Aston Martin DBX S

「DBS」を起源に持つ「S」の称号

ハイパフォーマンスSUV「アストンマーティン DBX S」のエクステリア。
今回、DBXのフラッグシップとして登場した「DBX S」。市販モデルにおける「S」の起源は、1967年に登場した「DBS」にまで遡る。

今回発表された「DBX S」は、モデル名の末尾に「S」が与えられた、シリーズ最高峰に君臨するハイパフォーマンス仕様だ。モデル名の「S」は1967年、2007年、2018年と3世代にわたってアストンマーティンのフラッグシップに君臨した「DBS」を起源に持つという。

DBX Sはヨーロッパにおいて、すでにオーダーの受付をスタートしており、デリバリーは2025年第4四半期を予定している。日本への導入時期や価格に関しては発表されていない。アストンマーティンのエイドリアン・ホールマークCEOは、DBX Sについて次のようにコメントした。

「この2年間、アストンマーティンは次世代スポーツカーと新型DBXを新たに導入しました。そのどれもが、社内で新規開発されたインフォテインメントシステムを搭載しています。今後もクラス最高のパフォーマンス、ウルトララグジュアリーなデザインとイノベーションに重点を置きながら、各コアモデル下の製品ラインアップの拡大に取り組んでいく予定です」

「DBX Sは、最もエキサイティングで満足感を感じられる美しいクルマの創造を目指すアストンマーティンの決意を改めて示したモデルです。そして、DBXだけでなく、アストンマーティンというブランドに対して、私たちが持つ野心を強力に発信する存在でもあります」

ヴァルハラ由来のパワーユニットを搭載

ハイパフォーマンスSUV「アストンマーティン DBX S」のエクステリア。
ヴァルハラの開発からフィードバックされたターボチャージャー技術が導入されたことで、DBX707から20PSアップの最高出力727PSを発揮する。

DBX Sの心臓部にはアップグレード版の4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンが搭載され、ヴァルハラから直接受け継いだ、大型コンプレッサーホイールなどのターボテクノロジーを含む様々なアップデートにより、出力はDBX707から20PSも向上した727PSに到達したと謳う。最高回転数において出力アップを実現したことで、スポーツカーにも互する強烈なパフォーマンスを実現した。

DBX707同様、DBX Sも前後のトルク配分変更に対応しており、フロントが最大50%、リヤアクスルは100%のトルクを配分することで後輪駆動による走行を楽しむことも可能だ。ターボチャージャーの強化に併せてエキゾーストシステムも改良が施され、V8エンジンのサウンドにDBX Sらしい個性を加えている。

スペックは0-100km/h加速3.3秒、0-200km/h加速はDBXから0.3秒も短縮された。最高速度はDBXと同じ310km/hを誇る。

「S」をアピールする専用エクステリア

ハイパフォーマンスSUV「アストンマーティン DBX S」のエクステリア。
エクスリアは専用エアロダイナミクスが多数導入され、「S」モデルとしての高い走行性能をアピールする。

フロントセクションは、存在感を放つピュアブラックの「vaned」グリルを装着。新形状のスプリッターとディフューザー、特徴的なラップアラウンドデザインのデイタイムランニングライトが組み合わせられた。また、「DBS 770 Ultimate」をイメージした、軽量ポリカーボネート製ハニカムグリルもオプションで用意される。

サイドセクションには、新形状のシルを導入。このシルには、ボディサイドのエアフローを効率よくリヤへと流す効果が与えられている。サイドミラー、サイドストレーキ、ドアシルにはカーボンファイバー製をチョイスすることも可能。フロントフェンダーには専用の「S」のバッジが配置された。バッジの周囲はオーナーが選んだウイングのカラーに合わせて、ブライトクロームかダーククロームでプレーティング加工が施される。

リヤセクションは、新たにグロス仕上げとマット仕上げから選択可能なクアッドエキゾーストパイプを搭載。デザインが一新されたリヤバンパーとディフューザーは、オプションのカーボンファイバー製コンポーネントをチョイスすることで、さらに7kgの軽量化を図ることができるという。

エクステリアカラーは「ロッソコルサ・レッド」「トロフィー・シルバー」「ポディウム・グリーン」の3色を用意。ロワボディ用レッドアクセントは、フロントスプリッター、ディフューザー、サイドシルからリヤへと向かい、クアッドエキゾーストを印象的に囲む。

カーボンファイバールーフを導入

ハイパフォーマンスSUV「アストンマーティン DBX S」のエクステリア。
今回、オプションとして、アストンマーティンのカーボファイバー製パーツとしては最大級のサイズを誇るカーボファイバー・ルーフがオプションとして設定された。

出力アップに加え、車両の軽量化も進められた。新たにオプションとして設定されたカーボンファイバー製ルーフは、アストンマーティンのコンポーネントとしては最大級のカーボンファイバー製パーツとなる。そのサイズは3メートル近くに及び、ルーフレールが廃止されたことも併せて、ベースから18kgもの軽量化を実現した。

また、アストンマーティンのSUVセグメントとしては初めてマグネシウムホイールをオプション設定。マグネシウムは強度が高いだけでなく驚異的な軽さを誇る素材であり、スチールに比べて約75%、アルミニウムと比較しても約1/3の軽量化を図ることが可能となった。

オプションの23インチマグネシウムホイールを選択した場合、バネ下重量を19kgも削減し、乗り心地、ステアリングの精度とドライブフィールの向上に加え、インプットに対する応答性も大幅に向上する。標準装備は23インチ鍛造アルミニウムホイールとなる。

専用の「ヘリボーンパターン」を採用

ハイパフォーマンスSUV「アストンマーティン DBX S」のインテリア。
インテリアには、「S」モデル専用として、スポーティなヘリボーンパターンを採用した。

DBX Sはアストンマーティンが自社開発した最先端のインフォテインメントシステムを搭載。標準のスポーツシートには専用のヘリンボーンパターンが導入された。ヘリンボーンラインはスピード感を強調すべく、シートの上に行くほど幅が広くなり、オプションのカーボンルーフを選択した場合、ヘッドライナーも同じヘリンボーンパターンが使用される。

シートにはモデル名の「S」が刺繍され、ヘッドレストにはエンボス加工とデボス加工の両方を用いた専用工程により、レザー部分にアストンマーティン・ウイングが浮かび上がる。「S」のロゴマークは、トレッドプレートとエンジンプラークにも配置される。

標準トリムは、アルカンターラをシート、ヘッドライナー、センターコンソール、ロワインストルメントパネル、アッパートリムに使用。シートボルスターなどの摩耗しやすい部分には、アルカンターラと自然に調和するセミアニリンレザーが採用された。さらにラグジュアリー感を高めたい場合には、すべてのトリムをセミアニリンレザーに変更することも可能だ。

アストンマーティン唯一のSUVであるDBX。

美しい外観と素晴らしい走りの人気SUVとなったマイチェン版「アストンマーティン DBX707」に試乗

アストンマーティン唯一のSUVであるDBXが初のマイナーチェンジを行った。外観やパワートレインなどはほぼそのままに、インテリアを全面的に新しくしての登場だ。(GENROQ 2025年1月号より転載・再構成)