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バイクの法律二輪通行禁止区間はどんなところにある?
日本国内の道路には、クルマ(四輪車)は通行できても、バイク(二輪車)が通行できない区間はけっこうある。ツーリングで観光に行った際、二輪車の通行が規制された道路や橋、トンネル道路や橋、トンネルなどに遭遇し、遠回りしなければならなかったり、目的地にたどり着けなかったいった経験を持つ人もいるだろう。
しかも、通行できない区間の手前には、通常「二輪車通行禁止」の標識があるが、うかっかり見落としてしまったり、前のクルマについていって気づかずに侵入してしまい、取り締まりを受けてしまうケースも考えられる。
法規上「二輪車通行禁止区間」と呼ばれるのがこうした区間だ。やっかいなのは、各区間で規制対象となるバイクの条件がさまざまなこと。原付のみ、125cc以下、250cc以下、すべての排気量のバイクなど、場所により規制される排気量などが異なるため、傾向がつかみづらく、うっかり間違い入りこむ危険性も高い。
そんな二輪車通行禁止区間だが、具体的にはどんな場所があるのか? 以下に例を挙げてみよう。

【オーバーパス/アンダーパス】
まず、オーバーパスやアンダーパス。ツーリング中でも、とくに市街地を通る際には、そうした場所の二輪車通行禁止区間に遭遇することも多い。
たとえば、東京都の場合なら、新橋の国道15号(第一京浜)から昭和通りに抜ける「新橋地下道(都道316号)」が有名だ。ここは全ての二輪車が通行不可。国道15号を北上し、上野方面に行こうとして進入すると違反になるので、側道を進み、その先の交差点を右折する必要がある。
都市部にあるアンダーパスやオーバーパスには、原付一種が通行禁止となっている場所も多いが、なかには、この区間のように、二輪車すべてが禁止されている場合もある。かといって、すべてのアンダーパスやオーバーパスが二輪車通行禁止ではないため、通行の可否が余計にこんがらがりやすいといえる。

【観光スポットなどの橋】
橋にも、二輪車が通れない場所や区間がある。とくに、ややこしい例として有名なのが、観光スポットとしても知られる神奈川県の「横浜ベイブリッジ」。2層構造になっているこの橋は、上層が高速道路。二輪車の場合、250cc以上であれば通行可能だ。一方、下層は一般道として使用されているが、125cc以下のバイク(原付一種と原付二種)は走行不可となっている。

ちなみに、東京都の名所「レインボーブリッジ」も、2層構造になっている橋。上層は高速道路、下層が一般道であることも同様だ。だが、ここの場合、下層の一般道で走行不可なのは原付一種。110ccや125ccなどの原付二種は走行可能だ。このように、同じような構造の橋でも、規制対象となるバイクは場所によって異なる点も、二輪車通行禁止区間がやっかいな点だ。

【観光地などにある峠道】
観光地として知られる山岳部の峠道などにも、二輪車通行禁止区間は存在する。たとえば、日本百名山にも数えられる筑波山(茨城県)。山頂付近までケーブルカーやロープウェイが敷設されていて、休日には大勢の観光客で賑わう観光スポットだ。

通常、筑波山のロープウェイまで行くには、「筑波パープルライン」(県道236号・筑波公園永井線)を使うと便利で快適。クルマであればドライブルートとして知られるこの道路は、かつて有料道路だった「表筑波スカイライン」と「筑波スカイライン」が2006年に無料化したことで、2つの道路を併合したもの。だが、このうち、旧「表筑波スカイライン」の部分は、原付から自動二輪車といったすべてのバイクが終日通行禁止。旧「筑波スカイライン」の部分も、19時~8時の時間帯で、すべての二輪車を通行止めとしている。また、土浦市方面からパープルラインにつながる「フルーツライン」も、二輪車は終日通行止めだ。
ほかにも、神奈川県箱根町の「箱根旧街道」(旧東海道・県道732号)では、毎年4月1日~11月30日の土曜・日曜・休日の8:00~15:00に限り、排気量550cc未満の自動二輪車を通行禁止。ちなみに、原付一種はは規制対象外なので通行することができる。

なぜバイクの通行を禁止しているのか?
このように、全国にはさまざまな場所や区間でバイクの通行が禁止されている。二輪車普及安全協会(以下、二普協)の調査によれば、2025年5月現在、二輪車通行規制区間は大型二輪車の規制を含め、全国に約500か所あるという。
では、二輪車通行規制区間はどういった基準で決められているのか。警察庁の「交通規制基準」という資料によれば、原則として、以下いずれかに該当する道路が対象となる。
【二輪車通行規制区間の規制実施基準】
1:オーバーパス、アンダーパス、トンネルなどで自動車の通行が多く、かつ、十分な車道幅員がないため、二輪の自動車または一般原動機付自転車とその他の車両との混在通行により、交通事故が発生するおそれのある道路
2:高速自動車国道などと接続しているため、総排気量0.125リットル以下、定格出力については1.00キロワット以下の原動機を有する普通自動二輪車(以下「小型二輪車」という。)及び一般原動機付自転車の通行を禁止する必要がある道路
3:カーブまたは急な坂が連続しており、二輪の自動車または一般原動機付自転車の通行により、交通事故が発生するおそれのある道路
4:暴走行為などによる交通の危険防止及び地域の静穏を確保する必要がある道路

これら基準を見ると、基本的に安全のためにバイクを通行止めにしているケースが多いようだ。たとえば、「横浜ベイブリッジ」の下層にある一般道は、上記2の「高速自動車国道などと接続している」道路なので、125cc以下のバイク(原付一種と原付二種)を走行不可としていることがわかる。
また、茨城の「表筑波スカイライン」や「筑波スカイライン」など、神奈川の「箱根旧街道」などは、3の「カーブまたは急な坂が連続」していることや、4の「暴走行為などによる交通の危険防止」などに該当するようだ。これら道路では、急なコーナーが続くいわゆるワインディング。しかも、バイクやクルマのローリング族(峠道を周回する違法競走型暴走族)による事故が多発したことで、バイクの通行を禁止しているのだという。
ちなみに、「箱根旧街道」は、前述の通り、排気量550cc未満の自動二輪車が通行禁止だ。大型バイクなら走行可能だが、ツーリング派も多い250ccや400ccなどミドルクラスのバイクは通行できない。だが、550ccという排気量で区切っているのはなぜだろう。一説によれば、その理由は「規制を開始した昭和59(1984)年当時、550cc未満の二輪車が危険な走行をしていた」から」。本当であれば40年以上も前の規制内容が現在も継続されていることになり、いまの実態にはそぐわない感じだ。このあたりは、規制対象の改正が必要なのかもしれない。

ツーリング先の規制道路は事前にチェック
このように、バイクのとってやっかいなのが二輪車通行規制区間だ。かといって、現行制度下では、うっかり進入してしまうと取り締まりを受けてしまい、せっかくのツーリングに水を差してしまう恐れもある。
対策としては、できればツーリングへ行く前に、予定するルート上にこうしたバイクの走行を禁止する区間がないか調べるといいだろう。

なお、先述した二普協では、ホームページ上で全国の二輪車通行規制区間情報を提供している。掲載データは、毎年3月末日に各都道府県警の協力により調査して例年6月に更新しているというから、最新の情報を得られるので有り難い。ぜひ一度サイトにアクセスし、どういった場所が二輪車通行規制区間なのかチェックしてみることをおすすめする。
【関連リンク】
日本二輪車普及安全協会の二輪車通行規制区間情報
https://www.jmpsa.or.jp/society/roadinfo/
