に変わったとき燃料残量は約4.0L
となっている。同じようなタイプでも、排気量やメーカーなどで違ってくため、それぞれの車両であらかじめ数値を調べて、計算しておいた方がいいだろう。


いずれにしろ、燃料警告灯が点灯したからといって、いきなりエンジン停止するわけではないことは確か。そのため、事前にこうした数値を頭にいれておけば、まさかの時も安心材料になることは確かだろう。
給油できるSAが近くにない場合は?
前述の通り、燃料警告灯が点灯してからも、ほとんどのバイクはある程度の距離を走ることができる。だが、燃料警告灯が点灯すれば、ガス欠に近いことに変わりない。高速道路を走行中にガス欠になりそうになったときは、できるだけ早急にガソリンスタンドが併設された次のサービスエリアなどに入って給油するようにしたい。

ただし、高速道路のサービスエリアは、およそ50km間隔で設置されているが、必ずガソリンスタンドが併設されているとは限らない。なかには、100km以上にわたってガソリンスタンドがない路線も全国で80か所以上あるといわれている。そんなエリアでは、そのまま高速道路上を走り続けてもガソリンスタンドのあるサービスエリアにたどり着けない場合もある。
そして、そんな場合はすぐに一般道へ降りた方がいい。一般道なら、万が一ガス欠になっても安全に停車できる場所も多いし、停車方法さえちゃんとしていれば高速道路のように違反に問われることもない。さらに、停車した場所にもよるが、近くにガソリンスタンドがあれば、バイクを押していくこともできるかもしれない。

ガス欠で高速道路上に停車してしまったら?
それでも高速道路でガス欠になり、エンジンが停車しそうになったら? その場合、まずは、ハザードランプかウインカーを点灯させて路肩の安全な場所にバイクを移動させて停車させる。
停車後は、身の安全を第一に考えて行動したい。とくに、後続車からの追突される危険が大きいため注意が必要だ。まずは、すみやかにガードレールの外など安全な場所に避難する。
ちなみに、高速道路上で停車した場合、バイクでも後方に「三角表示板」を設置する義務がある(クルマでは「発煙筒」も必須だがバイクは不要)。意外に知られていないことが、もし設置していないと「故障車両表示義務違反」にあたり、二輪車は違反点数1点と反則金6000円の罰則を課せられる。

一般的に、三角表示板はサイズなどが法律で規定されていることもあり、クルマ用などは大きくてバイクでは携行しずらいものも多い。だが、最近は、コンパクトに折りたたみできるバイク用の三角表示板もあるため、そうしたものを購入して置くことをおすすめする。
三角表示板を設置し、ガードレールの外へ避難したら、JAFや任意保険に付帯されたロードサービスを呼ぶしか手はないだろう。携帯電話で直接電話するか、本線上に1kmごとにある非常電話から道路管制センターにつながるので、救援を要請してもらうようにしたい。

ガス欠を予防するには?
このように、とくに高速道路では、安全上の観点から、一般道のように気軽に停まることは許されていないし、実際に危険も多い。そして、ガス欠の原因は、給油忘れなどの人的な「うっかりミス」がほとんど、たとえば、高速道路に乗る前には、燃料を必ず満タンにするよう習慣づけるなどの対策をとることも必要だろう。
また、自分のバイクは、1回のガソリン満タンでどれくらいの航続可能距離があるのかも、ある程度把握しておきたい。前述した燃料警告灯の点灯後の航続距離と合わせて知っておけば、出先で給油するタイミングの参考になる。

満タンからの航続可能距離を調べるには、まず、自分のバイクの燃費を知る必要がある。何回かツーリングなどをした際の給油量や距離を記録して燃費を割り出すのが一番だが、もしそうした実測データがない場合は、カタログやメーカー公式WEBサイトにある愛車のスペック(主要諸元)表を見て、「燃料消費率」と「燃料タンク容量」から航続可能距離を算出する。
ちなみに、スペック表の燃料消費率の欄には、「定地燃費値」と「WMTCモード値」が載っているが、より現実に近いといわれているのはWMTCモード値の方なので、この値と燃料タンク容量で計算する。計算式は以下の通りだ。
「燃料消費効率(WMTCモード値)」×「燃料タンク容量」=「航続可能距離」
たとえば、カワサキの250ccスーパースポーツ「ニンジャZX-25R SE」の場合。

カタログ上のWMTCモード値は18.7km/Lで、燃料タンク容量は15L。
これら数値を計算式に入れると
18.7km/L×15L=280.5km
つまり、1回の満タンで約280.5kmの航続距離があることが分かる。
こうした航続可能距離を知っおくほかに、可能であれば、目的地や出先にあるガソリンスタンドの位置や営業状況などを確認しておけば万全だ。とくに、利用する高速道路の路線内に、ガソリンスタンドが設置してあるサービスエリアはどのくらいあるのかは知っておくといいだろう。

ともあれ、ガス欠が原因で高速道路で停車することは、ほかの車両の迷惑となるし、自分自身も危険となり大変な思いをすることになる。くれぐれも、トラブルを引き起こさないよう十分に注意したいものだ。
